T細胞も種類が増えましたね〜。
プレスリリースより。
二次進行型多発性硬化症
の診療に有用な
免疫学的バイオマーカーを確立:
〜エオメス陽性
ヘルパーT細胞の研究に基づく成果〜
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)神経研究所免疫研究部のベン・レイバニー研究員、佐藤和貴郎室長、大木伸司室長、山村隆部長らの研究グループは、NCNP病院・脳神経内科、同多発性硬化症センター、同放射線診療部および同臨床検査部との共同研究から、進行期にある多発性硬化症の早期発見に有用な血液診断マーカーを発見しました。
多発性硬化症(MS)患者の20−50%は、再発寛解型(RRMS)を経て二次進行型多発性硬化症(SPMS)へ移行しますが、SPMSでは中枢神経内で慢性炎症と神経変性がゆっくりと不可逆的に進行し、車椅子や寝たきりの生活に至る例が多く見られます。
治療薬の開発は進んでいますが、SPMSの診断は臨床的な評価に頼るしかないために容易ではなく、診断・治療の遅れなどの問題が生じています。
今回の研究では、免疫応答に関わるT細胞の一種であるEomes陽性2)Th細胞(エオメス陽性ヘルパーT細胞)がSPMSの診断や病勢評価において有用なバイオマーカーとなることを明らかにしました。
エオメス陽性ヘルパーT細胞の末梢血中の頻度(Eomes頻度)は、健常者、RRMS患者、一次進行型MS(PPMS)患者、SPMS患者の4群で比較検討したところ、SPMSで顕著な増加が見られ、SPMSの進行速度と有意に相関しました。
研究チームは以前にマウスのSPMSモデルでエオメス陽性ヘルパーT細胞が脳内炎症を起こすことを報告しましたが(Raveny et al. Nature Comm 2015)、今回の研究ではSPMS患者の死後脳におけるエオメス陽性ヘルパーT細胞浸潤の証明にも成功しました。
マウスの基礎研究の成果がヒト疾病で確認された意義は大きく、研究成果は今後、SPMS診断能力の向上、医療の均てん化、ひいてはMS患者の予後の向上に大きく貢献することが期待できます。
この研究成果は、米国アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)」オンライン版に報道解禁日を2021年3月9日午前5時(米国東部標準時間 3月8日午後3時)として掲載されます。