先週行われました第21回アイビスサマーダッシュは1番人気の

オールアットワンス優勝。

2着には2番人気で一昨年の覇者ライオンボスが入り、

人気通りの決着になりましたが、3着には1頭だけ一番内を

ついた14番人気のバカラクイーンが入り、3着絡み馬券は

軒並み高配当になりました。

今回のアイビスサマーダッシュは内と外とに大きく分れたレース

となり、見ていてとても面白いレースになりました。

今週は、札幌競馬場で伝統の第69回クイーンステークスが

行われます。

クイーンステークスは1953年に旧馬齢4歳牝馬による重賞競走

として創設され、昭和期においては東京競馬場や中山競馬場で

牝馬による秋の重賞競走として行われていました。

1996年に秋華賞が新設された際、距離を芝の1800mに

変更し、秋華賞のトライアル競走となりました。

その後2000年に行われました牝馬競走体系整備の一環として

施行場を札幌競馬場に変更する共に現3歳以上の牝馬限定戦

となったため、これ以降、レースの位置づけや性格は大きく

変わることになりました。

昭和期においては秋以降に行われていたため、夏の札幌での

開催に関しては、未だにあまりピンと来ていません。

 

思い出の馬は、昭和47年第20回優勝馬タカイホーマです。

タカイホーマは、地方競馬の史上最強馬と評され、中央競馬でも

天皇賞や宝塚記念に優勝した名馬ヒカルタカイの妹として

昭和44年に生を受け、昭和47年の牝馬クラシック組で関東の

仲住厩舎に所属しました。

同期には桜花賞馬アチーブスター、オークス馬でダービー馬

タケホープの姉タケフブキ、後に安田記念を制したキョウエイ

グリーン、朝日杯3歳S他重賞を制したトクザクラ、シンザン記念他

重賞を制したシンモエダケ等、やはり牡馬同様、昭和47年組には

多くの名牝が存在していました。

タカイホーマは札幌でのデビュー戦には敗れたものの、2走目の

新馬戦と特別戦を連勝し、関東のエースに躍り出るかと思い

ましたが、当時の3歳牝馬には、東のトクザクラ、西のシンモエ

ダケという特に図抜けた牝馬がいたため、まだ目立った存在では

ありませんでした。

年が明けて競馬界は馬インフルエンザや組合ストライキの影響で

大幅にレーススケジュールが乱れ、クラシック路線も2ヶ月遅れで

開催されることになりました。

そんな状況の中、旧馬齢で4歳になったタカイホーマは3月に

行われることになった京成杯で初重賞に挑戦し、関西の3歳

チャンピオンで疾風吹く言われた強豪ヒデハヤテや後の皐月賞馬

ランドプリンスには負けたものの、クラシック候補の牡馬相手に

4着と大健闘しました。

この後、タカイホーマの快進撃が始まり、牝馬同士のクイーン

カップでは2着に5馬身差をつけて圧勝、その後桜花賞への

出走は断念してカーネーションカップに出走し、2着に4馬身差

をつけてここも圧勝。

そして続くオークストライアル4歳牝馬特別では後のオークス馬

タケフブキをやぶって優勝し、3連勝を飾ると共にオークスの

最有力馬に躍り出ました。

本番のオークスは距離が2400mであったため、父がクラシック

戦線で距離に泣いたアローエクスプレスと同じスパニッシュエクス

プレス持つタカイホーマは距離が持つかどうかと言われました。

それでもオークスでは1番人気に推されたタカイホーマは直線で

先頭に立つなど大健闘し、弟で後のダービー馬タケホープの

姉タケフブキに敗れはしたものの、2着に入りました。

次に出走した当時残念ダービーと言われていた日本短波賞では

イシノヒカル、ハクホウショウ、スガノホマレ、タケクマヒカル等の

名立たる牡馬相手に僅差の3着に大健闘しました。

そして迎えた第20回クイーンステークスでは、斤量を他馬より

3キロも多く背負ったものの、圧倒的1番人気に推され、その

期待に応えるように、ライバル馬キョウエイグリーンに2馬身差を

つけて圧勝し、格の違いを見せつけました。

この強さにタカイホーマは間違いなく4歳牝馬ナンバー1であり、

秋の女王の座についたとまで言われました。

しかし、この勝利がタカイホーマにとっての最後の勝利でとなり、

そして、この後に起きる悲劇を誰が予想したでしょうか。

次に出走した京都牝馬特別においても、1番人気推され、

ライバル馬のアチーブスターやシンモエダケには勝ったものの、

僅差の4着に敗れてしまいました。

そして迎えた運命の第3回ビクトリアカップ、今の秋華賞にあたる

レースには桜花賞馬アチーブスターやライバル馬シンモエダケも

参戦しましたが、東の代表格となったタカイホーマは、このレース

でも当然のように1番人気に推されました。

運命のスタートが切られ、予想外の先行策に打って出たアチーブ

スターを前方にみながらタカイホーマは中団を進み、レースは

スローペースでの展開となりました。

そして勝負どころの第3コーナーに入ったところでタカイホーマに

異変が発生して急激に失速し、そこで停止させることが出来ずに

そのまま4コーナーまで来るも、コーナーを曲がり切ることが

出来ずに崩れ落ちるかのように転倒し、競走を中止しました。

落馬競走を中止したタカイホーマの状態は酷く、脚の第一指関節

完全脱臼、右後ろ脚浅屈腱断裂を起こしていて、更に折れた骨が

心臓に刺さってしまったことで出血多量を起こし、死亡しました。

4年にも満たない短い生涯でした。

突然起こった悲劇にスタンドはどよめき、若き名牝の死を多くの

人が悼みました。

一説によると、タカイホーマは3コーナー右後ろ脚浅屈腱断裂を

起こしたが、競走馬の本能なのか、その時すぐに停止させることは

出来ずに、そのまま走り続けたため、次には前脚を脱臼して

しまい、ついに4コーナーを曲がることが出来ず、崩れ落ちたと

のことです。

この悲劇は決して忘れられない、そして忘れてはいけない

京都に散った白い花タカイホーマの悲劇として、未だに

語り継がれています。

 

今週は函館競馬場で第69回クイーンステークスが行われます。

成績が安定している実力馬マジックキャッスルと名牝ジェン

ティルドンナの妹ドナアトラエンテ、そして巻き返しを図る

ルメール騎乗のテルツエットに注目しています。

競馬場は違うものの、悲劇が起こったレースだけに今週も

全馬の無事とレースの無事を祈りながらレースを見ます。