GMO-PGの主戦場である非対面型電子決済代行ビジネスの現状について、ちょっと記しておきます。
インターネットによるクレジットカード決済に代表される非対面型電子決済代行業は、一昔前までは手数料率が高くて"儲かる商売"でしたが、市場拡大に伴うカード会社からの度重なる値下げ要求で手数料率が大きく下がりました。決済代行事業者はシステム等への持続的な投資が必要なこともあり、決済件数が多くて決済金額が大きい一部の大手企業しか利益が出せなくなってきており、現在、多くの中小の事業者は厳しい状況におかれています。
カード会社からすれば、決済代行会社はクレカ普及ための橋頭堡というか、営業代理店的な位置付けです。闇雲に手数料率を下げて大手の決済代行業者すらビジネスが成り立たないような状況となれば、却ってクレカの普及を妨げるようなことにもなりかねません。ということで、カード会社からの手数料率の値下げ圧力は、現在は一段落しているようです。
つまり、大手の決済代行業者が"残存者利得"を享受しているような状況になっているということです。
ところで、決済代行会社の顧客(クレカ決済の導入企業)は特定の決済代行業者といったん契約すると、簡単には他の業者に変更しない傾向が強いです。決済はビジネスの根幹であることから、手数料が安いといったような理由だけで、安易に決済代行業者を乗り換えることはしません。
先述の決済のボリュームがとれないと儲からないことと、顧客が安易に切り替えないことは、決済代行ビジネスが新規で参入するのが極めて困難なビジネスであることを意味します。
日本は未だに現金主義の人が多くて電子決済が立ち遅れており、電子決済関連ビジネスの成長余地が大きいにもかかわらず、欧米の大手決済代行事業者が日本に算入してこない(できない)のも、同様の理由と思われます。
ちなみに、数年前からメタップスのSPIKEのような新しい決済ビジネスのモデルも出てきてはいますが、小規模ビジネス向けでありさほど普及もしておらず、GMO-PGのような大手と競合するには至っていません。
こういった状況のため、決済代行ビジネスは、急拡大するパイをGMO-PGを含む大手数社が取り合う状況が今後も続くと言われています。つまり、新規参入がないなかで大手事業者が安定的に成長していける可能性が高いということです。
そのような状況のもと、GMO-PGの成長は業界平均以上に加速してきていますが、大手の中でも成長が鈍化していたり、横ばいだったりするところも出始めているみたい。将来的には寡占が進みそうな状況なのかもしれません。
それでは、GMO-PGの競合相手である他の大手とはどこか?ということですが、決済金額ベースだけでみれば、最大手はソフトバンク・ペイメント・サービス、その次がGMO-PG、次いでベリトランス+イーコンテクスト(旧 econtext Asia。この2社は現在、デジタルガレージグループ)といったところでしょうか。このほか、DeNA系のペイジェント、ヤフー系のネットラストなどもあります。
2015年9月期のGMO-PGの事業説明会で、株主からシェアを知りたいとの質問があり、相浦社長は以下のように答えています。
「ECの市場規模が13兆円と言われるが、30%ぐらいのシェアだと思う。しかしながら13兆円には当社が意図的にやっていない分野(例えば公序良俗に反するようなビジネスの決済等)が2~3兆円も含まれており、これらを除けば35~40%。」
この30%というのは直感的感覚的な数字であり、正確なものではありません。
決済代行には様々なバリエーションがあり、会社間で規模を単純に比較したり、シェアを算出することは困難です。ソフトバンク・ペイメント・サービスは親会社ソフトバンクのキャリア決済を担うから必然的に決済金額は大きくなるし、親会社ヤフーのヤフーコマースを手がけるネットラストも同様な状況である一方、GMO-PGは親会社からのビジネスへの依存度は高くなく、多くの企業・分野で幅広くビジネスを展開しています。
また電子決済といっても、純粋なオンラインの電子決済もあればコンビニ決済みたいなもの、Edyのような電子マネー決済などもあり、決済金額だけでの比較もあまり意味がありません。昨今は非対面/対面の境界すらぼやけてきているような状況です。
会社の状況を見るために重要なのは、他社との比較ではなく、決済金額や決済件数が大きく伸びているか否か、あるいは他社より営業利益の成長率が高いか否かという点です。
ソフトバンク・ペイメント・サービスは開示がないので不明ですが、ベリトランス+イーコンテクストについては、デジタルガレージの決算説明会資料にフィナンシャルテクノロジーセグメント(FTセグメント)としてまとめて開示されており、直近の2017年3月期上半期は取扱高が対前年同期比+16.2%、売上が同+15.8%、営業利益が同+11.9%。
一方、GMO-PGの2017年9月期1Qは決済処理金額(取扱高)は対前年同期比+19.7%、売上は同+59.1%、営業利益が同+37.9%。GMO-PGのほうが成長率が高いように思われます。もっとも、GMO-PGには今期からGMO-FGを連結子会社化した影響もありますが、ベリトランスはGMO-PGと似た事業を行ってきた企業ですが、イーコンテクストは確かコンビニ決済が強い会社でしたから、そのことも成長率の差に影響しているかもしれません。
以上、決済代行ビジネスの現状について連連と書きましたが、最後に先日の情報漏えい問題の影響について少し記しておきます。
以前も書きましたが、現時点の発表内容から判断すると今回の情報漏えい問題は、セキュリティコード漏洩の問題を除けば、セキュリティ対策にGMO-PG固有の欠点があったために起きたわけではなく、完全な対策が極めて困難な事象です。条件が合えば他社でも起きうる問題であり、決済代行会社をGMO-PGから他社に切り替えたところで発生可能性がなくなるわけではありません。
GMO-PGのセキュリティ対策は業界内でもトップクラスであり、ヘタに乗り換えればセキュリティのレベルが落ちることにもなりかねないです。
今回の問題では今のところ、漏洩による実質的な被害が出ていないうえに、上述のように顧客企業が安直に決済代行会社を変えない傾向が強いことに加えて、システム改修等も必要で切り替えが容易ではないことも手伝って、今回の問題でGMO-PGから他社に変更する企業はほとんどないと考えるのが自然です。
野村證券がアナリストレポートで、問題の影響が限定的であるとしたのは、こういった理由からではないか、と考えます。