道中。

 

今となっては何を考えていたんだろう。

 

ただ心臓がずっとドキドキしていて、でも運転には集中していて、いわゆる“ゾーン”みたいなものに入っていたのだろうか。

 

実家近くのインターを通り過ぎ、まだまだぐんぐん高速道路を走って、忘年会に行く時くらいしか走らない道に差し掛かってきた。

 

とにかく事故らないように。

 

なにがなんでも会えるように。

 

 

15年ぶりで、最後の方の道が分かるかなと思ったが、意外とすんなり着いた。

 

とはいえ、思い出の詰まった場所。

 

最後に先輩と会った場所で、これから先輩と再会する場所。

 

 

車を停める場所を事前に聞いていたが、よく分からなかったので、大先輩に電話をした。

 

「おお!車はそれで大丈夫やで。みんな来てるでー」

 

 

荷物を取り出し、私は、何時間どころか、何日間もバクバクいわせ続けたままの心臓を抱え、旅館の入り口に向かった。

 

 

秋も深まった時期で、私が着いたのが18時ごろだったのもあり、あたりはひんやりとしていた。

 

 

旅館の入り口付近に、ワインが置いてあった。

 

「ワイン持って行くわ」

 

先輩が書いたその文字を思い出す。

 

 

この中に、いるんだ。

 

私が、ずっと想っていた先輩が。

 

まったく忘れられず、もう自分の一部になってしまった先輩が。

 

 

入り口の扉のガラス部分から、中が見えた。

 

懐かしい顔がいくつも見える。

 

10人ぐらいだっただろうか。

 

その中に、見覚えのある後頭部があった。

 

 

ついに、ここまで来た。

 

 

心臓が口から出そうだったので、えいやっと扉を開けても声が出せなかった。

 

 

「おお~!めっちゃ久しぶりや~ん!」

 

 

一斉にみんながこちらを見て、嬉しそうな顔をしてくれた。

 

 

「今日のシークレットゲストやでー」

 

私の都合で、参加を黙っていてくれた大先輩も、そう言いながらこっちを見た。

 

 

先輩はと言うと、

 

「おお~!しあ!!よう来たなあ!おれ、今お前の名前出したんやで!」

 

と、とてもびっくりしていた。

 

 

再会したてで「え?どういうこと?」と思っていると、

 

大先輩が、

 

「今日はシークレットゲストが来るんやで、ってさっき言ったらな、〇〇(先輩)が、「しあ!」って言ったんや。そしたらな、しあから電話が掛かってきたんや!」

 

 

えー!!!!!

 

 

ちょ、ちょちょちょ、私15年ぶりなんですけど。

 

この10人いる中で、先輩は、真っ先に私の名前を(どうやらフルネームで)挙げたと!?

 

今は10人でも、いつも何十人と来るようなところなのに??

 

 

ただでさえ心臓崩壊寸前なのに、この時は本当に、恥ずかしすぎて心臓が止まりそうでした。

 

 

「まあまあ、こっち来いや」

 

そう先輩は言ったけれど、私はもうドキドキが限界で、みんなが適当にイスを出して団らんしているところにはとても近付けず、すぐそこにあった階段に腰を下ろして、

 

「みんなと会うのが久しぶりすぎて緊張するから、ちょっともうちょっとしたらそっちに行くわ…」

 

と適当なことを言って、とりあえず命を守ることを最優先にしたのでした。

 

 

※この記事の投稿日からまさに10年前が、12年ぶりに先輩の声を聴いた日でした。歴史…!