今週は、秋のGⅠ路線を占う上で重要な歴史ある重賞レース
第71回毎日王冠が東京競馬場で行われます。
昭和期は、古馬陣が秋の重賞レース天皇賞や有馬記念に
向けての初戦レースとして出走していました。
現在では、マイルや中距離路線における古馬や3歳の実績馬が
秋の初戦レースとして出走しています。
思い出の馬は、音速の貴公子と言われた第49回優勝馬
サイレンススズカです。
1998年に入って古馬になって本格化し、宝塚記念優勝を
含めた5連勝を飾ってついに頂点に立ったサイレンススズカは、
最大の目標である天皇賞を目指し、秋初戦として毎日王冠に
出走しました。
このレースには、前年の3歳チャンピオンのグラスワンダー(後に
有馬記念2連覇)やエルコンドルパサー(後にジャパンCや海外
GⅠレースを制覇)が出走することを表明、両馬ともここまで
無配の4歳外国産馬であり、毎日王冠はGⅡレースではあった
ものの、実質上の日本一決定戦となりました。
このレースは別定戦のため、小柄なサイレンススズカの負担
重量は過去最高の59キロとなり、一方、エルコンドルパサーは
57キロ、グラスワンダーは55キロで、4キロもの差がついて
いました。
歴代最強馬とも言われているこの名馬3頭の超豪華メンバーが
揃うレースを観るため、当日は朝早くから13万数千人のもの
観客が東京競馬場に詰めかけ、GⅡ戦としては異例なことでした。
サイレンススズカはスタートから軽快に走り、大逃亡劇を開始。
1,000メートルを何と57.7秒という常識破りの超ハイラップを
刻むサイレンススズカの走りに13万超える観衆からは大歓声が
あがりました。
最後の直線に入ってからも彼のスピードは全く衰えず、食い
下がるエルコンドルパサーやグラスワンダーを子供扱いにし、
圧倒的な強さで快勝しました。
「早すぎる、強すぎる」13万を超える大観衆は、彼の芸術的な
美しい走りとスピードに酔いしれ、驚嘆しました。
鞍上の武豊騎手は、その勇姿がよくファンに見えるように配慮して
わざとサイレンススズカを外ラチ沿いに寄せ、天高く突上げ
ガッツポーズを繰り返しました。
第49回毎日王冠は、日本競馬史上に残る名勝負として
競馬ファンの脳裏に深く刻み込まれることになりました。
無敗の最強4歳馬と言われた2頭が敗れたことで、もう誰も
サイレンススズカを止めることはできません。
しかしこの時、この毎日王冠がサイレンスズカの最後の優勝に
なるとは誰が想像したでしょうか。
あまりにも規格外のターボエンジンによるスピードがあった故に
最後は脚が悲鳴をあげてしまったサイレンススズカ。
スピードの向こう側を知っているのは、サイレンススズカだけ
だったと私は今でも思っています。
今週の毎日王冠の注目は、何と言ってもサリオスでしょう。
春のクラシックは、コントレイルに後塵を拝しましたが、
コントレイルがいなければ、サリオスが無敗の2冠馬になって
いたと思います。
夏を乗り切り、どこまで本格化したかが注目です。
毎年やっている仲間内POGで雑誌の紹介が長距離系ハーツ
クライ産駒の牝馬として誤った表記となっていたため、獲得を
ためらったことを強く後悔しています。
サリオスが関東の総大将としてストップ・ザ・コントレイルに向けて
どのようなレースを見せてくれるのか、またサトノインプレッサ
と共に古馬陣とは初対戦となり、GⅠ級の古馬の出走は
ないものの、他の同世代の3歳馬との実力の差が明らかで
あったため、世代としてどの程度の強さがあるのかも、ある程度
判ると思います。
全馬の無事を祈りながら、今週もレースを観ます。