昨日、東京競馬場で行われました伝統の
ハンデ重賞第63回アルゼンチン共和国杯
は9番人気のミステリーウェイがスタート
してから果敢な逃げを展開し、4コーナーで
差を詰められるも、最後の直線でも再び
後続馬を引き離し、追い込んで来た
スティンガーグラスとディマイザキッドを
おさえ、逃げ切って重賞初勝利を挙げ
5年目の松本騎手もうれしい重賞初勝利と
なりました。
2着には追い込んで来た1番人気の
スティンガーグラス、3着には3番人気の
ディマイザキッドが入りました。
今週は、京都競馬場で節目となる伝統の
第50回エリザベス女王杯が行われます。
1975年にエリザベス女王が来日した
ことを記念して1976年にエリザベス
女王杯が創設され、1995年まで牝馬
クラシック3冠目という位置づけで4歳牝馬
限定競走として行われていました。
その後、1996年に牝馬競走体系の
見直しに伴い、競走条件が4歳牝馬から
4歳以上牝馬に変更され、施行距離も
芝2200mに短縮され、更にエリザベス
女王杯に代わる4歳牝馬三冠の最終戦
として新たに秋華賞が新設されたことに
伴い、エリザベス女王杯は牝馬クラシック
を歩んできた旧4歳牝馬と古馬牝馬による
日本一の女王を争うレースという位置づけ
になりました。
思い出の馬は、雷鳴轟く最後のサラ系
G1馬第9回優勝馬キョウワサンダーです。
キョウワサンダーの父は、産駒が全て芦毛
になるという特殊な遺伝構成を持つ
中距離系種牡馬ゼダーンで代表産駒には
中山大障害等に優勝した名障害馬
ヤマニンアピールやタニノスイセイ、
パッシングパワー等の重賞勝ち馬がいます。
また参考文献によりますとキョウワ
サンダーの5代母バウアーストツクは
豪州から輸入された繁殖牝馬なのですが
一説によると馬主が期限内に血統登録を
し忘れたため、血統登録がなされず、
バウアーストツクの子孫たちは純正の
サラブレッドとは認められないサラブレッド
系種として扱われることになってしまった
らしいとのこと。
更にバウアーストツクの牝系は菊花賞を
兄弟制覇したキタノオー・キタノオーザ兄弟
オークス馬アイテイオー、そしてサラ系
唯一の年度代表馬ヒカリデユールなどを
輩出した日本競馬史上に残る名牝系
でしたが、皆サラ系の烙印を押された
ことで繁殖としては不遇の扱いを受ける
ことになってしまいました。
キョウワサンダーもまた、そんなサラ系の
烙印の元に生まれた1頭でした。
キョウワサンダーはシンボリルドルフが
三冠馬に輝いた昭和59年組の牝馬
クラシック組で同期には桜花賞馬ダイアナ
ソロン、オークス馬トウカイローマンや
キクノペガサス、ロングレザー、ファイアー
ダンサーなどの重賞勝ち馬がいます。
キョウワサンダーは旧馬齢3歳秋の京都の
新馬戦でデビューしましたが8着に敗れ
その後5戦し、2着はあったものの、結局
3歳時に勝つことは出来ませんでした。
年が明け4歳になったキョウワサンダーは
13戦目でようやく未勝利戦で初勝利を
挙げました。
ようやく成績が安定して来たキョウワ
サンダーは条件戦を勝って2勝目を
挙げると、秋に入って格上となるサファイヤ
ステークスに挑戦しました。
このレースでキョウワサンダーは繰り
上げだったものの桜花賞馬ダイアナ
ソロンの2着に入り、オークス馬トウカイ
ローマンには先着しました。
続いてキョウワサンダーは条件戦で3着後
当時のエリザベス女王杯トライアルの
ローズステークスに参戦。
このレースにはダイアナソロン、トウカイ
ローマンも出走し、2頭とも敗れる中、
キョウワサンダーは8着に終わりました。
そして迎えた当時は牝馬クラシック最終戦
だったエリザベス女王杯にキョウワ
サンダーも何とか駒を進めることが
できました。
このレースには桜花賞馬ダイアナソロン
オークス馬トウカイローマン、トライアル
優勝馬ロングレザー、後の重賞勝ち馬
キクノペガサスやジムベルグ、ファイアー
ダンサー等が出走。
トライアル戦でダイアナソロンやトウカイ
ローマンが敗れたことで混沌となった
エリザベス女王杯でしたが。1番人気は
やはりダイアナソロンでキョウワサンダー
は実績の無さから21頭中の14番人気
という低評価での出走となりました。
レースはマーサレッドがスローペースで
逃げる中、ファイアーダンサーが先行し、
ジムベルグ、トウカイローマンは中団から
人気のダイアナソロンは中団の後ろから
キクノペガサス、ロングレザー、キョウワ
サンダーは後方からという展開に
なりました。
向こう正面でハッピーオールトンが競走を
中止する中、各馬が徐々に仕掛け、ジム
ベルグが3番手に上がり、ダイアナソロンも
トウカイローマンも先行との差を詰めて
直線の勝負へ。
直線に入ってジムベルグが先頭に立つと
馬場の真ん中からトウカイローマン、
内からダイアナソロン、外からキクノ
ペガサスが鋭く伸びて来る中、大外から
キョウワサンダーが一世一代の豪脚で
追い込み、最後はキョウワサンダーと
キクノペガサスの馬体を併せての激しい
叩き合いとなりましたが、ゴール前で
キョウワサンダーがキクノペガサスを
アタマ差振り切って優勝を飾り、牝馬
クラシック三冠目を獲得すると共に
悲願の重賞初制覇を果たしました。
その後、キョウワサンダーは東上し、
シンボリルドルフ、ミスターシービー、
カツラギエースが出走した暮れの大一番
有馬記念に果敢に挑みましたが、
シンボリルドルフの前に10着に
大敗しました。
年が明け古馬になったキョウワサンダーは
9ヶ月の長期休養後、秋競馬に入って
牡馬との対戦となる朝日チャレンジカップ
京都大賞典に挑みましたが、牡馬の壁は
高く、どちらもブービーの8着、7着に
終わりました。
しかし続くエリザベス女王杯と同じ京都の
芝2400mのオープン特別では6頭立て
ではありましたが、牡馬を蹴散らして
1年ぶりに勝利を挙げ、決してエリザベス
女王杯での優勝がフロックではなかった
ということを証明し、このレースを最後に
ターフに別れを告げました。
記録によりますと
キョウワサンダーは、引退後は故郷の
協和牧場で繁殖入りしましたが
初仔を産んだ後、僅か7歳という若さで
急逝してしまいました。
そして、唯一の産駒も未勝利のまま引退
してしまったため、彼女の系譜は途絶えて
しまいました。
今週は、京都競馬場で節目となる
第50回エリザベス女王杯が行われます。
レガレイラ、ココナッツブラウン、
パラディレーヌ、フェアエールングに
注目しています。
今週も全人馬の無事を祈りながら
レースを観ます。

