先週、中京競馬場で行われました春のGⅠ

開幕となるスプリント王決定戦第54回

高松宮記念は6番人気のマッドクールが

直線で内をついて鋭く伸びて先頭に立ち

やはり内をついたナムラクレアの追撃を

頭差しのいで優勝。

初重賞がGⅠ制覇となりました。

2着には2番人気のナムラクレア、3着には

5番人気の香港から参戦したビクターザ

ウィナーが入り、1番人気に推された

ルガルは10着に敗れました。

また、ラストランということで応援していた

おてんば娘メイケイエールは9着に終わり

ました。

そして、メイケイエールと共にディヴィーナと

ロータスランドもこの高松宮記念を最後に

繁殖のため、引退となりました。

3頭とも本当にお疲れ様でした。

第二の馬生も幸せであることを心から

祈っています。

 

今週は、阪神競馬場でGⅠ競走第68回

大阪杯が行われます。

大阪杯は1957年に5歳(現4歳)以上の

馬による重賞競走大阪盃競走として創設

されました。

その後、競走名は1964年にサンケイ

大阪杯と改称され、1989年からは

産経大阪杯となり、2017年にGⅠ競走に

昇格したことにより、名称を大阪杯と

改称しました。

 

思い出の馬は、東海からやって来た野武士

ヒカリデユールです。

ヒカリデユールは旧馬齢6歳時に公営から

中央に移籍してきた馬で、中央での

同期にはダービー馬オペックホース、

天皇賞馬モンテプリンス、有馬記念馬

アンバーシャダイ、皐月賞馬ハワイアン

イメージやサクラシンゲキ等がいます。

ヒカリデユールの父は皐月賞馬ビンゴ

ガルー等を輩出したデュールです。

但し、ヒカリデユールの母方の血統を

辿っていくと、5代前の先祖に輸入時点で

血統書がなかったため、サラブレッド系種

(サラ系)として登録されました。

 

ヒカリデユールは旧馬齢3歳の大井で

デビューし、4戦目で初勝利をあげました。

その後は勝ち負けを繰り返しながら

4歳時には18戦し、南関東三冠競走に

出走するも4、4、2着と勝つまでは至らず

4歳時は2勝するにとどまりました。

5歳になったヒカリデユールは東海公営に

移籍し、地方競馬では珍しい芝の重賞

競走である東海桜花賞で勝利する等、

南関東よりレベルの劣る東海公営とはいえ

成績も安定し、本格化してきました。

公営出身の名馬ハイセイコーやオグリ

キャップ、イナリワンのような公営での

華やかな実績はありませんでしたが、

6歳になると地方38戦7勝の戦績を

引っ提げて中央競馬に移籍しました。

 

中央入りしたヒカリデユールが初戦に

選んだのは当時の名称朝日チャレンジ

カップで、このレースには牝馬クラシックで

活躍したメジロカーラ、金鯱賞の勝ち馬

テルノホープ、小倉大賞典に勝ったニシノ

チェニルが出走し、ヒカリデユールは

公営での前二走が連続3着だったことも

あって、11頭中7番人気と低評価でした。

しかし、重馬場で行われたレースで、やはり

芝に適正があったのか、ヒカリデユールは

道中最後方からレースを進め、直線に入り

実況の杉本アナも驚くほど、後方から

一気にごぼう抜きをきめて差し切って優勝。

中央緒戦で初勝利、初重賞制覇を果たす

と共に天皇賞秋に名乗りを挙げました。

そして迎えた第86回天皇賞秋、当時は

東京の3,200mで行われており、

このレースには親子二代で天皇賞制覇を

目指すメジロティターン、有馬記念馬

アンバーシャダイ、クラシックトライアル

三冠馬サンエイソロンやキョウエイプロミス

公営出身で宝塚記念に勝ったカツアールが

出走し、実績がないヒカリデユールでしたが

意外にも5番人気という高い評価を

受けての出走となりました。

レースはアラナスゼットが逃げ、アンバー

シャダイとメジロティターンは中団から進み

ヒカリデユールと人気のサンエイソロンは

後方からという展開となりました。

第4コーナーで仕掛けたメジロティターンが

直線に入って一気に抜け出して先頭に

立って、2番手以下を引き離す中、後方

から進んだヒカリデユールが直線で猛然と

追い込んで、レコードタイムで圧勝した

メジロティターンの2着に入り、実力が

本物だということを示しました。

ヒカリデユールは続く国際招待競走の

第2回ジャパンカップに参戦。

この年のジャパンカップは外国勢の

メンバーが、日本勢が軒並み惨敗した

前年の第1回競走を遙かに凌ぐものとなり

それに恐れをなしたのか、日本からの

出走馬は15頭中、小粒のメンバーでの

わずか5頭という寂しいものとなりました。

そんな状況の中でもヒカリデユールは

後方待機から直線で追い込み、優勝馬

ハーフアイストとの僅かの差で日本馬

最先着の5着となる大健闘を見せてくれ

ました。

 

そして中央3戦で好成績を収めたヒカリ

デユールは、頂点を目指すべく、暮れの

グランプリレース第27回有馬記念に

駒を進めました。

このレースには有馬記念ファン投票1位の

天皇賞馬モンテプリンス、前年の覇者

アンバーシャダイ、秋の天皇賞馬メジロ

ティターン、菊花賞馬ミナガワマンナ、

ダービー馬オペックホース、エリザベス

女王杯に勝ったビクトリアクラウンや

キョウエイプロミス等、まさに日本一

決定戦に相応しい豪華メンバーが

顔を揃えました。

そしてこの豪華メンバーの中では、まだ

実績が乏しいヒカリデユールでしたが、

天皇賞やジャパンカップでの活躍が

評価され、3番人気に推されました。

雨で重馬場の中、レースはスタートして

春に天皇賞、宝塚記念の優勝後、脚部

不安を発症し、まだ脚の状態が悪いにも

係わらずファン投票1位の期待に応え

ようと危険を承知で出走してきたモンテ

プリンスが逃げ、キョウエイプロミスと

アンバーシャダイが先行し、その後ろから

ミナガワマンナとメジロティターンが続き

ヒカリデユールはいつものように後方から

という競馬となりました。

前年の有馬記念と同じようにアンバー

シャダイが第4コーナーで仕掛けて

コーナーワークを利用して直線で内ラチに

入って一気に伸びて先頭に立ち、スピード

シンボリ以来の連覇達成かと思われ

ましたが、ヒカリデユールが直線で豪脚を

繰り出して猛然と追い込み、アンバー

シャダイをゴール直前でアタマ差交わして

優勝を飾り、ついに有馬記念を制して

日本一に輝きました。

そして天皇賞・宝塚記念に優勝した

モンテプリンスとの兼ね合いで論議は

あったものの、ヒカリデユールは、

この年の活躍が高く評価され、1982年の

年度代表馬に選出されました。

地方出身馬の年度代表馬はオンスロート

以来20年ぶりで、サラ系出身馬としては

史上初という快挙となりました。

年が明けて7歳になったヒカリデユールは

天皇賞制覇を目指して現役を続行。

オープン競走3着後、当時の名称だった

サンケイ大阪杯に駒を進めました。

このレースには華麗なる一族の良血馬

シルクテンザンオー、日経新春杯を勝った

オーバーレインボーや京都記念の勝ち馬

マサヒコボーイ等の新興勢力や古豪メジロ

ファントムが参戦してきました。

グランプリホースとなったヒカリデユールは

当然のごとく1番人気に推されました。

レースはシルクテンザンオーが逃げ、

ヒカリデユールは中団から進み、オーバー

レインボーとマサヒコボーイ、メジロ

ファントムは後方からという競馬となり

ました。

第3コーナーで徐々に差を詰めたヒカリ

デユールは直線に入って逃げるシルクテン

ザンオーを交わしにかかるも、シルク

テンザンオーも最後まで逃げ粘り、ゴール

手前でようやくヒカリデユールがシルクテン

ザンオーを捉えて優勝を飾り、今年の

目標である天皇賞春に向かいました。

そして迎えた第87回天皇賞春、ヒカリ

デユールは3番人気に推されて

出走しましたが、2周目の向正面手前で

故障発生により、競走を中止してしまい

ました。

診断の結果、前第1指節複骨折で

競走能力喪失と診断され、何とか

予後不良は回避したものの、天皇賞制覇

目前で、一転してこのまま引退となって

しまいました。

引退後は1984年から北海道の牧場で

種牡馬となりましたが、内国産種牡馬

不遇の時代に加え、サラ系という大きな

ハンデもあって、勝ち馬は出したものの、

オープン馬は排出することは出来ません

でした。

記録によりますと1992年に種牡馬を

引退して用途変更となり、その後の行方に

ついては不明となってしまっているのが

本当に残念です。

 

今週は、阪神競馬場で中距離戦線の

精鋭たちが激突する第68回大阪杯が

行われます。

ソールオリエンス、プラダリア、ローシャム

パーク、ステラヴェローチェに注目して

います。

今週も全馬の無事を祈りながらレースを

観ます。