読売新聞「『電子契約に印紙税』賛否」の記事について【弁護士ドットコム】 | 投資は自己責任で

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2021/4/3の読売新聞に電子契約に印紙税を導入することについての記事が出ました。
印紙税は、紙で作成した特定の契約書等(課税文書)にかかる税金で、その税収は年間3500億円※。脱はんこの流れで電子契約が増えると紙の契約が減って印紙税が減収となるので、公明党の議員から電子契約にも印紙税を導入すべき、という意見が出ている、というような内容の記事でした。


記事の中で、クラウドサインの橘さんは「(電子契約に)課税すれば、デジタル化による業務の生産性の向上が遅れる。企業の国際競争力を高める上で妨げになりうる」と批判的な立場でコメントしています。

2018年12月、弁護士ドットコムの運営する「サインのリ・デザイン」のサイトに以下の記事が掲載されました。

この記事の最後に、以下のように書かれています。
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紙の契約書が突然なくなることは無いにしても、近い将来電子契約の量がこれを上回ることは明らかです。そんな中、中立性・公平性だけを根拠に突然電子契約(電子文書)にも課税を始めるというのは、上記の課税範囲縮小の経緯を見ても考えにくい展開です。
よって、税収源をほかに移しながら、印紙税自体は民意を受けてだんだんと課税範囲を縮小していき、今後も電子契約に印紙税が課税されることはないものと推測しています。
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記事にもあるように、これまで印紙税は様々な批判に晒されてきた税金で、歴史的にも段階的に縮小されてきた税金です。電子契約が爆発的に普及し始めたからといって、印紙税を強化する、ということにはならないでしょう。

 

書類に印紙税を貼付して契約を取り交わすと、印紙税代だけではなく、人件費とか郵送費とか、付帯する経費がかなり大きいです。零細企業で契約件数が少なく、社長が一人でなんでもこなすような場合は印紙税代と郵送代の節約だけがメリットかもしれませんが、大きな組織で契約件数が増えるほど、人件費とか保管・管理コスト等の印紙税以外のコストが大きくなる、ということです。

 

企業の電子契約への移行が進み、収入印紙を使わなくなれば、印紙代に加えて事務コストが大きく下がり費用が減ることで増収に寄与、結果的には法人税収の増につながるはずです。無論、企業の体力や、国際競争力のアップにも資することになります。

直感的には、電子契約移行による効率化を通じた法人税収増のほうが、長期的に見れば大きくなるでしょう。仮に浮いた費用を投資に回したり、社員研修に使ったりしても、最終的に企業の利益につながれば、税収増にもつながるわけです。

目先の印紙税の減収だけを見て減収を懸念するというのは、木を見て森を見ず、ですね。
 

個人的にはいっそのこと逆に、印紙税を大幅に値上げすれば、企業の電子契約への移行が加速されて経営効率が上がって日本経済にはプラスでは、と考えます。契約は相手のある行為ですから、電子契約導入をいつまでも渋っていると取引先企業には迷惑ですし、印紙税負担をペナルティにして電子契約移行を促進するということですw。

ちなみに最近、ようやく銀行が預金通帳廃止に本腰を入れ始めましたが、すべての通帳1冊につき年間200円の印紙税がかかっていて、トータル年間700億円の印紙税を国に収めているとのことです。使わなくなった銀行口座の預金通帳にも、口座廃止されなければ毎年200円税金を払わされているということです。(銀行通帳に収入印紙は貼ってありませんが、銀行は税務署に印紙税を別納しています)

要は、3500億円の印紙税収入のうち、2割は預金通帳にかかる印紙税ということ。印紙税は銀行が負担しているわけですが、最終的には預金者の負担であることは明らかです。現在の預金の利息と比較すると、通帳の印紙税がいかに高いのかがわかります。

 

最近「電子通帳に切り替えると500円プレゼント」みたいなキャンペーンを行う銀行もありますが、紙の通帳を電子に切り替えてもらえば、銀行は毎年発生する印紙税200円をセーブできるわけです。

通帳に印紙税がかかっていることをほとんどの預金者は知りませんが、銀行も通帳有料化などと言わずに「通帳を作る場合は、「通帳にかかる印紙税と事務手数料相当分を預金者に負担してもらうことになります」とはっきり言うべきですね。

 

※公表されている印紙収入は約1兆円です。ここで言う「印紙税収入3500億円」は印紙収入1兆円から、登録免許税や手数料等を差し引いた額ということと思われます。