暖冬正月が一変した。


天気の劇的変化は人間の生命力にも大きな影響を与える。


特に高齢者は脆い。


寒くなって3人が逝った。


一人は予期せぬ急死。


へるぱー発見から、異状性は無いものの死亡診断書が書けないため、残念ながら警察連絡とした。

本人の声がきこえて来そうだ。


「なんだよ~先生! 最期くらいちゃんとしてくれよ~」

って言いそうなNさん 80歳だった。

5年間訪問診療をした。




もう一人は予想どうり。

蛋白4.3g/dl。

3ヶ月前に病院から紹介されてきた。

「原因不明」と。

自分なりにも調べてみたが、病院でわからないものが町医者にわかるわけがない。

寿の単身独居生保者は、なかなか施設に入所はさせてもらえない。

食事が自分でとれない要介護3を理由に運良く入所できたが、8日めに亡くなった。

何の発言もしない、寡黙なOさん82歳。

診断のつかない重篤な状態は必ず亡くなってしまうものだ。





最後の一人は、名物男Hさん。

72歳だよ。

まだ若い。

まだ逝くなよ!

慢性呼吸不全で在宅酸素中。


ほぼ開院以来の11年のつきあい。

だんだん動けなくなって3年前から訪問診療。

それでも、診療おわるとなんとか必ず「お見送り」を廊下まででて来て。

立って手を振り「ジャーね~。またね~」と。何回もいう。


メプチンエアーが枯渇するのが怖くて、「今週はスプレーはでるかな?」「スプレーまだかな?」を言い続ける。

半年前から夜間不安で大声出すため、とある簡易宿泊所を追い出され、温かく受け入れてくれる別の簡易宿泊所に2ヶ月前ようやく落ち着いた。

一時変化に負けそうに。

乗り越えて

ようやく「またね~」のお見送りが可能となった矢先。

吐血で急死した。

残念だ。

こつこつと、実は生保の貯金があった。

生保の貯金は御法度。

残しては役所に没収される。

この貯金利用して、フカフカの羽布団を買った。

新しい簡易宿泊所はこれまでと違って木造で古い。夜は寒い。

残ったお金でテレビも買ってあげよう。

そうカンファレンスしてたばかり。

潰瘍?胃がん?動脈瘤破裂?食道静脈瘤?

何かは知らんが、残念だ。

もう少しいまのところで生活させてあげたかった・・・