先週、東京競馬場行われました伝統の

一戦、第166回天皇賞(秋)は1番人気の

イクイノックスが大逃げに出たパンサラッサ

をゴール前で差し切り、皐月賞とダービー

2着の雪辱を果たして初のGⅠタイトルを

獲得すると共に父キタサンブラックとの

父子制覇を達成しました。

2着には大逃げしてレースを盛り上げた

パンサラッサが粘り、3着には4番人気の

ダノンベルーガが入り、2番人気に

推されたダービー馬シャフリヤールは

差は詰めてきたものの5着に敗れました。

近年はスローペースの直線での上りの

競馬というレースが多く、個性ある馬が

いなくなり、面白さに欠けていたのですが

今年の天皇賞秋はパンサラッサの

サイレンススズカやツインターボを彷彿と

させる大逃げで盛り上がり、見応えの

ある本当に素晴らしい名勝負となりました。

ゴール前一撃で差し切ったイクイノックス

と大逃げで粘ったパンサラッサに盛大な

拍手を贈りたいと思います。

今週は東京競馬場で記念すべき第60回

アルゼンチン共和国杯が行われます。

アルゼンチン共和国杯は日本とアルゼン

チンの友好と親善の一環として1963年

にアルゼンチンジョッキークラブカップの

名称で創設されました。

1974年にアルゼンチンの競馬が

ジョッキークラブから国の管轄へ移管

されたことに伴い、1975年から現在の

名称になりました。

そして1984年のグレード制導入と重賞

格付けの全面見直しに伴い、それまで

年2回施行されていた伝統の目黒記念秋

の競走が廃止される代替として施行時期

を5月から目黒記念秋が行われていた

11月に移行し、4歳(現3歳)以上の馬に

よるハンデキャップ競走として東京競馬場

で施行されるようになりました。

 

思い出の馬は昭和47年第10回優勝馬

ゼンマツです。

オールドファンにとっては忘れられない

玄人受けする渋さのある馬でした。

ゼンマツは昭和46年のクラシック組で

同期には疾風の差し脚と言われた二冠馬

ヒカルイマイや菊花賞馬ニホンピロ

ムーテー、天皇賞馬ベルワイドの他、

フィドール、オンワードガイ、メジロゲッコウ

コーヨー、カツタイコウ、ヤシマライデン

バンライ、ハスラー等がいます。

ゼンマツの父テッソは昭和を代表する

長距離血統の種牡馬で代表産駒には

ゼンマツの他、有馬記念や天皇賞に勝ち

年度代表馬にも選出されたコレヒデを

はじめ安田記念優勝馬で雨の鬼の異名を

とったラファールやコウジョウ、ハマテッソ

等の重賞勝ち馬がいます。

またゼンマツの主戦ジョッキーは追い込み

馬に乗せたら右に出る者がいないと言われ

三冠馬ミスターシービーにも騎乗した

故吉永正人騎手がつとめました。

芦毛馬だったゼンマツは、生まれつき体が

弱かったそうで、死線をさまよったことも

あったそうです。

それでもゼンマツは旧馬齢3歳の8月に

デビューし、当時短距離しかなかった

新馬戦を実力で克服して勝ち、デビュー戦

を飾りました。

しかし、その後連敗が続き、3歳時は1勝

しかあげることは出来ませんでした。

年が明けて4歳になったゼンマツは

いきなり条件特別に勝って2勝目をあげ、

クラシック出走をかけて東京4歳S、弥生賞

に挑むものの、大敗してしまいました。

それでも続く条件特別競走で後に目黒記念

や日本経済賞に優勝するカツタイコウを

やぶって3勝目をあげ、何とかクラシック

への出走にこぎつけました。

ゼンマツはクラシック1冠目の皐月賞では

馬群の中に沈んだものの、ダービーでは

後方から鋭く追い込んで5着に食い

込んで健闘しましたが、ヒカルイマイの

前に全く歯が立ちませんでした。

その後日本短波賞4着、夏の札幌の

オープン競走をオンワードガイの2着と

した後、セントライト記念に参戦し、

ベルワイドの3着に好走すると、菊花賞を

目指し西下しました。

しかし本番の菊花賞でレース中に発作性

心機能障害を発症してしまったため、

勝った馬から12秒以上も離されて入線し

大差のしんがり負けを喫してしまいました。

幸い命や競走生命に別状なく、本当に

良かったです。

その後、療養のため半年間の休んだ後

古馬になったゼンマツは条件特別競走で

黒い弾丸の異名を持った皐月賞馬

ワイルドモア等をやぶって久しぶりの

勝利をあげました。

この勢いのままアルゼンチンJC杯に

参戦し、同期の精鋭達が揃う中で2番

人気に推されました。

レースではゼンマツはいつものように

馬群から大きく離れた、はるか後方

からの競馬となりました。

第4コーナーをまわって、絶対に届かない

と思われた位置でしたが、ゼンマツは

外から猛然と疾風のごとく、追い上げ、

4歳の時には歯が立たなかった同期の

バンライやヤシマライデン、ハーバー

ローヤルらをカミソリの切れ味で一瞬に

して古豪トウショウピット、スイジンや

粘るダイセンプーを豪快に抜き去って

レコードタイムで優勝を飾り、ついに

初重賞制覇を果たしました。

しかし、このレースで一世一代の脚を使い

燃え尽きてしまったのか、その後活躍を

期待されたものの、オープン競走での2着

はありましたが、重賞競走ではことごとく

大敗を喫してしまいました。

京王杯スプリングHを脚部不安のため

出走を取り消したゼンマツは長期休養に

入りました。

当時発行されていた競馬報知で長期

休養中の馬の特集があり、ゼンマツの

復帰に向けての記事が載っていて、

ゼンマツの復帰を楽しみにしていました。

7歳になって見違えるほど白くなった

ゼンマツが復帰したのは、約1年半後の

オープン競走で8頭中5着と意地は見せた

ものの、もうそこには往年のカミソリの

切れ味を持った追い込みのゼンマツの姿

はありませんでした。

このオープン競走がゼンマツにとっての

最後のレースとなってしまいました。

引退後、種牡馬になったゼンマツは

内国産種牡馬不遇の時代であり、長距離

血統も災いしてか産駒は少なく、それでも

代表産駒は残せなかったものの、勝ち馬

を輩出したことは立派だったと思います。

1980年代に用途変更になったゼンマツは

その後、どうなったのか、いつ亡くなった

かの記録はなく、本当に残念です。

今週は東京競馬場で記念すべき第60回

アルゼンチン共和国杯が行われます。

実力馬テーオーロイヤルとボスジラ

巻き返しを図るシルヴァーソニック

ハーツイストワールに注目しています。

今週も全馬の無事を祈りながらレースを

見ます。