北村総一朗がいっぱい
「なんかデスノートのLみたいじゃありませんか?」円卓を囲んでいる一人の男が口火を切った。彼らは、自らの素性が割れないように全員同じ「ひょっとこ」のお面を付けている。場所は、都内某所のスタバである。近くには、ヒカリエやマルキュウが所在する。「私ですね。近頃は健忘症が激しくなったのか、朝食の時に何を食べたのか思い出せないんですよ。ははは」京都府警総務部長の大洞が呟いた。「それは大変ですなあ。私、弁護士事務所をやっているんですが、最近、部下の一之瀬君が独立して困っているんです。AKB48のメンバーにそっくりな子まで連れていかれちゃって。実写版カツオみたい男は、どうでもいいんですが。ははは」弁護士事務所所長の白旗が呟いた。「私の部下は、刑事でありながら医師の資格を持つ財前君というのがいまして、時折、私を見下すあの目がたまらんのですわ。ははは」警視庁刑事局特別捜査課課長の瀬戸が呟いた。「おたくもそうなんですか?はは、偶然ですな!私の部下も医師の資格を持っているんです。本業は検事なんですが、机をバンバン叩くもんだから月に一度は買い換えなきゃならなく経費がかかって困っているんです。しかも、得意気に作ったクソまずい料理まで食べさせられるわで。ははは」東京地検刑事部刑事部長の倉持か呟いた。「そうなんです。みんな勝手にし過ぎだと思いませんか?ミスのない捜査と隙のない接待が重要なんです。うちの管轄は、捜査が踊りすぎなんですよ。なんたって私あっての湾岸署なんですから。ははは」 湾岸署署長の神田は、名物だと言いながらレインボー最中を配っていた。「あれ?総一朗?私だよ!兄だよ!お前の職場も大変だなぁ。うちは国際線CAの3人がね。もうあちこちでえらい騒ぎになっちゃって。ははは」日本航空国際線担当部長の大沢は呟いた。「いやあ。うちの元部下は、スゴくできる窓辺なんですが、潜入調査先で「かーちゃーん!」と叫ぶもんだから、捜査がばれるんじゃないかと冷や汗もんですよ。姪はいつも謝ってばかりで。ははは」東京国税局査察部長の森村は呟いた。「みなさんね。まだいいじゃないですか。私はね。職場でも家内に牛耳られて、同僚にはヒマダさんと呼ばれて、自分の家なのに白線から一歩も家に入らせてもらえんのですよ?部下の幸平君にはウインクはするわで。ははは」東京駅お忘れもの預かり所職員の嶋田は嘆いた。彼等のボヤキは、おさまることはなさそうだ。大洞が動いた!「あのですね。実は、こんなの持ってきちゃいました。ははは」大洞の手には、一升瓶がある。一同は「おお~!」と歓喜の声をあげた。「いいですね!」その時だ!スタバのスタッフが駆け寄り「お客様。店内への持ち込みは禁止なんです。申し訳ございません!」「えっ?そうなの?」ひょっとこのお面の裏で全員が狐に包まれた表情になっていることには誰も気づいていない。今日もどこかで北村総一朗が集まり、密談をしているのかもしれない。おしまい