もはや暗記を諦めた私でありました。
せっかくの人生初の大祓式です。そんなことに気を取られていてはそこに新たな穢れも生じましょう。

気を落ち着けて。


🍃


こちらの神社さんでは拝殿前に向かう前に、寄らせていただく場所があります。
この日はテントが設営され、さらには中に榊等が置かれており、近寄ってはならないような空気感があります。


そこは【祓戸】、であります。



祓戸は穢れを祓う神聖な場でありましょう。
伊邪那岐命さまが黄泉の国からお戻りになられた際に禊をなされたとき、お生まれになられた神さまに『祓戸大神』さまがおられ、『祓詞』においても、
「諸々の禍事罪穢有らむをば祓へ給ひ清め給へ」と祈っておるくらいであります。


とはいえ、この祓戸にはどうそこをお参りすれば良いか等は一切書かれてはおりません。
ただ木が植えられ、そこを厳重なくらいに赤い木の柵で囲ってあるのです。

ただ人一倍穢れの多い身でありますことを自覚しております私は、こちらの神社さんではこの『祓戸』に寄って礼拝してから拝殿前へと向かうのであります。


うーん。

…今日はアルコール消毒だけでごめんなさい。





やがて神職の方々がお揃いになられました。
そう、まさにあの祓戸の前のテントの下に。


そして。
司会進行担当の禰宜の方が、
「これから皆さんに『大祓詞』の書かれたものをお配りしますのでご一緒に奏上していただきます」


えっ。


あ、あの大祓詞、をですか?

一緒にお唱えするっておっしゃいましたよね。

大祓式で大祓詞を奏上なさるのは存じ上げておりましたが、参列者も?共に?

私どもは大祓詞、初見ですが。



…間違えたらどうしよう。
というか間違う気しかしないです。

そうしたら私の罪穢れは祓うことができない?

というかこの場を、そして共に参列されておられる方たちのお祓いにも障が生じたりはいたしません?

ドキドキドキドキドキドキ…。



奏上です。



でも私この短い時間に決めたことがありました。

初見だしとちることは想定内。

ならばとちっても飛ばさず、周りの方から遅れようとも必ず一字一句お唱え申し上げよう、と。



🍃



なんとか。
なんとかお唱え申し上げることができました。

ほっとする私。



式は続きます。

「先ほどの人形(ひとがた)の入った袋に小さく切った紙が入っておりますので、それを身体にかけてください」


あの紙片はそうやって使うものでありましたか。
この薄く小さな繊維片も共にかけてしまって良いのかしら?


ひらひらひら…。
はらはらはら…。


辺り一面に一センチ強四方の紙が散らばります。

これはさすがに雨がわざわいしました。



「それでは大幣でお祓いいたします」

…それが、ですね?
大幣、置いていないんですよ、どう見回しても。
なので巫女さんとかがこの場にお持ちになるのだと思って拝見しておりました。


しかしそのような様子はなく、神職の方が恭しく手に取られたのはそこにお祀りするように立てられていた大きな榊の枝でありました。

かなり大きな榊の枝です。

その榊で辺りを祓い、私どももお祓いくださいました。


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その後、一人の神職の方が、テントの中央、『祓戸』の方を向きお立ちになられました。

三宝にお供えされた布を恭しく手に持たれると、その布を高く掲げ手で細く切り裂いていかれます。
半分、また半分、と。
かなり細く切り裂かれます。

細く細く。

…まさに幣のふさふさの部分のようになりました。