認知症治療 医療制度の準備不足がネックに | フレイルも認知症も減らない日本

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ウイルスと戦争の世紀で人生を終えることになるとは・・・まさに第三次世界大戦前夜の状況ですからね しかも本日は日本の金融市場はトリプル安

認知症《治療》なんて、
どういうレベルを
意味するのか❓

さんざん、
自分の本の中で、
《認知症治療薬》
なる単語を
使ってしまいましたが、
《治療》なんて次元に
遥かに及ばぬ薬剤の数々に
呆れてのことですからね。








英フィナンシャル
・タイムズ電子版より。



認知症治療、
医療制度
準備不足がネックに



認知症治療の特効薬が開発される日が来るのは、あまりに遠い未来の話のように思える。だが保健行政にかかわる世界中のリーダーたちは、飛躍的な治療法を提供するための医療サービスの備えをどうすべきか、今から頭を抱えている。



■新薬・新治療法で増える負担



遠からず認知症の特効薬が開発されると期待を寄せる人々にとって、過去数年は失望の連続だった。だが認知症治療との闘いは、研究所の中だけにとどまらない。

政策立案者や医療従事者は、認知症に有効な新薬や治療法が、逼迫する医療制度にもたらす実務・財政上の新たな問題について思案を巡らせている。

この問題について、米シンクタンクのランド研究所が詳細に分析している。

同研究所の協力の下、南カリフォルニア大学・慢性疾患ケア改善センターのソーレン・マットク所長は米国と欧州諸国の医療制度をそれぞれ調査した。

その結果を受けてマットク所長は「(欧米どちらも認知症の特効薬開発後の)準備ができているとは思えない」と端的に結論づけた。

欧州での医療制度調査によると、革新的な認知症の治療薬が開発されても、その治療を受けられない患者数は100万人に上るという。

一方、米国での調査では、新たな治療法が認可された後の20年間で、検査・治療を待っている間にアルツハイマー病を発症する恐れのある軽度認知障害の患者数が200万人に上ることが分かった。


■「アデュカヌマブ」治験中止の功罪



そう考えると、3月に発表された「アデュカヌマブ」の治験中止は各国の医療制度を大きなプレッシャーから解放したともいえる。

早期アルツハイマー病の治療薬候補として臨床試験が行われていたこの化合物は、認知症による記憶障害などの障害を引き起こすとされるたんぱく質「アミロイドβ(ベータ)」に有効である可能性があると期待されていた。

マットク所長は「もしアデュカヌマブが治療に効果を発揮し、2020年に医療現場で使われるようになっていたら、(医療制度の準備不足による)大きな社会問題が生じていただろう」と分析する。

アルツハイマー病は完治が期待できないため、発症前に予測して予防的な治療を行う「先制医療」が必要だと考えられている。

しかし先制医療という言葉に「(高脂血症薬の)『スタチン』の処方やワクチン注射など、人的リソースや特別な技能を必要としない、一般開業医ができるようなごく簡単な治療を思い浮かべる人は多い」とマットク所長は話す。

だが、アルツハイマー病予防の場合は高価な画像診断が必要とされる「高度な腫瘍治療」に近いプロセスがとられるといい、「予防的措置ではあるが、より洗練された医療的なアプローチになる」という。

ランド研究所の調査報告書から分かる欧米の医療制度に共通する問題は「実際に診断・治療を施すことができる専門家の不足」(マットク所長)だという。ただし、国によって医療サービスの仕組みに違いはあるため、人材不足に関しては少なくとも一時的に解決する方法はありそうだ。

マットク所長によると、ドイツでは認知症は伝統的に精神科医が治療を担当してきたという。精神科医は神経科医よりはるかに多いため、有効な治療法の開発後、わずか5カ月で治療を受けられる。一方、調査結果によると、治療までに待たされる時間が最も長いのはフランスの19カ月間だった。



■PETなど高額な医療機器が必要



治療に必要な医療機器、特に脳の画像の撮影・診断に使う陽電子放射断層撮影装置(PET)の利用可否も問題だ。

特効薬の開発直後に急増する治療の需要に見合うだけの医療機器が各国で購入されることはないだろうとマットク所長は予測する。患者が殺到する時期が過ぎれば、高額な医療機器を過剰に抱えることになると分かっているからだ。

しかし、検査や診察の方法を変えれば、負担を軽減できる可能性がある。マットク所長は、脊椎穿刺(せんし)での検査であれば「PET検査より格段に安価で、高額な設備投資も必要ない」と指摘する。

英アルツハイマーズ・リサーチUKの政策・インパクト部門を率いるアリソン・エバンズ氏は、認知症患者数は膨大なため、治療費用の負担について今から検討に着手しておくことは重要だと話す。

ロンドンに拠点を置いて医薬品の価値評価を行う英国立医療技術評価機構(NICE)は通常、臨床費用のみを評価している。

しかし認知症の特効薬による費用削減は、主に公的介護や家族、友人、親戚など身近な人による介護(インフォーマルケア)に起因するものであり、そのことを加味した評価が不可欠になるとエバンズ氏は明言する。

世界各国で保健予算が逼迫している現在、まだ実際には開発されていない認知症の特効薬に向けて、今から人的リソースを割いて準備する必要性があると、政府や医療制度に携わる人たちを説得するのは困難かもしれない。

しかし英医療経済研究所の経済モデルによると、英経済が認知症治療に費やしている260億ポンド(約3兆5300億円)のわずか1%を投入するだけでも、画期的な新薬の発見を促進し、認知症患者の生活水準を改善できるとエバンズ氏は語る。

「確かに(医療経済が逼迫した)現状を考慮する必要はある。だからといって(認知症治療薬開発後の)未来を無視すべきではない」