先週、京都競馬場で3年ぶりに行われ
ましたクラシック最終戦第84回菊花賞は
4番人気のドゥレッツァがスタートして
まもなく先行馬2頭を一気に交わして
予想外の逃げる展開となり、向こう
正面ではいったん3番手に下がったものの
直線に入ると鋭く伸びて一気に抜け出して
先頭に立ち、圧倒的な強さでダービー馬
タスティエーラや皐月賞馬ソールオリエンス
を全く寄せ付けずに圧勝。
5連勝を飾ると共に重賞競走初挑戦で
GⅠ初制覇を果たしました。
この結果、今年のクラシック3冠レースは
関東馬が36年ぶりに全勝し、そして
38年ぶりに菊花賞での関東馬による
ワン・ツー・スリー決着となりました。
2着には2番人気のタスティエーラが入り
大外から追い込んだ1番人気のソール
オリエンスは3着に終わりました。
私も長年、菊花賞を見てきましたが
今回の菊花賞でのドゥレッツァの勝ち方は
今まで見たことは無く、正直驚きを
隠せません。
今週は、東京競馬場で第168回天皇賞秋
が行われます。
なられる天覧競馬となります。
天皇賞の歴史は古く、昭和12年秋から
帝室御賞典という名称で行われました。
帝室御賞典は戦争のため昭和19年に
戦争のため中止され、昭和22年春に
平和賞の名称で再開し、同年秋からは
天皇賞と改称され現在に至っています。
そして創設以来、当初は1度優勝した馬は
再出走を認めないとされてきましたが、
昭和56年に制度が廃止され、過去の
優勝馬も再出走が可能になりました。
またその後、スタミナよりもスピードの強化
を重視する意見などにより、賛否両論が
あったものの、昭和59年から秋の天皇賞
は施行距離が2000mに短縮され、更に
古馬の最高峰として位置づけられてきた
天皇賞でしたが、昭和62年からは4歳馬
も出走が可能になり、これにより各馬は
様々な選択肢が取れるようになりました。
天皇賞への再出走が可能となったことで
引退時期が延び、天皇賞連覇や天皇賞馬
同士の激突や3歳馬と古馬の戦いが
見られることで新たな天皇賞に変貌
しましたが、一方で距離が短くなったことで
東京競馬場での1周目のストレッチで沸き
起こる大歓声が聞けなくなったことが
残念であると共に強い馬よりスピード馬を
つくることが、本当に世界の競馬に対応
できるのかという懸念も生まれました。
中距離馬にも天皇盾の夢をということでは
仕方がないことかも知れません。
私個人としては古馬の最高峰という伝統は
継承して欲しかったと今でも思っています。
思い出の馬は、牝馬でありながら
牡馬相手に競馬史上に残る大逃げで
優勝したプリテイキャストです。
プリテイキャストの父は、有馬記念を勝った
リュウズキや天皇賞馬カシュウチカラ、
桜花賞馬ワカクモ等を輩出した名種牡馬
カバーラップ二世で、プリテイキャストは
今は無き北海道の名門吉田牧場で誕生
しました。
プリテイキャストは昭和53年のクラシック
組で同期には桜花賞馬オヤマテスコ、
オークス馬ファイブホープやサンエム
ジョオー、サニーフラワー等がいます。
プリテイキャストは旧馬齢3歳の東京で
デビューしましたが、最初の新馬戦は
6着に敗れてしまいました。
後のスタッフの話として、
「もともとプリテイキャストは素質のある
馬で、期待されていましたが、新馬戦で
スタート直後に左右の馬に挟まれて立ち
後れたため、6着と敗れてしまい、この
出来事によってプリテイキャストは他馬を
怖がるようになってしまった。この出来事が
無く、順調にいっていれば桜花賞を狙えた
ほどの馬でした。」
とコメントしています。
結局、4歳の春に初勝利すら挙げることが
出来なかったため、クラシックに出走する
ことはありませんでした。
プリテイキャストが初勝利を挙げたのは
デビューから8戦目となる4歳夏の新潟の
未勝利戦でした。
その後函館に遠征して条件特別戦を2勝し
オープン競走でもホクトボーイの4着と
善戦したことで、当時の牝馬クラシック
最終戦、エリザベス女王杯に何とか
参戦することができました。
しかし好調を買われて3馬人気に支持され
ましたが、スタートでの出遅れが響き、
最後の直線で追い込むものの、リード
スワローの4着に終わりました。
しかし続く条件特別戦を勝ってオープン
入りを果たし、古馬になってからの飛躍を
期待されました。
年が明けて古馬となったプリテイキャストは
重賞競走に参戦したものの惨敗を繰り返し
遠征した夏の札幌で1勝をあげたものの、
5歳での勝利はこの1勝にとどまりました。
通常でしたら、この成績なら5歳をもって
繁殖にあがるのが一般的でしたが
牧場の代表者から、もしかしたらプリテイ
キャストは母タイプキャストも7歳になって
から全米最優秀牝馬となったことから、
母と同じように晩成型なのかも知れない
との考えで、6歳での現役続行が決まり
ました。
年が明けて6歳となったプリテイキャストは
3戦目の条件特別戦を勝つと続く、長距離の
重賞競走ダイヤモンドステークスを
8番人気ながら2着馬に7馬身差をつけて
圧勝して初重賞制覇を果たすと共に
晩成型の本領を発揮し始めました。
その後、天皇賞春では15着と大敗した
ものの、相性の良い札幌で札幌日経賞と
札幌記念で2着に入り、東京に帰っての
毎日王冠でも逃げ粘って、カネミノブの
3着に入る等、牡馬相手でも互角に戦える
ことを証明しました。
続く天皇賞秋の前哨戦だった当時の
目黒記念ではまさかの最下位の11着と
大敗しましたが、関係者はプリテイキャスト
の晩成型の力を信じて天皇賞秋に駒を
進めました。
この天皇賞秋には前走での目黒記念を
快勝したダービー馬カツラノハイセイコや
有馬記念馬カネミノブ、後に有馬記念や
天皇賞に勝つホウヨウボーイをはじめ
重賞優勝馬メジロファントム、シービー
クロス、グレートタイタン、シルクスキー等
蒼々たる一流馬達が顔を揃えました。
天皇賞当日はレース2日前に降った雨の
影響で馬場は重となり、1番人気は
ダービー馬カツラノハイセイコ、2番人気は
ホウヨウボーイとなり、前走の目黒記念で
大敗したプリテイキャストは8番人気での
出走となりました。
ゲートが開き、スタートすると予想どおり
プリテイキャストが逃げる展開になり
競りかけてくる馬もいなかったため、
ほどなく一人旅となりました。
当時は東京3200mでの天皇賞であった
ため、1週目のホームストレッチで
大歓声が沸く中、プリテイキャストは
一気に後続を引き離して大逃げをうつ
展開となりました。
カツラノハイセイコは2番手、その後から
ホウヨウボーイが続き、カネミノブ、
シービークロスは中団、メジロファントムと
シルクスキーは後方からレースを進め
ました。
向こう正面に入るとプリテイキャストと
後続馬との差は100m近くにまで広がり
場内は騒然となり始めました。
それでもあんなに飛ばしたら逃げたら
最後は一気に差が縮まり、直線で
プリテイキャストは失速するだろうと
多くの人は思っていました。
大逃げをうたれても、淡々とレースを
進めていた2番手以降の人気馬達も
プリテイキャストをマークすることなく、
当初は後続馬同士で牽制しあって
いましたが、プリテイキャストのペースは
見た目ほどのハイペースではなく、いつの
間にか気分よく一人旅となって逃げて
いました。
第3コーナーに入っても、このプリテイ
キャストの大逃げに幻惑されてしまった
のか、カツラノハイセイコもホウヨウボーイ
も、それ以外の馬達も互いに牽制し合い、
どの馬もプリテイキャストを先に捉まえに
行くことで失速する事を恐れ、まるで
金縛りにあったかのように動けなくなって
しまいました。
この状況に慌てたメジロファントムが
最初に仕掛け、事の重大さに気付いた
後続馬達も一斉に追走しはじめましたが
時すでに遅く、大歓声の中、プリテイ
キャストは大差をつけたまま第4コーナー
から直線へ。
さすがにプリテイキャストも直線の坂で
失速したものの、それまでの圧倒的な
リードにものをいわせ、後続馬との差は
なかなか縮まらず、実況した盛山アナも
「あと200メートルしかありません
差は10メートル、8メートルくらいある
先頭はプリテイキャスト、逃げ切り濃厚
逃げ切り濃厚 2番手以下は届かない、
絶対に届かない、2番手以下絶対に
届かない」と絶叫。
そして最後は2着に7馬身差をつけて
圧勝し、プリテイキャストは第82代
天皇賞馬の栄冠に輝きました。
天皇賞後、有馬記念に参戦しましたが、
思うように逃がしてもらえず、最下位の
12着に敗れ、このレースを最後に
引退しました。
それでも天皇賞での優勝が評価され
プリテイキャストは、この年の優駿賞
最優秀古牝馬に選出されました。
引退後は生まれ故郷の吉田牧場で
繁殖牝馬となりましたが、目立った産駒は
菊花賞に出走して大逃げを打った
スティールキャストぐらいで、代表産駒には
恵まれませんでした。
記録によりますと
平成7年6月28日プリテイキャストは
喉頭がんに冒されてしまい、回復の
見込みなしと診断され、その後の癌による
痛みや苦しみが予想されたことから安楽死
の措置が執られ、プリテイキャストは
21歳の生涯に幕を下ろし、天国へと
駆け上がって行きました。
今週は、東京競馬場で伝統の第168回
天皇賞秋が行われます。
世界ランク1位のイクイノックス、天皇賞
春秋連覇を狙うジャスティンパレス
勢いに乗るプログノーシス、巻き返しを
図るスターズオンアースに注目しています。
今年は天皇陛下が11年ぶりにご観覧に
なられる天覧競馬となります。
今週も全馬の無事を祈りながらレースを
観ます。





