先週行われました伝統の第96回中山記念は2番人気に推された
パンサラッサがハイペースで大逃げを打ち、直線に入っても
脚色は衰えることなく差を開いて2馬身半差をつけて優勝。
2つ目の重賞を獲得しました。
2着には4番人気のカラテが入り、3着にはクビ差で3番人気の
アドマイヤハダル入り、1番人気のダノンザキッドはスタートの
出遅れが響いて7着に敗れました。
個性派の馬が少なくなった今、パンサラッサの今後の活躍が
期待されます。
今週は中山競馬場でクラシックの登竜門第59回弥生賞ディープ
インパクト記念が行われます。
弥生賞ディープインパクト記念は1964年に弥生賞という名称で
4歳(現3歳)馬限定の重賞競走として創設されました。
施行距離やコースは幾度かの変遷を経て、1984年より中山
競馬場芝2000mとして行われ、これによりクラシック戦線に
直結する重要な前哨戦として位置づけられています。
2020(令和2年)からは、2019年に亡くなった名馬ディープ
インパクトの功績を称え、同馬の重賞初勝利となった弥生賞の
競走名を改称し、弥生賞ディープインパクト記念として開催される
ことになりました。
そして長年に渡り、このレースの優勝馬からはダービーをはじめ
とするクラシックの優勝馬が数多く誕生しています。
思い出の馬は、闘将加賀騎手の乾坤一擲のまくりで天馬を
やぶり、ダービー馬に輝いたクライムカイザーです。
クライムカイザーは、昭和51年のクラシック組で同期には3強
の名を欲しいままにしたトウショウボーイ、テンポイント、グリーン
グラスがいます。
クライムカイザーは1975年旧馬齢3歳の夏の札幌でデビューし
新馬緒戦は3着に敗れたものの、2戦目の新馬戦で勝ち上がり
続く条件特別戦ではレコード勝ちをおさめ、エリート路線に
乗りました。
しかし、その後、惜敗ながら朝日杯3歳S4着を含む重賞3連敗
となり、結局3歳時は7戦2勝という成績に終わりました。
年が明けて旧馬齢4歳になったクライムカイザーは京成杯に
参戦しで念願の重賞初制覇を果たし、関東のクラシック候補に
躍り出ました。
この時、後に皐月賞を制覇したトウショウボーイは、まだデビュー
していませんでした。
次に参戦した東京4歳ステークスでは関西の期待を一身に
集めて東上してきたテンポイントと激突しましたが、テンポイントの
2着に惜敗しました。
そして続いて弥生賞に出走し、レースはスタートしてから朝日杯
3歳Sの覇者ボールドシンボリが逃げ、クライムカイザーは後方
からの競馬となりましたが、3コーナーから4コーナーにかけて
クライムカイザーが一気にまくりながら追い上げて直線で先頭に
朝日杯3歳Sでの雪辱を果たしました。
そしてクラシック1冠目の皐月賞に挑みました。
このレースには5戦5勝の関西の雄テンポイントと1月に
デビューし、3戦3勝で挑む関東の期待トウショウボーイの無敗馬同士の激突が注目され、クライムカイザーは3番人気に推され
ました。
レースはいつものようにボールドシンボリが逃げて、トウショウ
ボーイが先行し、テンポイントは中団を進み、クライムカイザーは
後方からの競馬となりました。
直線に入るとトウショウボーイ鋭く抜け出し、期待どおり他馬を
突き放して圧勝劇を演じ、関西の雄テンポイントは何とか他馬と
競り合って2着を確保するのが精いっぱいでした。
クライムカイザーも3コーナーから4コーナーにかけて、一気に
まくる作戦に出ましたが、5着に敗れました。
そして運命の日本ダービーを迎えました。
ゲートが開き、27頭が一斉に伸び出すと馬体を寄せられると
怯むという弱点を避けるためか、それともスピードの違いなのか
トウショウボーイが早くも先頭に立って26頭を引っ張る展開となり
テンポイントは中団、クライムカイザーはいつものように後方から
というレース展開となりました。
直線に入ってトウショウボーイが他馬の引き離しにかかりましたが
3コーナーから4コーナーに一気に上がってきたクライムカイザー
が闘将加賀騎手の乾坤一擲の出し抜きを図ってトウショウボーイ
を抜き去って先頭に立ち、一瞬の出来事に怯んだトウショウボーイ
も再び追い上げてクライムカイザーとの差を縮めるも届かず、
1馬身1/2差をつけてクライムカイザーがダービーの栄光に輝き
ました。
レース後、加賀騎手の走路妨害ギリギリの強引な騎乗に対し、
審議になるかと思いましたが、結局審議の対象にはならず、
制裁も受けなかったものの、競馬関係者からは疑問の声が多く
寄せられました。
しかし、このダービーでの勝利がクライムカイザーにとっての
最後の勝利になるとは誰が予想できたでしょうか。
ダービーから1ヶ月半後にクライムカイザーは菊に向けて早くも
始動し、札幌記念に出走しました。
このレースにはトウショウボーイやグレートセイカンも参戦し、
ダービー馬、皐月賞馬、ダートの王者が一堂に会する豪華な
札幌記念になりました。
結果はダートの王者グレートセイカンが得意のダートで追い込む
トウショウボーイをクビ差おさえて優勝し、クライムカイザーは
2頭に大差をつけられ3着に敗れました。
続いて菊花賞トライアル神戸新聞杯と京都新聞杯に参戦して
トウショウボーイと対戦しましたが、いずれもトウショウボーイの
後塵を拝して2着に敗れました。
そして迎えた菊花賞ではトウショウボーイと共に当時行われて
いた単枠指定となって出走しました。
菊花賞にはトウショウボーイをはじめ、春の屈辱を晴らすため
最後のクラシック菊花賞に執念を燃やす貴公子テンポイント
や関西の秘密兵器コーヨーチカラ、小倉の星ミヤジマレンゴ
後の天皇賞馬ホクトボーイ、夏の上り馬グリーングラス等の
精鋭達が出走しました。
レースはダービーとは違ってトウショウボーイではなく、バンブー
ホマレが逃げ、トウショウボーイとテンポイントはお互いにマーク
しながら先行集団で進み、クライムカイザーは例によって後方から
の競馬となりました。
直線に入ってテンポイントがトウショウボーイより先に抜け出して
先頭に立ち、大歓声の中テンポイントがついに勝つかと思われ
ましたが、コーナーワークを使って内から鋭く伸びてきたグリーン
グラスがいつの間にか先頭に立ち、そのままテンポイントの追撃を
おさえて、まさかの優勝を飾りました。
クライムカイザーは4コーナーで得意のまくり戦法をとったものの
5着に敗れてしまいました。
やはりマイラー血統のヴェンチアの仔で長丁場は向かなかった
のかも知れません。
この後、トウショウボーイとテンポイントは有馬記念に駒を進め
2年連続で名勝負を繰り広げました。
クライムカイザーは菊花賞後に疲れが出たため、休養を取りました。
年が明けて古馬になったクライムカイザーは天皇賞春を目指して
AJC杯からスタートを切りましたが、AJC杯ではグリーングラスに
再び敗れて5着、その後も目黒記念ではカシュウチカラの4着、
鳴尾記念はテンポイントの4着と入着はするものの、なかなか
勝つことは出来ませんでした。
そして迎えた大一番天皇賞春に参戦しましたがテンポイントの
悲願の優勝の前に5着に敗れ、脇役にまわってしまいました。
そして、続く宝塚記念では、トウショウボーイ、テンポイントの
ライバル対決の前に全く良いところなく最下位の6着に敗れ、
生涯で初めて掲示板を外してしまいました。
そしてこの宝塚記念がクライムカイザーにとっての最後のレース
なりました。
宝塚記念後に故障を発症したため、引退を余儀なくされ、静かに
競馬場に別れを告げました。
引退後は1979年より光伸牧場で種牡馬になり、内国産種牡馬
の不遇の時代でしたが、それでも毎年数頭に種付けという状況で
共同通信杯4歳S優勝馬マイネルブレーブを輩出しただけでも
立派だったと思います。
そして1994年に種牡馬を引退してからは光伸牧場の功労馬
として余生を送っていました。
1978年に不慮の事故のためテンポイントが亡くなり、宿敵
トウショウボーイも1992年に20歳でこの世を去り、そして
グリーングラスが死亡した3ヶ月後の2000年9月27日、
ライバル3頭の死を看取った後、心臓麻痺のため、28年の
生涯に幕を閉じました。
今週は中山競馬場で第59回弥生賞ディープインパクト記念が
行われます。
クラシックを占う上でとても重要なレースと言えます。
朝日FS優勝馬ドウデュース、北海道浦河町出身のジャスティン
ロック、きさらぎ賞の覇者マテンロウレオに注目しています。
今年も藤沢調教師をはじめ、競馬を盛り上げてくれた調教師達が
引退し、また新たな時代が始まります。
今週も全馬の無事を祈りながら競馬を見ます。


