先週行われました第52回マイラーズカップは2番人気の

ケイデンスコールが直線で見事に抜け出して優勝。

1番人気のエアロロノアは5着に沈み、注目のエアスピネルは

8着という結果になりました。

そして昨日、香港シャティン競馬場で行われましたクイーン

エリザベス2世Cは日本のオークス馬ラヴズオンリーユーが

優勝し、2着にはグローリーヴェイズ、3着には牝馬3冠馬

デアリングタクト、4着には菊花賞馬キセキが入り、日本勢

による差のない見事なワンツースリーフォーという決着に

なりました。

デアリングタクトは差が無かったものの3着に敗れ、期待に

応えることは出来ませんでした。

ドバイや香港では国際レースらしく、各国から多くの実力馬が

集まってレースが行われ、本当に羨ましい限りです。

いつか日本でも各国から名馬達が出走する国際レースの実現を

と思ってきましたが、未だに実現どころか、縮小傾向になりつつ

あることは残念でなりません。

今週は前半戦を飾る古馬最高峰の重賞レース、伝統の

第163回天皇賞が今年は阪神競馬場で行われます。

大阪杯がGⅠレースになってからは、有力馬が分散してしまって

いることは残念ですが、天皇盾をかけた長丁場のレースで、

真の実力が問われる天皇賞は、私は大好きなレースであり、

毎年楽しみにしています。

 

思い出の馬は第37回優勝馬四泊流星の貴公子タイエテムです。

タイテエムは凱旋門賞馬セントクレスピンを父に持つ持込馬で

私が未だに競馬史上最強の世代と思っている花の昭和47年の

クラシック組でランドプリンス、ロングエース、イシノヒカルと共に

4強と言われていました。

当時の馬齢3歳でデビューしたものの、デビュー戦は関西の雄

ヒデハヤテの前に期待を裏切る8着に敗れ、続く2戦目で勝利

したものの、次の特別戦では3着敗れました。

年が明けて4歳になると、良血を開花させ、特別レースを連勝し、

東上切符を手にすることが出来ました。

例年ならクラシックには間に合わない時期でしたが、この年は

馬のインフルエンザが流行し、春のクラシックのスケジュールが

大幅に遅れたため、タイテエムも幸運にも何とかクラシックに

間に合うことが出来ました。

東上初戦の皐月賞前哨戦のスプリングステークスでは最優秀

3歳牡馬ヒデハヤテを破って優勝し、一躍クラシック候補に踊り

でました。

そして迎えた皐月賞では5戦5勝で無敗のまま東上した関西の

エース、ロングエースに続く2番人気に推されたものの、4強の

一角、ランドプリンスの前に7着に敗れてしまいました。

続くダービートライアルNHK杯では1番人気に推されたものの、

今度は遅れてきた関西の刺客ランドジャガーの前に3着となり

そして開催が遅れた影響で7月に行われたことで七夕ダービーと

呼ばれた本番の日本ダービーではロングエース、ランドプリンスの

後塵を拝して3着となり、実力はあったものの、史上最強の

メンバーが揃った花の昭和47組の前に、ついに春は無冠に

終わってしまいました。

夏を順調に超し、秋を迎えたタイテエムは菊花賞トライアル神戸

新聞杯ではランドプリンスを破ってレコード勝ちし、京都新聞杯

ではロングエース、ランドプリンスを破って優勝したことで、

最後の一冠、菊花賞では1番人気に推されました。

レースは最後の直線でタイテエムが先頭に立ち、杉本アナも

タイテエムの勝ちを確信したのか「四泊流星だ 緑に踊る」と

実況し、誰もがタイテエムがついに1冠を制したかと思いましたが、

関東のエースで直線の荒法師の異名を持つイシノヒカルが猛然と

追い込んで、タイテエムを交わして優勝し、結局タイテエムは

クラシックは無冠に終わってしまいました。

年が明けて古馬になったタイテエムは金杯からスタートするも

期待に反して4着に敗れ、その後腰に不安が出たため、休養を

余儀なくされました。

どうしても天皇賞に出走したいタイテエムは、今では考えられない

ローテーションでマイラーズCに出走して優勝し、復活の狼煙を

上げました。

菊花賞と有馬記念に優勝し、年度代表馬に輝いたライバル

イシノヒカルやロングエースが故障のため、戦線離脱する中で

迎えた天皇賞、発走直前から豪雨となり、視界不良の中、

スタートが切られました。

例によってミリオンパラが出遅れ、前半は後に中距離重賞を

席巻するナオキが先行し、後半からは先行馬が入れ替わる中、

シンザンの仔シンザンミサキが各馬を引っ張って逃げる展開に

なりましたが、レース中にもう一頭のシンザンの仔、後に超音速と

呼ばれた快速馬スガノホマレが骨折で競走を中止し、更に向こう

正面で今度はタイテエムが後ろから2番目にまで後退するという

波乱の展開となり、タイテエムが最後方に後退との場内

アナウンスにスタンドがどよめき、騒然となりました

しかし豪雨中、タイテエムは3コーナー過ぎから馬場の外側から

顔を泥だらけにしながらいつの間にか先頭集団を捕らえ、直線で

猛然と追い込んで、一緒に追い込んで来たカツタイコウを押さえて

ついに悲願の優勝を飾りました。

視界不良の中でタイテエムが直線で姿を現した時、杉本アナは

「無冠の貴公子に春が訪れます。タイテエム1着」と名実況し、

タイテエムの悲願の優勝を称えました。

しかし、次に出走した第14回宝塚記念ではハマノパレードの2着

に敗れ、更にレース直後に起こった出来事によりタイテエムは

脚に致命的な大怪我をしてしまい、長期休養に入りました。

その後、有馬記念を目指し懸命の治療を行ったものの、

回復せず、引退が発表されました。

引退後は種牡馬となり、内国産種牡馬不遇の時代だったものの

コーセイやシンチェスト、ウエスタンジョージ等を輩出し、内国産

種牡馬としては優秀な成績をあげたと思います。

私も牧場めぐりで晩年のタイテエムに会うことができ、歳は取って

老いていたものの、凛々しく立っている姿は、やはり四泊流星の

貴公子タイテエムでした。

タイテエムに今生の別れができて本当に良かったと思っています。

1992年に種牡馬を引退し、北海道新冠で余生を送って

いましたが、急速に老化が進み、1994年10月23日

老衰のため、25歳の生涯を終えました。

今週の第163回天皇賞は、やはり今年も牝馬の時代が続くのか

アーモンドアイやコントレイルと激闘を演じたカレンブーケドールと

菊花賞馬ワールドプレミアに注目しています。

そしてアリストテレスにとって真価が問われるレースとなります

ので、巻き返しを期待しています。

また、ダービー馬マカヒキにはダービー馬らしい花道を作って

あげて欲しいと思うばかりです。

今年の古馬路線を牽引していくのは、どの馬になるのか。

数々のドラマを生んできた伝統の天皇賞、今年はどのような

ドラマが展開するのか楽しみです。

今週も全馬の無事を祈りながら、伝統のレースを見ます。