先週行われました第69回日経新春杯は3番人気のヨーホー

レイクが直線で先に抜け出した1番人気のステラヴェローチェと

一騎打ちになりましたが、ゴール前で接戦を制して優勝。

大阪杯、天皇賞春に向けて楽しみな馬が復活しました。

そして、今年もスタート直前に「場所が変わり、時が流れても

全馬の無事を祈って」という今は亡きテンポイントに敬意を表し

二度と悲劇が繰り返すことが無いことを祈りながら言ってくれた

実況アナウンサー言葉に心から感謝致します。

私達は時が流れても流星の貴公子テンポイントを忘れることは

ないでしょう。

これからもテンポイントが天国から全馬が無事に完走できるよう

見守ってくれていると思っています。

今週は中山競馬場で第63回アメリカジョッキークラブカップが

行われます。

アメリカジョッキークラブカップは1960年に日米友好の一環

としてニューヨークジョッキークラブから優勝杯の贈呈を受け

創設されました。

最近ではレース名をAJCCやアメリカJCCと表記していますが

昭和期ではAJC杯の略称が一般的でした。

そして西の日経新春杯と並んで大阪杯や春の天皇賞に向けて

今年緒戦として東の古馬達が参戦するレースでもあります。

 

思い出の馬は競馬界のエイトマン、ストロングエイトです。

ストロングエイトは私が競馬史上最強の世代と思っている

花の昭和47年のクラシック組で旧馬齢3歳の秋にデビューし

新馬と条件戦に勝っていきなり2連勝を飾り、クラシック候補と

なるはずでしたが、暮れに起こったの感冒騒動に巻き込まれて

休養を余儀なくされてしまいました。

年が明けて旧4歳になって特別戦に参戦しましたが、後の

菊花賞馬イシノヒカルの前に8着に敗れました。

それでも条件戦を勝って3勝し、何とか当時遅れて行われた

七夕ダービーに出走できたものの、最強世代メンバーの壁は厚く

ロングエースの前に13着に大敗しました。

夏を無事に超したストロングエイトは秋に復活をかけてセント

ライト記念に出走しましたが、8着に敗れ、結局この年は条件

特別の1勝に止まりました。

年が明けて古馬になったストロングエイトでしたが、条件特別戦で

一進一退の成績を繰り返し、なかなか勝ちきれませんでした。

6月になってようやく条件特別に勝つと続くと福島での条件特別

にも勝って2連勝を飾りました。

秋になって重賞戦線に参戦し、3戦目の目黒記念では天皇賞馬

ベルワイドの2着に健闘し、徐々に本領を発揮し始めました。

そして秋の天皇賞に挑みました。

名門尾形厩舎の1番人気ハクホウショウがスタート直後に故障を

発症して競走を中止するという波乱の中、直線でタニノチカラが

抜け出して圧勝、ついに眠れる巨人が古馬の頂点に立ちました。

ストロングエイトも4着に闘しました。

続く有馬記念にも挑むことになりましたが、このレースにはその年

のクラシックを賑わせた怪物ハイセイコーをはじめ、タニノチカラ、

ベルワイド、ヤマニンウエーブの3頭の天皇賞馬、牝馬クラシック

二冠を制した紅一点ニットウチドリ、重賞勝ち馬オンワードガイや

ナオキ、イチフジイサミ等、錚々たるメンバーが顔をそろえました。

レースは大方の予想通りニットウチドリの逃げで始まり、ストロング

エイトが2番手で追走し、その直後にナオキとハイセイコーが続き

そしてハイセイコーを徹底マークするようにタニノチカラが追走する

という展開になりました。

4コーナーでハイセイコーが上がっていくとタニノチカラも上がって

いき、直線に入りました。

直線に入ってハイセイコーとタニノチカラはお互いにけん制し合い

お互いに相手が仕掛けるタイミングで追い出そうとしたため、

両頭とも一瞬追い出すタイミングが遅れ、その間、自分のレースを

貫いたストロングエイトが逃げるニットウチドリをゴール前で

交わして優勝。

ハイセイコーやタニノチカラの他、この錚々たるメンバーに勝って

有馬記念を制するという大金星をあげました。

連複の配当金は有馬記念史上初となる万馬券となりました。

その後、ストロングエイトの勝利は展開に恵まれたとか、上位

人気馬がけん制し過ぎたためとか、当時はフロック視されましたが

まぐれで勝つほど有馬記念は甘くはなく、ストロングエイトは

着実に本格化していたのだと思います。

現に年が明けて6歳になったストロングエイトは目黒記念では

敗れたものの、春の天皇賞に向けた鳴尾記念では斤量59キロを

物ともせずに優勝し、春の天皇賞では一瞬ストロングエイトが

勝つかと思った瞬間、タケホープに交わされて2着になりましたが

有馬記念での優勝はフロックでは無かったことを証明しました。

続くハイセイコーが圧勝した宝塚記念にも参戦しましたが、

4コーナーの仕掛け所で杉本アナが「その後ろからようやく

ストロングエイト、今日はちょっと重いぞ」と言ったとおり、歴戦の

疲れが出たのか6着に敗れました。

宝塚記念での敗退後、秋になっても調子は戻らず、秋の天皇賞

有馬記念でも良いところなく敗れてしまいました。

年が明けて7歳になったストロングエイトはAJC杯を最後に

引退することを発表しました。

このレースでは秋の天皇賞を勝ったカミノテシオが圧倒的な

1番人気となり、衰えの見える古豪ストロングエイトでしたが

3番人気に推されました。

レースはスタート直後からストロングエイトが先行し、終始

マイペースに持ち込むと直線に入ってもスピードは衰えず

このレースがラストランだと判っているかのように往年の

ストロングエイトの走りで優勝し、有終の美を飾りました。

2月に東京競馬場で引退式が行われ、多くのファンからの

あたたかい拍手に送られて静かに競馬場を去りました。

引退後は生まれ故郷のハイランド牧場で種牡馬生活をおくり

少ない産駒の中から障害競走で活躍したスパークリングや

勝ち馬を輩出し、そこそこの種牡馬成績を上げました。

1989年に21歳で種牡馬を引退し、静かに余生を送って

いましたが、1992年に体調を崩し、懸命の治療の結果

1度は体調が良い方向に向かったものの、競走馬時代の

歴戦のダメージにより内臓が弱っていたことの影響で

1992年3月1日、現役時代は怪我が無かった程丈夫で

鋼鉄の体を持つと言われたストロングエイトもついに体力の

限界が来たのか、オーナーをはじめ牧場スタッフ一同が

見守る中、静かに天国に旅立って行きました。

享年24歳でした。

今週は中山競馬場で第63回アメリカジョッキークラブカップが

行われます。

やはり注目は菊花賞2着のオーソクレースです。

名立たるGⅠ馬達が引退する中、今年の活躍を期待する1頭です。

その他ではポタジェとキングオブコージでしょうか。

今年のAJCCは、例年に比べクラシック優勝馬もおらず、寂しい

メンバーのような気がします。

果たして今年の競馬を盛り上げてくれる新星が登場するのか。

今週も全馬の無事を祈りながらレースを見ます。