先週行われました第66回京成杯オータムハンデキャップは
7番人気のカテドラルが直線での接戦から抜け出して優勝。
2着には12番人気のコントラチェックが入り、1番人気の
グレナディアガーズは直線で追い込んで来たものの届かず
3着に敗れ、波乱の決着となりました。
今週は中山競馬場で菊花賞の前哨戦、伝統の第75回セント
ライト記念が行われます。
日本競馬史上初の三冠馬セントライトを記念して1947年に
創設され、3着までの馬に菊花賞の優先出走権が付与されます。
昭和期においては関東の菊花賞トライアルレースという位置づけ
でしたが、天皇賞(秋)が1984年から走行距離が2,000Mとなり
そして1987年からは天皇賞が現3歳馬以上の牡馬・牝馬の
出走が可能となったことにより、菊花賞だけでなく天皇賞(秋)を
目指す現3歳馬達の秋初戦のレースという位置づけに変わって
います。
よって菊花賞を目指す馬のほとんどが昭和期においては神戸
新聞杯または京都新聞杯からでしたが、今は神戸新聞杯に
出走しています。
昭和期にセントライト記念に勝って菊花賞を制覇した馬は
トサミドリ、キタノオー、ハククラマ、キタノオーザ、グレートヨルカ、
アサカオー、アカネテンリュウ、プレストウコウ、シンボリルドルフ等
競馬史に名を刻んだ名馬達の名前がズラリと並びますが、競馬
体系整備の影響か、シンボリルドルフが優勝した後、31年間
キタサンブラックが優勝するまで、菊花賞を制覇する馬は現れ
ませんでした。
思い出の馬は、昭和48年第27回優勝馬ヌアージターフです。
父は昭和期、日本競馬発展に貢献した種牡馬の1頭である
ガーサントです。
ガーサントの産駒はステイヤーで道悪も上手いが、気性が難しい
馬が多かったという印象があります。
ガーサントは日本においてカブトシローと並んで稀代の癖馬として
名高い菊花賞、天皇賞優勝馬ニットエイト、オークス馬ヒロヨシと
シャダイターキン、桜花賞馬コウユウ等、数多くのクラシックを
はじめとする重賞優勝馬を輩出し、1973年に引退するまで
第一線の種牡馬として活躍を続けましたが、後継種牡馬には
恵まれませんでした。
ヌアージターフはハイセイコー世代である昭和48年クラシック組
で旧馬齢3歳でデビューしましたが長距離血統の影響か、善戦
するもなかなか勝ち上がれず、初勝利は4戦目の未勝利戦
でした。
その後も善戦するもなかなか勝ち星には恵まれませんでしたが
それでも特別競走を2勝して何とかダービーへの出走権を
獲得して、怪物ハイセイコーの出現で盛り上がるダービーに
出走しましたが、7着に敗退しました。
夏を無事に超して、菊花賞に向けて始動したヌアージターフは
セントライト記念に出走、8頭中6番人気ながら直線に入って
思い切って内をついて追い込みをかけて抜け出し、ダービー
2着馬イチフジイサミを押さえてレコードタイムで優勝。
一躍夏の上り馬として菊花賞の有力馬に躍り出ました。
このレースでの強い勝ち方と血統的な背景からも誰もが
ヌアージターフの菊花賞をはじめ、今後の活躍を期待しました。
しかし、この勝利がヌアージターフにとっての最後の勝利に
なるとは、この時一体誰が思ったでしょうか。
その後西下して参戦した当時の菊花賞トライアルレース京都
新聞杯では9着と惨敗し、そして本番の菊花賞でも見せ場なく
14着に惨敗してしまいました。
そして逃げる精密機械と言われたトーヨーアサヒがレコードタイム
で勝利を飾った暮れのステイヤーズステークスで2着に入り
実力があることを証明しました。
年が明けて古馬になったヌアージターフは、AJCC杯に出走して
タケホープの3着に食い込み、続く目黒記念では斤量軽量の
ヒロクニに足下をすくわれたものの、2着に入るなど健闘を見せ
やはり距離が長いレースでのステイヤーとしての実力を見せて
いました。
しかし、その後は重賞レースでの常連組で参戦するものの、
決め手に欠いていたのか、距離が短すぎたのか、勝ち星には
恵まれず、5歳秋のサンケイオールカマーでの2着が目立つ
ぐらいでした。
それでも秘めた能力を持ったヌアージターフが出走してくると
いつ大器晩成の血が開花して穴をあけるのではないかと
不気味な存在として穴党ファンにも人気がありました。
しかしその後、目黒記念7着、天皇賞(秋)では8着に敗れて
しまいました。
年が明けて旧馬齢6歳になったヌアージターフはダートの条件
特別に2戦するもプライドが傷ついたのか何れも最下位に敗れ
次の芝での条件特別に出走するも、もう走る気が無くなったかの
ように最下位に敗れ、このレースがヌアージターフにとっての
最後のレースとなりました。
そして、引退し種牡馬にならなかったヌアージターフがその後
どのようになって、どういう馬生を送り、最後はいつ、どのように
して亡くなったのか、今となっては判る手立てはありません。
晩年のガーサントの代表産駒であったヌアージターフも
私にとって記憶に残る馬の1頭です。
今週は20日月曜日の祭日に中山競馬場で伝統の第75回
セントライト記念が行われます。
優勝し菊花賞や天皇賞に向かうのは、春のクラシック参戦組か
それとも夏を越して成長見せた馬が現れるのか、興味深い
一戦です。
春のクラシック組のタイトルホルダーが人気を集めそうですが
先週のセントウルS優勝馬レシステンシアの弟グラティアスが
この夏でどこまで成長し、素質を開花させるのか注目です。
また夏の典型的な上り馬で2連勝中のソーヴァリアントと春の
クラシックを故障により断念し、長期休養明けで出走してくる
オーソクレースにも注目しています。
成長著しい3歳馬だけに春の成績だけでは判断できず、
どの馬が勝っても不思議ではないセントライト記念。
果たして第二のアカネテンリュウは現れるのでしょうか。
今週も全馬の無事を祈ってレースを見ます。


