先週行われました第69回阪神大賞典は3番人気のディープ

ボンドが5馬身差をつけて圧勝し、昨年5月の京都新聞杯以来

となる重賞2勝目を飾り、天皇賞での有力候補に躍り出ました。

圧倒的1番人気のアリストテレスは、スタート直後から終始折り

合いを欠き、直線に入って一瞬伸びて来るかと思う場面もあり

ましたが、直線半ばで力尽いて馬群に沈み、まさかの7着に

敗れるという波乱の決着となりました。

斤量の増加、折り合い、道悪などと敗因が言われていますが、

競馬に絶対は無いことを改めて思い知らされたレースとなり

ました。

阪神大賞典の道悪での過酷な長距離レースを使った馬達の

疲労度がどこまで天皇賞に影響してくるのか注目です。

また、競走中止したゴーストは心房細動だったとのことですが、

無事に競馬場に帰ってくることを祈っています。

今週は、中京競馬場で伝統のGⅠレース高松宮記念が行われ

ます。

高松宮記念は1971年に高松宮杯として創設され、1995年まで

6、7月に行われていましたが、1996年の競走体系の整備に

より、本競走は距離を芝1200m短縮のうえGⅠ競走に格上げ

され、春の短距離王決定戦に位置づけられました。

その後1998年には現名称に改称され、2000年からは施行

時期も現在の3月に変更されました。

昭和期においては、宝塚記念の後に行われる重賞レース

高松宮杯として行われていました。

当時は前半戦最後を飾る重賞レースであったため、ハイセイコー

をはじめ、トウショウボーイやナリタブライアン等、競馬史上に

残る名馬達が参戦していましたし、数々のドラマや出来事が

ありました。

私の記憶の中に絶対忘れられない、いや決して忘れては

ならないレースがあります。

それはハイセイコーの出現で大いに沸いた1973年に行われた

第3回高松宮杯です。

1番人気は天皇賞馬ベルワイド、2番人気は宝塚記念に優勝して

意気上がるハマノパレードでした。

レースはハマノパレードのいつもの軽快な逃げで始まり、直線に

入っても二の足を使って2番手のタケデンバード突き放し、

誰もがハマノパレードの圧勝かと思った残り200mの地点で

突然、前のめりに転倒し、競走を中止しました。

この事故で田島騎手は肩甲骨を骨折し、ハマノパレードは

左第一関節脱臼および左第一指節種子骨粉砕骨折を発症し、

競走後に予後不良との診断が下されました。

ゴール前でのあまりにも悲惨な光景に私は声を上げ、ショックで

しばらく呆然としていました。

今は予後不良の場合は、苦しみを防ぐため安楽死の処置が

取られていますが、当時はまだそのような制度にはなって

いなかったようで、また人によっては、馬は経済動物、家畜だと

いう認識があったためなのか、ハマノパレードは骨折後に痛みで

苦しんでいたものの、軽減措置もされないまま、翌日に、と殺場に

送られ、その日の内に馬肉として売られたと言われています。

あまりの悲惨な出来事として、今でもハマノパレード事件として

語り継がれています。。

しかし、このことが明るみに出て、世間から批判されたことから、

その後、日本中央競馬会は安楽死制度を確立しました。

悲しく辛い出来事でしたが、ハマノパレードの苦痛の死が無駄に

ならず良かったと共に後世に残した功績は大きかったと思います。

ハマノパレードのたてがみは京都のお寺に納められ、静かに

眠っています。

そして優勝したタケデンバード自身も稀に見る数奇な運命を

たどった競走馬でした。

当時、タケデンバードが出走するレースは、必ず何かが起こる

と競馬ファンの間で言われていました。

タケデンバードは未勝利を勝った後、4頭が落馬するという

異例な状況での特別レースに何の不利も受けずに勝利し、

その後、私が競馬史上最強の世代と思っている昭和47年組

によるダービーでは惨敗、秋になってカブトヤマ記念に参戦

するもののヒンドスタン最後の傑作と言われたハクホウショウの

前に9着に惨敗。

そして今は無くなってしまったクモハタ記念で再びハクホウショウ

と対戦し、直線で逃げ込みを計るタケデンバードでしたが、猛然と

ハクホウショウが追い込んで2頭が並んでゴールに入りました。

誰が見てもハクホウショウがクビ差で勝ったと見ましたが、当時の

やり方で審判員が肉眼で判定した結果、1着はまさかのタケデン

バードという判定になりました。

当然、ファンや関係者が抗議するなど、大騒ぎになったものの

判定は覆ることなく、タケデンバードの優勝となりました。

これが競馬史上に残る大誤審レースとして、今でもクモハタ記念

事件として語り継がれています。

この大誤審の前に敗れたハクホウショウは年が明けてからは

重賞を3勝するなど大活躍し、関東の総大将として秋の

天皇賞で1番人気に推されましたが、スタート直後に脚を骨折して

競走を中止し、この大怪我により引退を余儀なくされ競馬場を

去りました。

この不運について、当時の心無いファンからはタケデンバードの

呪いではないかと、ささやかれていました。

古馬になったタケデンバードは、勝利から見放されていましたが

高松宮杯で突然快走し、ハマノパレードの惨劇の中で、棚から

牡丹餅的に勝利を得ることができました。

タケデンバードが出走するレースで起こる出来事の多さに

心無い競馬ファンからは魔性の馬、悪魔の馬、死神など、

決して受け入れ難い異名がつけられてしまいました。

タケデンバードには、何の罪もありません。

そうしたレースとめぐり合ってしまった不運な馬でした。

タケデンバード自身も高松宮杯優勝後は勝ち星に恵まれず、

翌年2連覇を狙った高松宮杯ではハイセイコーの前に惨敗し、

京王杯AHでは自らが落馬して競走を中止。

そしてラストランとなった毎日王冠では大差のしんがり負けを

期してしまいました。

このレースを最後に登録抹消となりましたが、その後タケデン

バードがどのような運命をたどり、どのような最期を迎えたのかを

今となっては知る由もありません。

本当に数奇な運命を背負ってしまった競走馬でした。

今週の第51回高松宮記念は距離が1200mということで、

スタート、展開、馬場状態により順位が大幅に変わる可能性が

ある難解なレースですが、レシステンシアが1200mをどう

さばいて行くのか、そしてダノン軍団のダノンスマッシュ、ダノン

ファンタジーに注目しています。

ハマノパレードのような悲劇が起こらぬよう、今週も全馬の

無事を祈ってレースを見ます。