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またーり試験勉強de社労士

社労士の勉強をしています。
同じような勉強をしている仲間ができたらいいなと思ってます。

「社長!」


青年はアルミ製のフラッシュドアを閉めると事務所の一番奥の机に座っている男に向かって歩を早めた。

「おかしいじゃないですか。なぜ私が会社を解雇にならなければいけないのですか」
青年は真赤だ。


「解雇?」


「とぼけないで下さいよ。解雇というのは、使用者が一方的に労働契約を将来に向かって
解約することですよ」


「まあ、落ち着きたまえ」


男は諭すように言ったが、青年の声のトーンが下がる様子は全くなかった。


「落ち着いていられるわけがないじゃないですか」


ナショナルパルックライトの昼白色の灯りは自然で無機質な空間を演出し、

ダイキンのハウジングエアコンからは少しかび臭い冷風が流れてくる。


「大体ですよ。使用者は労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前に

その予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の

平均賃金を支払わなければならないと、法律にもうたってありますよ」


「いや、君は…」


「社長のおっしゃることが分からないこともないですよ。確かに私はクロームメッキ用の

治具にクレセントを差し込む作業の際に誤って転倒し大けがをし、何か月も仕事を休んでますよ。

それについては私だって、それなりに申し訳ないと思ってますよ。だけどこれは業務上の傷病ですよ。

いいですか?」


「労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり、その療養のため休業する期間、及びその後30日間は、

理由のいかんを問わず、使用者はその労働者を解雇することはできないんですよ」


「いや、しかし、君やむを得ない事由ということもあるじゃないか」


男は遠い目で青年を見ながら言った。


「やむを得ない事由かどうかは行政官庁が判断することでしょう。労働基準監督署の認定は下りたんですか」

青年はあくまでも挑戦的だった。


「いや」男は力なく首を横に振った。


「それでは、なぜ私がクビなんですか。どうして私の作業机がなくなっているんですか」

青年は早口に言い切り、差向いにはさんだ机に手をつくと大きく身を乗り出した。


「それは…」




「君が隣の会社の社員だからだろう」


これで何度めだろう…。


男は数カ月前、営業時間中に転倒し不幸にも頭を強打し部分的な記憶喪失を患い、

自分の会社の場所すら分からなくなってしまった気の毒な青年に噛んで含めるように言って聞かせると、


左手に受話器を取ったが、隣の会社に電話するのがいいものか、

救急車か何かを呼んだ方がいいものか決めかねながら、


摺ガラス越し、塊のようなアブラゼミの鳴き声を聞いていた。


                了