㊙️糖尿病性認知症 血糖変動からみる病理学的考察㊙️ | フレイルも認知症も減らない日本

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ウイルスと戦争の世紀で人生を終えることになるとは・・・まさに第三次世界大戦前夜の状況ですからね しかも本日は日本の金融市場はトリプル安

「糖尿病性認知症」に関する
羽生先生のデータは
2016年に出した
拙著でも活用させて頂きました。

“病理の奴隷”
じゃないとか言ってしまう、
威勢の良い先生方には、
どうでもいいことでしょうが、
四角いアタマの
わたくしには、
羽生先生の病理学的考察は
非常にわかりやすく感動しました。






日経メディカルより。



糖尿病合併認知症
血糖変動パターン
要注意


 糖尿病合併の認知症の中でも、その発症と進行に糖代謝異常が関与している病態では、2つの特徴的な血糖変動パターンが存在する――。

第53回糖尿病学の進歩(3月1~2日、開催地:青森県青森市)で東京医科大学病院高齢総合医学分野主任教授の羽生春夫氏らが、適切な血糖コントロールによって認知機能の回復も見込める病態として、「糖尿病性認知症」における血糖トレンドの把握と血糖コントロールの重要性を訴えた。

 2型糖尿病患者は認知症を合併するリスクが高いことが知られている。動脈硬化や脳血管障害といった循環障害を介して血管性認知症を起こしやすいことに加え、アルツハイマー病の発症リスクも上昇しているとの報告もある。

インスリン抵抗性やインスリンシグナル伝達の障害が、アミロイドβ(Aβ)の沈着やリン酸化タウ蛋白の発現を促進するとの機序が考えられている。

 一方、
糖尿病合併の認知症の中には、
循環障害が軽度で、Aβの集積も認められないケースが一定数存在する。こうした患者は、アルツハイマー病理や脳血管性病変よりも、糖毒性や酸化ストレスなどによる糖代謝異常に伴う神経細胞障害が認知機能低下に強く関与していると考えられる。


羽生氏らはこの病態を「糖尿病性認知症」と分類することを提唱しており、糖尿病を伴う認知症患者の約10%を占めると推定している。

 糖尿病性認知症の特徴として羽生氏らは、
糖尿病の罹病期間が長く血糖コントロール不良である、インスリン治療例が多い、低血糖発作が多い、注意力・遂行機能障害は重度だが遅延再生障害は軽度である点などを挙げている。

しかし、糖尿病性認知症の背景病理と血糖変動との関連性は明らかではなかった。

 羽生氏らは、
2型糖尿病でアルツハイマー病の疑いがある患者を、PET検査でAβの集積が認められた群(Aβ陽性群)と認められない群の2群に分け、さらにAβの集積が認められない群をタウ蛋白の集積が認められた群(Aβ陰性/タウ陽性群)と認められない群(Aβ陰性/タウ陰性群)に分類。

Aβ陽性群、Aβ陰性/タウ陽性群、Aβ陰性/タウ陰性群の3群のHbA1c値などの特徴を調べるとともに、15分毎に間質液中のグルコース濃度を測定・記録するFGM(flash glucose monitoring)機器を用いて、血糖トレンドを2週間測定した。

 その結果、
Aβ陰性/タウ陽性群は他の2群と比較して、低血糖を起こしていた時間が有意に長く、平均血糖変動幅(MAGE)も有意に大きかった。

さらに血糖変動の傾向を詳しく調べると、
Aβ陰性の2群はいずれも血糖コントロール不良だったが、中でもAβ陰性/タウ陽性群は食後高血糖を起こすことが多く、逆に朝方は低血糖に陥りやすいという特徴があり、「全体として血糖の変動性が大きい“高低血糖変動型”」(羽生氏)。

一方、
Aβ陰性/タウ陰性群では、平均血糖値はAβ陰性/タウ陽性群と同程度に高いものの、食前後を問わず血糖値の変動が小さく、高血糖状態で安定しているため、低血糖の頻度が少ない高血糖持続型”だった。

 各群の背景病理について羽生氏らは、
Aβ陰性/タウ陽性群はリン酸化タウ蛋白の異常蓄積を呈するタウオパチー、Aβ陰性/タウ陰性群はAβもタウ蛋白も介さない神経細胞障害、
Aβ陽性群はAβ集積による典型的なアルツハイマー病理であると考察している。

なお、
Aβ陰性の2群はいずれも、Aβ陽性群よりも有意にHbA1c値が高く、糖尿病の罹病期間が長い傾向が見られるなど、糖尿病性認知症に特徴的な性質を有していた。

 羽生氏は「糖尿病性認知症の背景病理の違いに、血糖変動のパターンが関係している可能性がある」と指摘。

タウオパチーと“高低血糖変動型”、非アミロイド非タウ神経細胞障害と“高血糖持続型”との関連性についての縦断的な調査が必要との考えを示した。

 さらに羽生氏は、糖尿病性認知症患者5人に対して、血糖コントロールと4~6カ月後の認知機能の変化を調査した過去の研究を紹介。

HbA1c値コントロール不良の1人は認知機能の改善が見られなかったが、HbA1c値が改善した4人では、注意力(Trail Making Test[TMT]-A)と遂行機能(TMT-B)で成績の向上が見られた。

 こうした結果も踏まえ、
羽生氏は「糖尿病性認知症は、血糖コントロールの改善により認知機能の回復が期待できる“コントロール可能な認知症(controllable dementia)”だ」と強調。

FGMなどを使用することで、糖尿病性認知症に特徴的な“高低血糖変動型”および“高血糖持続型”のような「血糖トレンドを把握した上で丁寧な血糖コントロールを行う必要がある」と指摘した。