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またーり試験勉強de社労士

社労士の勉強をしています。
同じような勉強をしている仲間ができたらいいなと思ってます。

昔々、と言ってもそんなに昔のことではありません。


新幹線の“のぞみ”がまだ全席指定席だった頃のお話です。
あるところにアリとお約束のキリギリスが住んでいました。


ふたりは同じ都営住宅にお隣同士で暮らしていました。
たまに味噌が切れてしまったと言っては、キリギリスが借りに来たり、茨城にあるキリギリスの

実家からカボチャが送られてきたときはお裾分けに半分届けたりと、

そんな恰好でお互いに仲良く暮らしていました。


そんなアリとキリギリスですが、ひとつだけ大きな違いがありました。

足立区の工業高校を卒業したアリは法人である厚生年金及び健康保険の適用事業である

工場において工員として働き、キリギリスのほうは葛飾区の普通科の高校を中退し

人生はロックだと言いながらろくに定職にもつかず、身なりで人を判断する奴はクソだと言う

持論を振りかざし周りとの調和を省みない奔放な服装でブロークンな人生を歩んでいました。

勿論、第一号被保険者としての国民年金保険料、国民健康保険なども払っていません。


来る日も来る日もアリはよく働きました。自分のことしか考えていない上司の責任逃れに

挫けそうになったことも、やる気も技術もないのに、自分の権利だけは一人前に主張してくる
後輩などにつくづく嫌気がさしたことも、1度や2度ではありません。

それでもアリは働き続けました。


キリギリスは、と言えば、相変わらず定職に就くこともなく、30日未満で仕事を転々としておりました。

一定の地理的条件は満たしていましたので、手続きさえしていれば日雇労働被保険者に
なることもできましたが、キリギリスがそれをすることはありませんでした。
公共職業安定所を日々利用するなんて、ロックじゃないと思ったのか、あるいは印紙保険料の

半額負担が嫌だったのか。

それは誰にも分かりません。



キリギリスは夜の蝶々と闇に戯れ、アリは日の光の中あぶらと埃に塗れながら働き続けました。

粛々と誰にも邪魔されることなく滑らかにお互いの年月は流れていきました。


アリもそしてキリギリスも65歳です。


第二号被保険者として立派に勤めあげたアリは当然、満額の基礎年金それから2階部分の

厚生年金もそれなりの金額を受給できるようになっていました。


国民年金どころか、住民税すら非課税で生きてきたキリギリスは、どうでしょうか?

あの寓話に出てくる昆虫のように雪に埋もれてしまったのでしょうか。






 いえ、そんなことはありません。



キリギリスは厚生労働大臣が定める基準に基づく最低生活費を保護費として毎月支給されながら

最低限度ではありますが健康で文化的な生活を営んでおりました。


一方アリは満額の基礎年金を受給できると言っても、厚生年金の支給額については

標準的な年金受給世帯において、現役世代(働いている時)の平均収入の50%以上の

水準を確保するに止まり、それほど裕福な生活ができると言うほどの収入には達しないのが現状なのでした。


「いくら、国はすべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び

増進に努めなければならないといっても、これじゃ、あんまりにも不公平じゃないかしら」


「わたし、納得いかないわ」


アリの奥さんが、やりきれないと言った表情で愚痴をこぼします。


「まあ、そんなこと言うもんじゃないよ。それぞれ、違った価値観があるからさ」


「キリギリスさんが生活保護法に定める生活扶助を受けていなかったとしても、ぼくの年金が

増える訳じゃなし、人と比べてどうこうではなくて、正しいと信じたことを継続することが

出来た自分が幸せだなって思うんだよ」


「でも、あなた…」


アリの奥さんはまだ、納得が行きませんでしたが、のんびりと触角を揺らしながら膝に乗せた

孫をあやしている少し小さくなったように見えるアリを見ていると、

静かに柔らかい気持ちが戻って来ました。




…正しいと信じたことを継続することが出来た自分が幸せだなって思うんだよ。


ふわふわと宙に舞っていたその言葉に対して奥さんは心の中で、つぶやきました。






「…まあ、それもアリかな」


                            了