TDP-43
拙著でも
アルツハイマー型認知症で
登場してもらいました
実に謎の多いタンパク質ですね
リソウより。
新しいタイプの
パーキンソン病を発見
既知の物質と異なる
タンパク質の蓄積でも似た症状に
研究成果のポイント
❶筋萎縮性側索硬化症や
前頭側頭型認知症といった
神経変性疾患の病態に
関与していることが知られていた
トランス活性化応答因子DNA結合蛋白質-43
(TDP-43)
の異常蓄積により
引き起こされる
パーキンソン病(PD)の症例を報告
❷これまでPDの病態に
関与することが知られていた
αシヌクレインの蓄積は全く見られず、
TDP-43の異常蓄積が単独で
中脳黒質のドパミン神経細胞死を
引き起こし、
PD様の神経症状を呈することを明らか にした
❸PDの病態解明や
治療法開発を行ううえで、
TDP-43 の関与も
念頭に置く必要があると考えられる
概要
大阪大学大学院医学系研究科の別宮 豪一特任講師(常 勤)、大学院生の山下 里佳さん、望月 秀樹教授(神経 内科学)らは、大阪刀根山医療センター脳神経内科の井 上 貴美子医師と共同で、トランス活性化応答因子DNA 結合蛋白質-43(TDP-43)の異常蓄積単独により引き 起こされたパーキンソン病(PD)の症例を報告しまし た(図1)。
PDは、中脳黒質のドパミン神経細胞の変性脱落により 四肢のふるえ(振戦)、動作緩慢、筋肉の硬さ(筋強 剛)が出現する神経変性疾患です。
これまで、αシヌクレインという蛋白質の異常凝集がレヴィ小体を形成して中脳黒質にあるドパミン神経細胞死を惹起し、これらの運動症状を発症することが知られています。
今回の症例では、特徴的な運動症状を呈し、各種検査所見や臨床経過等から臨床的にPDと確定診断されまし た。
ところが、死後の神経病理検索では中枢神経内にαシヌクレインの異常蓄積は全く見られず、また、同じくPDに類似する症状を惹起することが知られているタウ蛋白の異常蓄積も見られませんでした。
さらに、
家族性 PDのほか、TDP-43に関連した神経変性疾患であるペリー症候群、筋萎縮性側索硬化症、前頭側頭型認知症に関連した遺伝子の変異を網羅的に検索しましたが、特に異常は発見されず、代わりに中脳黒質をはじめとした中枢神経の広い範囲にTDP-43の神経細胞内ならびにグリア細胞内の異常蓄積が見られました。
これらのことから、TDP-43に関連した全く新しいタイプのPDである ことが示されました。
今後、TDP-43のPDへの関与も含めた病態解明や新た な治療法開発が期待されます。
本研究成果は2022年5月9日に、米国の学術雑誌 「Movement Disorders」オンライン版に掲載されました。
研究の背景
PDは、主に中年期以降に発症し、手足の振戦(ふる え)や動作緩慢といった運動症状を呈する神経変性疾患です。これまでPDにおいては、神経細胞内にαシヌクレインという蛋白質の異常凝集が形成されることが病態 に深く関与することが知られていました。
一方で、トラ ンス活性化応答因子DNA結合蛋白質-43(TDP-43)は 筋萎縮性側索硬化症や前頭側頭型認知症といった別の神経変性疾患の病態に関与していることが知られていま す。
研究の内容
研究グループは、大阪刀根山医療センターで典型的パーキンソン病として治療していた患者の剖検と病理診断を 行ったところ、αシヌクレインの蓄積を一切伴わず、 TDP-43の異常蓄積のみで中脳黒質のドパミン神経細胞死が引き起こされることを発見しました。あわせて、神経変性疾患に関連する遺伝子を網羅的に検索しましたが 異常は検知されなかったことから、全く新しいタイプの パーキンソン病であると考えられます。
本研究成果が社会に与える影響
(本研 究成果の意義)
本研究成果により、TDP-43単独で黒質のドパミン神経細胞死が惹起されることが示されました。
今後は、パーキンソン病の病態を考えるうえでαシヌクレインのみならず、TDP-43の関与を念頭に置く必要があります。