あつこさんに先輩のことを話した。

 

 

元々は先輩の弟が好きだったこと。

 

 

その先輩弟と少しだけ付き合ったこと。

 

 

先輩弟のことで悩んだ時も、母を亡くして辛かった時も、一番力になってくれたのは先輩だったこと。

 

 

でもその先輩は、私の大好きで仲良しな女先輩と結婚したこと。

 

 

会いたくないのに会いたくて、ずっと好きで心の中から消えないこと。

 

 

この状態が長すぎて、もうどうしたらいいのか分からなくなっていたことなど、あふれるままの言葉で伝えた。

 

 

何度も何度も涙があふれて、そのたびに心が素直になっていって、当時の心の痛みや苦悩が呼び覚まされて、自分の心が研ぎ澄まされていく感覚に陥った。

 

 

中学生や高校生、大学生のころ、こんな気持ちで過ごしていたなぁって、心と体がよみがえったようだった。

 

 

私の乗り越える壁はいくつかあって、でももうそれを自分一人の力ではどうにもできなくなっていた。

 

 

先輩への想いは、膨らみすぎて、存在が長すぎて余計に。

 

 

でも、あつこさんと出会ったことで、動き出せる予感がした。

 

 

そしてそれはもうすでに始まっているようにも思えた。

 

 

初めての理解者だったかもしれない。

 

 

あふれる涙と、あふれる想い。

 

 

それが伝わる喜び、安心、信頼。

 

 

止まったままの私の心は、その自らを癒す方法をやっと手に入れることができたのだった。

 

 

具体的には、「クリーニング」という方法だった。

 

 

あつこさんに教えてもらったハワイ伝統のヒーリング「ホ・オポノポノ」。

 

 

なんでも潜在意識のクリーニングをするものらしく、そのやり方はとてもシンプルで、4つの言葉を唱えるだけ。(詳しくはググってみてくださーい)

 

 

「ありがとう」「ごめんなさい」「許してください」「愛しています」

 

 

この4つの言葉を、自分の頭に浮かぶ出来事や人が頭の中から消えるまで唱え続けるというものだった。

 

 

よく分からない…それがそんなに効果があるのかな…と思いつつ、いつでもできるのでやってみようと思った。

 

 

とにかく、この心から消えることのない先輩のことをどうにかしたかった。

 

 

一番よく実践したのはお風呂の時。

 

 

ここなら小さい声を出しても夫のいるところまでは聞こえないし、リラックスしつつ集中できる。

 

 

そして何より、先輩のことを思い浮かべながらこの言葉を唱えると、涙が止まらなくて。

 

 

次々とあふれる涙を、最後はすべてシャワーで洗い流してその日のクリーニングを終える、ということを続けて3週間が経ったある日、月のものがやってきた。

 

 

涙を流して月経が来て、いいデトックスだなぁ、いい感じだなぁ、と思いながら過ごしていたその日の夜。

 

 

先輩からメッセージが来た。

 

 

10年ぶりのメッセージからの、8ヶ月ぶりのメッセージ。

 

 

そこには先輩と仲良しの先輩方の写真が送られてきていた。

 

 

懐かしい顔の先輩2人が、これまた懐かしいラーメン屋でイスにもたれかかっていた。

 

 

どう見てもくたびれた中年のオッサンたち。笑

 

 

そら私も年取るわ、と思いながら懐かしく眺めた。

 

 

先輩も写ってたらよかったのになと思いながら。

 

 

そして、くたびれた先輩のうちの一人からの着信が残っていた。

 

 

これは…かけなおしたら…先輩の声を聞くことになるのかな…と思うと、ものすごくドキドキしてきた。

 

 

けれど、夫もいるし、どんな風に話せば良いのか分からない…。

 

 

ひとまず先輩に返信をすることにした。

 

 

元気ー?とか、どうしてるんやー?とかのやり取りをしていたら、、、(これだけでも奇跡を感じた)

 

 

着信を残した先輩から着信があり、私の心臓はバクバクに。

 

 

夫に「学生時代よく相手をしてもらった先輩たちが飲んでるみたいで電話が来たから、ちょっとしゃべってくる」と言って2階の寝室に入った。

 

 

夫は特にそういうことは気にしない人なので、「はーい」だか「ほーい」だか言っていたような気がする。

 

 

電話の向こうには先輩方が3人。

 

 

先輩以外の先輩2人と話すのもかなり久しぶりだったので、それはそれで別の意味でドキドキしたけれど、先にその2人と連続して話をしながら、

 

 

「この電話の向こうに先輩がいる…12年声を聞くことのなかった先輩が…。この電話、次は先輩につながるんだろうか」

 

 

とそのことで頭がいっぱいで、先の2人との会話も久しぶりなのにうわの空。苦笑

 

 

そしてついに、電話は先輩の手へと渡り、もうそれはもう、懐かしい声が聴こえて、耳触りが良くて、ほっとして、出会ってから今までの出来事や、抱えてきた気持ちがぶわああああっとこみ上げてきて、知られないように、気付かれないように、涙を流しながら、私は12年ぶりに先輩と会話をした。

 

 

会ってなかったけど、連絡も取っていなかったけど、ずっと自分のことを気にしてくれていたことが伝わった。

 

 

優しい優しい声。

 

 

ああこんな声だった。

 

 

こんな話し方だった。

 

 

「しあ」と名前を呼ばれるだけで、心がすべて持っていかれるこの感覚。

 

 

ずっと、聴きたかった。この声を。

 

 

本当は会いたかった。ずっとずっとずーーーっと会いたかった。

 

 

でも私は先輩が女先輩と結婚したことが苦しくて。

 

 

その出来事やそれからの自分の感情が許せなくて。

 

 

ここまで来るのに12年もかかってしまった。

 

 

でもようやく、この12年間心にひっかかっていたものを、太く厚く大きな壁を、越えることができた。

 

 

会話していたのはほんの10分程度だと思うけど、電話が終わったあとは呆然としていて、

 

 

壁を越えた実感がじわじわじわじわと押し寄せて、優しい気持ちが込み上げてきて、

 

 

母を亡くした時、先輩に失恋した時に匹敵するぐらいの、ものすごい量の涙があふれた。

 

 

私の心はやっと自由になれる、そう思った。

 

 

それが、ちょうど今から5年前のこと。