バラナシで 


ガンガーから昇る朝日を見た



その太陽は 

「わー  綺麗」とか「映えるー♪」といった 

明るくポップな感覚は、微塵も与えてくれず



わたしに

魂をわし掴みにするような 

衝撃をもたらした






バラナシに滞在中、
ガンガーへ( ガンジス川 )朝日を見に行った


バラナシからは頻繁に周遊ボートが出ており
ガンガーから臨む朝日を見るツアーが組まれているのだ
そして、世界中の観光客や巡礼者が
その周遊ツアーにこぞって参加する


ガンガー周遊といっても、
バラナシにほど近い一帯を
数時間かけて巡る、 ミニツアーだ
ガンガーは驚くほど大きく、長い!
全長は日本列島より長いのではないかと思う
( 知らんけど )
ボートでは( 人力で漕いでいる )とてもじゃないが、ガンガーの全貌は拝むことはできない


そして、バラナシとは
ヒンドゥー教徒にとって特別な土地なのだ
バラナシへ訪れ、罪を清めてくれるガンガーで沐浴( 禊 )をすることは、ヒンドゥー教徒にとっては憧れなのだそうで
それに、ガンガーそのものが神として崇められ、信仰の対象になっている


その感覚は、
言うなれば森羅万象、自然のあらゆる万物に宿るであろう不思議な力に精霊や神の存在を見いだした古来の日本人の感性と、少し似ているのかもしれない


ちなみに、
わたしがバラナシに滞在した時期は雨季で
人々から敬愛される 聖なるガンガーは
「 え、カフェオレですか? 」って思う程
… 濁っていた


どっからどー見ても汚っちゃな … ( ←失敬
いや!
黄土色の粘土を思わせる!
おおらかな色合いのっっ!!
神秘的なこの大河はっっ!!!
とうとうと、悠然と実に穏やかに流れており

ぱっと見、
穏やか&まろやかカフェオーレ♪の
まったりな流れ、に見えるそれは
川底ではかなり流れが急で、激しいらしく
優しい仮面を被った、 曲者らしかった



雨季のガンガーに慣れない観光客は、
その見た目の穏やかさに惑わされ
うっかり流されてしまう可能性があるから
「 沐浴は止めておけ、危ないぞ! 」と、
現地のガイドに何度も釘を刺されたし


そしてなぜか雨季の時期は、乾季の時期より
ボートの料金が割り増しになってる  笑
聞くところによると
雨季はガンガーの流れが急だから
ボートを漕ぐ力が( 人力で漕いでいる )倍ちかく要り、骨が折れる
よって、料金も高く設定されているらしい …
ボートの船頭がドヤ顔でアツく語っていたのを聞いたのだが

ほんまかいなー ╰( ºัロºั )╯







それはそうと、

ガンガーの朝日巡りツアーは
巡礼者や世界中の観光客
あらゆる人種の人々をボートに乗せて
まだ夜明け前の静かなバラナシを
粛々と出発した


夜明け前のガンガーは、肌寒かった
日本から赤道を越えて
インドへ来てから「 寒いな… 」なんて
つゆにも感じたことがなかったから
正直、驚いた 
インドでも肌寒いこと、あるんだ!と


夜露に濡れて髪や体が湿ってゆく
力強くオールが漕がれ( 人力で漕いでいる )
ボートがするすると湖面を走る
1隻のボートには20人ほど客が乗っているが
眠いのか、誰もあまり話さない 笑


オールが川をかき分け進む、その水音だけが
辺りに優しく響いて
瑠璃色に見える夜のガンガーは
静謐で、神秘的だった


ご存知だろうか?
ガンガーにはガート( 焼き場 )が存在する
それゆえ、ガンガーには死体が頻繁に流れていると噂されるが、
少なくともわたしは
滞在中にその光景に遭遇することはなかった
流れていたのを見たのは、牛だった


バラナシは、
インドの他の地域に比べても牛が多い
めちゃめちゃ、 多い
犬も歩けば、 野良牛に当たる ぐらい ( ←?
そしてガンガーに沿う形で存在するこの街は
通りや道が、ごっつ狭くて
更には、迷路のように入り組んでいる


バラナシに到着した日
道があまりにもぐんにゃりとひん曲がりすぎていて、その奇妙な地形にはびっくり仰天したものだ


道はどこもかしこも薄暗く不気味で
はっきり言って   怖かった …
そんな、道には思えない道を必死で辿り
角を曲がれば、 突然野良牛が現れ
正直衝突  ( あるいは、尻に体当たり)
びびること、この上ない


全ての牛は、特に何をするわけでもなく
ただ、ぬぅっと、ぼーっとつっ立っていて
道幅ぴったり、きっちきちに道を塞ぐという
いい仕事を、もの静かにかましてきた


しかも人慣れしており、
どいてもくれないもんだから 
人間が諦めて迂回をするか、
牛様を避けるように
壁をガリガリこすりながら通りぬける努力をするか、選択肢はその二択しかないのだった…







あぁ、そうそう、


牛への苦情話じゃなく
朝日の話だったよね、


そう、日の出だ


遊覧船のように
優雅に夜を縫って走るボートが
1隻、また1隻と
どこからともなく集まってくる


どうやら、日の出が間近らしい


ボートがまだ夜の濃い水上に
ミッチミチとひしめき合うその様は
どこかの国の水上マーケットのようで
これから目にするであろう神秘を待ち望む高揚感と期待、そして一体感にさざめいて
ある種独特の空気を醸していた


まだ暗いしじまのなか、
わたしはのんびりと 
心地よい川の波揺れに身を任せながら
日の出を待つ


きっとこれから昇る太陽は
日本で見る朝日と同じように
綺麗で、心洗われる光景なんだろう…
そんな風に、想像していた


だがそれは、 
すぐさま 鮮やかに裏切られる


太陽が水平線に現れた刹那、
驚いた 


あまりにも、あまりにも…

太陽がオレンジ色だったから! (← 語彙力よ

まるで高級卵の黄身のような、オレンジさだ
(← またまた、その語彙力よ



子供がクレヨンで描いたような
あまりにも稚拙な、極彩色のオレンジ太陽に
おののくわたし


う、うわぁ ー! (°∀° )   などと、 
分かりやすく驚いたのも束の間


太陽は水平線を蹴るかのように素早く離れ
どんどんと勢いを増し
力強く空を目指して駆け昇ってゆく
光の輪を大きく携えながら
これでもかというくらい
辺りを、暁の色に染め上げて



その  エネルギー

その、  熱



驚きのあまり
心がついていかなかった


清々しいとか 綺麗とか 
ありがたいねぇ … などという
じわりと染み入るような
しみじみとした感覚など、微塵もない
日本で見る日の出とは全く種類が違う!


どちらかというと、
はらわたを根こそぎ 
がっしりと、わし掴みにして
揺さぶりをかけられるような
そんな、 強烈な感覚だった



そして、太陽が昇りきった瞬間
さらに強い衝撃が、 全身を貫く 


暑い 

信じられないくらい暑い

その 太陽の暑さ




朝日が昇りつめた瞬間、
冗談かと思うくらい、一瞬のスピードで
辺りの気温が、ぐわっ!と上がる
その異様な、 一瞬のうちに起きた変化が
にわかには 信じられなかった …



夜露でしっとりとしていた夜を
太陽はあっという間に飲み込み
彼方へと連れ去る



圧倒的なそのエネルギーで
夜を朝へと、塗り替えてゆく


そして更に
わたしが驚愕したのは


体に湧き起きた、感覚だった


体が、
朝日が昇りきると同時に
まるで火がついたかように 

カッと!! 熱くなったのだ

鼓動がどくんと、 大きく脈打つ
その拍動が、 耳にまで伝わる



太陽の力で体が蠢きだすのを
成す術もなく、味わわされる
自分でも、それを 止められない



感動とはほど遠い、実感



生まれて初めて感じた感触
体の奥深く、 
恐らくDNAか何かに刻みこまれ、
仕込まれた何かのプログラムが
自動的に発動してゆくような、
そんな感覚だった


それは、恐怖にも似た衝撃で


体がざわめくと同時に、
子宮の裏側を
ざらりと撫で上げられるような 
ぞわりとする
叫び出したくなるような圧倒的な衝動が、
体へと 走り抜ける!


何なの、これは!!

ああぁ、怖い!

怖い! 怖い!



初めて訪れる体の感覚に、恐怖した



これが、太陽の力なんだ



命が息づく力、生命の源、
一瞬にして世界を変える太陽のエネルギー
その、大いなる神秘



 『お前の生命力とは、どんなものだ?  どこにある? 』


太陽に、
生き物としての命の在りようを
激しく揺さぶられ、
正面をきって 問われたような気がした



古代、様々な文明において
太陽が信仰のシンボルとなった

その力の凄さを 
偉大さを
無慈悲さを
 
わたしは自分の肉体の実感をもって、
深く理解をした








『 生きるって、こういうことなのだ… 』










大人になってわたしは、
いっぱしに自立して、自力で世界に存在しているような気になっていた節があった


だが、観光客気取りで
気軽に臨んだガンガーの太陽は
そんなわたしの狭量な驕りを
鼻っ柱からボッキリと、へし折った


1人で生きている気になっていたけど
太陽の力がなければ
人はこの地球では生きられぬわけで、


生きるとは、
太陽に、あらゆる自然の産物に
世界に、力を借りることだと思い知った

そしてさらに、
もっともっと大きな視点で見てゆくと
わたしたちは
宇宙から力を借りて存在しているという真理に思い至った


人は、いにしえの古代より
世界から、宇宙から抱かれ続けることで
この命を永らえてきたのだ


とても陳腐で
どこにでも転がっている
ありふれた言葉にはなるが、


生かされている、という事実を
ガンガーから昇る太陽に射抜かれたことで
わたしは身をもって 体感したのだった


生きるとは、大いなる他力に頼ること
助けてもらうこと
ひとつの命は、
その支えによってのみ存在しうること



自然界の造形は、
それを目にし、その恩恵に触れると、
得てして心が安らいだり、 穏やかで
清々しい気持ちにさせてくれるものである!
と安直に思ぅていたのだが、、、(´-ι_-`)



ガンガーの太陽は、
パンチが効いていた


さすが、インドだと思った









日が高く昇りきる



朝日を拝みながら
マントラを唱え、沐浴をする人の姿が
そこかしこに見てとれる
( マントラ = 祈りや瞑想で唱えられる聖なる言葉のこと


バラナシの住人が、市場へ向かう
朝食の時間だ
チャイやシュガートーストを食べに
屋台まで出てきているのだろう


のどかな 
バラナシのいつもの朝が、始まった



ボートが岸部へと向かい、迂回し始める
日の光に顕にされたた ガートの姿が
おもむろに視界の片隅に映り、
意識が現実へ  引き寄せられてゆく


そのガートからは、
空へと高く煙が上がっていくのが見えた



生も死も、清濁併せ呑むガンガー



人生の中で 
脳裏と体に焼き付いて    忘れられない光景が

またひとつ、できたと思った






~ 続く ~


さあ、次回はっっ♪ 
渾身のインド編  最終章!!

お楽しみにー! (*´︶`*)ノ゙☆