TV業界の舞台裏で繰り広げられるラブコメディ~個性豊かなキャラクターが光る佳作

 ケーブルTVのKBS Worldで放送していたドラマ「プロデューサー」を見ました。2015年にKBSが制作し、翌年に日本でも放送されたドラマなので、ご覧になった方も多いかと思います。

 タイトルバックに出てくる4人が中心となってストーリーが展開していきます。基本はラブコメディですね。あらすじはこちらのサイトをどうぞ→た坊助のドラマレビュー 韓国ドラマのあらすじ・ネタバレ

ペク・スンチャン(キム・スヒョン)

 ソウル大法学科卒でKBSバラエティー局の新米PD。ジュンモの下で「1泊2日」を担当するが、出社初日に車に傷をつけられたことからイェジンとの縁ができ、次第に彼女のことが好きになっていく。口下手で融通が利かない一方、喜怒哀楽がはっきりと現れるわかりやすい性格。傘を貸してあげたシンディに「傘のPD」と呼ばれる。

ラ・ジュンモ(チャ・テヒョン)

 KBS入社10年目のベテランPD。「1泊2日」のチーフPDだが、低視聴率のため番組打ち切りの危機と戦う毎日を送っている。若い頃に親しかったアイドル歌手を守ってやれなかったことが自責の念として残っている。イェジンとは幼なじみで25年間の付き合い。IMF危機の時にイェジンの両親が売り払ったマンションに住んでいる。

タク・イェジン(コン・ヒョジン)

 KBSの人気歌番組「ミュージックバンク」のメインPD。女性PDが少なかった時代に入社し、強気な性格で現在の地位まで登りつめた。PD仲間から「女王蜂」と恐れられる一方でか弱さと優しさを併せ持ち、そのバランスをとるのに四苦八苦しているため酒癖が悪いというややこしい人物。マンションの契約延長を断られ、引っ越し先に入居するまでの間、元は自分の家だったジュンモの家に居候している。

シンディ(IU)

 K-POPのトップアイドル。13歳でスカウトされて練習生になった。その後両親が交通事故で亡くなり、所属事務所のピョン代表に育てられた。ふだんは孤高のスターとして強気に振舞っているが、素顔は孤独な寂しがり屋。「1泊2日」への出演を通じて知り合ったスンチャンのことが好きになっていく。

 4人の関係自体は特に運命的なものでもなく(あるとすればイェジンが高校時代に小学生のスンチャンと1度だけ会ったことがあるくらい)、設定としてはよくある四角関係なのですが、TV業界の裏話的な内容がストーリーを盛り上げ、そこに個性的な出演者の演技が加わって、たいへん面白い作品に仕上がっています。韓国での最高視聴率が17.7%ですから、ヒット作だったんですね。

 

 KBS制作のドラマだけに「ミュージックバンク」や「1泊2日」、「芸能界中継」といった実在の番組がいくつも出てきます。「ミュージックバンク」の本番前、シンディの舞台衣装がシースルー禁止というKBSの内部規定に抵触するので、衣装を変えるよう迫るイェジン。結局は上からガウンを羽織るという妥協案で合意したのですが、シンディがステージに立つやガウンを脱ぎ捨てたため、イェジンは放送倫理委員会に呼び出される羽目になります笑い泣き

 シンディは「ピンキー4」というグループの最年少メンバーですが、実力が飛びぬけており、事務所のピョン代表が彼女にずっとソロ活動をさせているため、グループは2年間も活動休止の状態。それに不満を持った他のメンバーが自分たちにもソロ活動をさせてほしいと直談判すると、代表は「あなたが1回ファンミーティングをしたとして、何人の会員が参加する?それでかかったお金の元が取れるの?」と冷たく言い放ちます。結局、シンディはグループ内で孤立してしまうことにショボーン

 このピョン代表(ナ・ヨンヒ)がもう強烈な悪役!子どもの練習生が痩せないのはお菓子を食べているからだと疑って、事務所近くのコンビニの監視カメラを解析させたり、シンディが自分の命令を聞かなくなると罠をかけて潰そうとしたり…とにかく憎らしい!ムキーでも、この人の強烈な個性のおかげで、主役の4人が引き立ったのは事実です。

 このドラマはカメオが豪華なことでも話題になりました。KBSの食堂に少女時代が現れてインタビューに答えたかと思うと、EXIDのハニは酒を飲んでいて男性3人とケンカになり、相手を殴ったため警察で1泊することに(ケンカの場面は出てきません)。留置場で「위 아래」を歌って署内が大盛り上がりって…爆  笑

 ハニは「1泊2日」新シリーズの出演者に内定していましたが、この事件で出演できなくなり、ジュンモが代役の交渉に行ったのがJYP。パク・ジニョン代表にテレビ電話でmissAのスジを出演させてくれとお願いしようとします。

 JYPにも体よく断られて途方に暮れていたところに、スンチャンの直接交渉でシンディが出演することになったのですが、そのロケの場面では、2NE1のダラ、WINNERのスンユン、BLACKPINKのジスと、YGファミリーが出演しています。

 KBSはYGと関係が良くないと思っていたので、これは意外でした。もっとも、シンディの衣装の件を聞いたダラが「私たちもKBSに出演した時は衣装や振り付けを極力ダサくしました」と言っているのが、ドラマの中だけの話とは思えませんでしたがてへぺろ

 この時のジスはまだBLACKPINKでデビューする前の新人で、スンユンとダラのおまけみたいな存在でした。「私はまだ新人で知名度が低くて…シンディさんと一緒なら知名度が上がるから大歓迎です」という台詞が初々しいです。それから3年後にYoutubeの再生数が6億回を超える超人気グループのメンバーになっているとは、誰も想像していなかったでしょうねびっくり

 チャ・テヒョンとコン・ヒョジンのコンビはさすがベテラン、息ピッタリの演技を見せてくれました。イェジンに対する好意をガンガン行動でアピールするスンチャンに対して、ジュンモは常に彼女のそばにいて見守るスタンス。イェジンはこの方面については鈍感なんだから、もっとはっきり「好き」と言ってあげなきゃ~うーん

 すでにトップ俳優としての地位を確立していたキム・スヒョンは、恋愛に疎いが好きとなったら一直線の好青年を演じました。この作品で、2015年のKBS演技大賞などたくさんの賞を獲得しています。スンチャンがいろいろな失敗を経験しながらPDとして成長していく姿も、このドラマの見どころの一つでした。

 そしてIU…の前に、ドラマを彩った個性的な脇役から2人を紹介しましょう。まず、シンディのマネージャー(チェ・グォン)。シンディに顎でこき使われ、時には会社との板挟みになりながらも彼女のそばをずっと守り続ける優しいオッパでした。そんな彼が、ピョン代表の陰謀で危機に陥ったシンディを「だから社長に謝れと言っただろ!俺は1日に何回も謝っているんだ!意地を張るからこんな様になったんだ!」と怒鳴りつける場面が、なんとも切なかったです。まあ、彼はそのストレスを意外な形で発散していたわけですがニヤ

 もう1人は、「ミュージックバンク」の放送作家のダジョン(ナム・ギョン)。モデル顔負けのナイスバディの持ち主でBIGBANGと直に連絡を取り合っているおよそ放送作家らしくない彼女は、仕事をする場面がほとんど出てこなかったのですが、ラスト近くでイェジンの選択に決定的な役割を果たします。

 そしてIUです。2017年のゴールデンディスクアワードで大賞を受賞し、今や「국민 여동생(国民の妹)」と呼ばれるほどの人気スターになった彼女が、プライドが高いけれど孤独で人の温もりを求めているアイドル歌手を好演しています。私は今までIUのことを名前くらいしか知らなかったのですが、このドラマを通じて好感度が大幅にアップし、思わずiTuneで彼女のアルバムをダウンロードしてしまいましたラブ

 IUのハスキーボイスがプライドの高いシンディの雰囲気によく合っていて、何よりも100%整形していないであろうナチュラルな顔が、豊かな表情でシンディの心の変化をよく表現していました。目と唇だけで演技ができる。素晴らしいことですキラキラ

 ラスト近くに出てくる感動的なシーン。IUの大きな瞳から涙がポロポロこぼれるのを見て、私も思わず…えーん

 力関係では明らかに上の公営放送のチーフPDを相手に一歩も引き下がることなく、ステージではカリスマあふれるパフォーマンスを披露するシンディ。しかし彼女はいつも独りぼっちでした。

 ネットで自分がどのように評価されているか気になって仕方がないシンディは、自分のアンチが集まるカフェの会員になり、バーチャルな空間でいびつな交流を持つようになります。

 「1泊2日」のロケを通じて距離がぐっと縮まったシンディとスンチャン。最初彼女はスンチャンが自分に気があると勘違いして、彼を取り込んで味方につけようと考えますが、逆にミイラ取りがミイラになってしまいます。でも恋愛経験ゼロのスンチャンはそんなシンディの気持ちに気がつきませんぼけー

 実は彼女も酒癖が悪いのでした。酔うと口癖は「私は13歳でデビューして…」。ここに悪酔いするとやたらハイになるイェジンが加わって、修羅場が展開されます滝汗

 私が気に入ったいちばんの名場面。「ミュージックバンク」で1位を獲得したシンディ。今までは受賞の感想を聞かれても「ありがとうございます」の一言しか言わなかった彼女が、いろんな人に感謝の言葉を述べ、最後にスンチャンに向けて(名前は出さずに)「傘になって雨から守ってくれてありがとう」とメッセージを伝えます。

 4人の恋愛バトルの結末は果たして…見終わった後、「また明日から頑張ろう」と思える爽やかなドラマでした。オススメです。