昨日、中山競馬場で行われました
クラシック初戦、第85回皐月賞は
3番人気のミュージアムマイルが、最後の
直線で先に抜け出したクロワデュノールを
差し切って優勝を飾り、重賞初制覇で
クラシック1冠目を手にしました。
2着は圧倒的1番人気に推されたクロワ
デュノール、3着には4番人気の
マスカレードボールが入りました。
今週は、京都競馬場で春のマイル
戦線を占う上で重要な第56回マイラーズ
カップが行われます。
マイラーズカップはマイル路線の拡充
および短距離系の馬にも活躍の場を
設けることを目的として、1970年に創設
され、現在はGⅠ競走である安田記念や
ヴィクトリアマイルの前哨戦として位置
づけられていて、春の短距離路線を歩む
馬にとって重要なレースとなっています。
昭和期においては、まだレース体系が
現在ほど整っておらず、出走できるレース
も限られていたためか、歴代の優勝馬や
出走した馬にはクラシック優勝馬をはじめ
現在のGⅠ優勝馬等、名立たる名馬達の
名前が連なっています。
思い出の馬は、秋風の中で散った悲運の
快速馬ロングヒエンです。
ロングヒエンの父は中距離系種牡馬
ホープフリーオンで代表産駒には安田
記念を制したキヨヒダカ、毎日杯の勝ち馬
タケノヒエンの他、地方での多くの重賞
勝ち馬を輩出しています。
ロングヒエンは昭和57年のクラシック組で
同期にはダービー馬バンブーアトラス
皐月賞馬アズマハンター、菊花賞馬
ホリスキー、黄金の脚ハギノカムイオーや
アスワン、ホスピタリテイ、イーストボーイ
タカラテンリュウ等の重賞勝ち馬がいます。
ロングヒエンは旧馬齢3歳秋の阪神の
新馬戦でデビューしました。
この新馬戦には後に関西3歳チャンピオン
になるリードエーティも出走し、デビュー
前から評判になっていたリードエーティが
圧倒的1番人気に推され、特に評判に
なっていなかったロングヒエンは3番人気
での出走となりました。
レースはリードエーティが自慢の快速で
他馬を引き離して逃げを展開しましたが、
第4コーナーでロングヒエンが並びかけ
この2頭によるマッチレースの様相を呈して
直線の勝負へ。
直線に入るとロングヒエンがあっさりと
リードエーティを交わして先頭に立つと
最後はリードエーティに6馬身差をつけ
阪神の3歳タイレコードタイムでの圧勝劇を
演じ、金色に輝くたてがみを持った美しい
馬は、ファンの度肝を抜く鮮烈なデビューを
果たしました。
しかし、鮮烈なデビューを果たしたロング
ヒエンでしたが、この後に骨膜炎を発症して
休養を余儀なくされてしまいました。
6ヶ月半後に条件特別で復帰したロング
ヒエンは大雨で不良馬場という最悪の
コンディションの中、格の違いを見せつけ
2着に5馬身差をつけて圧勝し、堂々と
春のクラシックに向け東上しました。
そして迎えたクラシック第一冠目皐月賞、
関西の怪物サルノキングが骨折で戦線を
離脱して混戦模様となる中、華麗なる
一族のハギノカムイオーが一番人気に
推され、ロングヒエンは2番人気での
出走となりました。
レースは逃げ宣言をしたゲイルスポートが
宣言どおり強引に先手を取って暴走的な
逃げを展開し、ハギノカムイオーは
2、3番手を追走、その後ろからロング
ヒエンが続きました。
しかし、この超ハイペースの影響でゲイル
スポートが早々と失速、ハギノカムイオーも
直線で沈んで16着に大敗する等、
先行馬が総崩れとなる中、ロングヒエンも
ハイペースの影響か、それとも距離が
合わなかったのか、7着に終わりました。
この後、ロングヒエンはダービーへの
出走をかけて、当時ダービートライアル
として行われていたNHK杯に参戦。
このレースには皐月賞馬アズマハンターも
出走し、ロングヒエンは4番人気に
支持されました。
好スタートを切ったロングヒエンは先手を
取ろうとしましたが、皐月賞と同様にゲイル
スポートが強引に先手を奪って逃げ、
皐月賞ではおさえる作戦で大敗した
ハギノカムイオーも今回は果敢に先行して
ゲイルスポートを追う展開となり、
第3コーナーでゲイルスポートを交わした
ハギノカムイオーが先頭に立って
直線の勝負へ。
直線に入ってロングヒエンは逃げ粘る
ハギノカムイオーを交わして一旦先頭に
立ちましたが、追い込んで来たアスワン、
アズマハンター、アサカシルバーに
交わされて4着に敗れました。
しかし、NHK杯で見どころがあった
ロングヒエンは、本番のダービーでは
距離への不安が危惧されていましたが、
根強いファンからの期待を集め、3番
人気に支持されました。
しかし、レース発送直前にダービー史上に
残る大アクシデントが起きてしまいました。
何とロングヒエンがゲートを突き破って出て
しまったため、5番枠からという好枠からの
出走だったロングヒエンは、大外30番枠
からの出走となってしまいました。
場内は騒然となり、ロングヒエンを支持して
いたファンからは悲鳴が起こりました。
それでもスタートすると大歓声を受けながら
大外から果敢に先頭に立って逃げたロング
ヒエン、27頭を引き連れて先頭で直線に
入りましたが、大外枠のせいか、距離の
疑問か、すぐに馬群に沈んでしまい
15着に終わってしまいました。
しかし、次に出走した短距離の中京4歳
特別では、やはり実力の違いを見せつけ、
2着に4馬身差をつけ、レコードタイムで
圧勝し、3勝目を挙げました。
夏を無事に越したロングヒエンは菊花賞を
目指して1番人気に支持された神戸
新聞杯に出走し、ハギノカムイオーの
2着とした後、京都新聞杯に参戦しましたが
14着と大敗したため、菊花賞を断念し
休養に入りました。
年が明けて古馬となったロングヒエンは
古馬の安田記念、マイルチャンピオン
シップがGⅠになるという朗報が
発表される中、6ヶ月の休養後、路線を
短距離路線に切り替えて、マイラーズ
カップに参戦しました。
このレースにはダービー馬オペックホース
桜花賞馬ブロケード、古豪カツアール
良血シルクテンザンオー等が出走し、
ロングヒエンが1番人気に推されました。
当日は雨で不良馬場という悪コンディション
の中、レースは、大方の予想どおり
スタートしてロングヒエンが一気に先頭に
立って逃げ、その後ろからシルク
テンザンオーとブロケードが続き、立ち
遅れたオペックホースは後方からという
展開になりました。
第4コーナーで各馬が一斉に仕掛ける中
ロングヒエンが先頭のまま直線の勝負へ。
馬場の真ん中から更に脚を伸ばすロング
ヒエン、内からはシルクテンザンオーと
ブロケード、外からオペックホースが猛然と
追い込みましたが、ロングヒエンは
失速することなく、ブロケードに1馬身差を
つけて優勝を飾り、重賞初制覇を果たし
ました。
1984年から短距離路線が整備され、
ロングヒエンにとっては、これから明るい
未来が見える中、競走馬にとっては
不治の病と言われる屈腱炎を発症し、
長期休養を余儀なくされてしまいました。
その後、長く苦しい脚部不安との戦いが
続いたロングヒエンは不屈の精神力で
既に5歳となっていた秋競馬で
1年7ヶ月ぶりに復帰を果たしました。
しかし、この復帰がロングヒエンの運命を
変えることになるとは、この時、誰が
想像できたでしょうか。
条件特別で復帰し、3着となったロング
ヒエンは続いて運命のスワンステークスに
出走しました。
このレースには後にマイル王と呼ばれた
ニホンピロウイナー、桜花賞馬シャダイ
ソフィア、安田記念を制したハッピー
プログレスやシンボリルドルフと死闘を
演じたビゼンニシキ、ダイゼンシルバー等
蒼々たるメンバーが出走しました。
レースはスタートしてロングヒエンが一旦
先頭に立つも、いつもの勢いがないのか
ニホンピロウイナーが交わして先頭に立ち
ロングヒエンは2番手に控える形で追走
しました。
第3コーナーでニホンピロウイナーが更に
差を広げ、ゴールまで残り700mの地点で
ロングヒエンが突然バランスを崩して
一気に後退し、そのまま競走を中止して
しまいました。
馬運車で運ばれたロングヒエンの診断は
右前肢の粉砕骨折で、すぐに安楽死の
処置が施されました。
ダービーでは大外枠に回され大敗した
ものの、その後マイラーズカップを制し、
これから整備された短距離路線で活躍が
できるという時に脚部不安に襲われ、
最後は骨折で命まで失うことになろうとは。
金髪のたてがみをなびかせた美しい
馬体とスピードで多くのファンを魅了した
ロングヒエン。
最期も持ち前のスピードであっという間に
天国に駆けあがってしまいました。
今週は、京都競馬場で第56回マイラーズ
カップが行われます。
ジュンブロッサム、ニホンピロキーフ
セオ、ホウオウリアリティに注目しています。
先週は中山グランドジャンプでバーン
パッションがファンの願いも通じず、最後の
障害で落馬競走中止となり、本当に
残念ですが予後不良となってしまいました。
こうした光景は起こって欲しくありません。
今週も全人馬の無事を祈りながら
レースを観ます。


