慶大など 脳の神経活動 「見える化」  認知症薬開発で威力 | フレイルも認知症も減らない日本

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日本経済新聞より。


慶大など
脳の神経活動
「見える化」 
認知症薬開発で威力

 慶応義塾大学の岡野栄之教授やスタンフォード大学のマーク・シュニッツァー准教授らの研究チームは、マーモセット(小型のサル)が自由に動き回る時に、脳の神経細胞が働く様子を「見える化」する技術を開発した。

脳に内視鏡カメラを埋め、最大240個の神経細胞が働く様子を同時に記録できた。

パーキンソン病やアルツハイマー型認知症の治療法の開発に役立つ。

 成果は22日、米科学誌セルリポーツに掲載される。

 運動するときには、大脳皮質という脳の表面から動かしたい筋肉まで指令が届く。

大脳皮質の一部は「運動野」といい、運動したいという意思や実行に関わる神経細胞がある。

これまで人と同じ霊長類のマーモセットの神経細胞を観察した例はあるが、観察機器が繊細で、固定した状態でしか観察できていなかった。 

研究チームは、シュニッツァー准教授らが開発した、重さ2グラムの超小型の蛍光顕微鏡を採用。先端の内視鏡レンズを、マーモセットの脳の表面から約2000マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルの深さに埋めた。

この付近にある運動野の神経細胞が働くと光るよう、あらかじめ細胞ごとにたんぱく質などを仕込んだ。

 仕込んだたんぱく質などを使って光らせると、80~240個の神経細胞が同時多発的に働いていた。

長いときで10分以上連続で記録できた。

 チームは仕込んだ細胞に番号をつけ、マーモセットに様々な運動をさせながら神経細胞の働き方を記録して調べた。

まず目の前にレバーを置くと、レバーを引っ張った時に光る細胞の数が、休んでいる時のおおむね3倍以上だった。

 さらに、マーモセットが木の上で暮らすことに着目。

はしごを自由に登らせて取ったデータを調べ、右手ではしごをつかむ時に光る細胞の番号を十数個特定した。

ほかに、腕を右前に伸ばす時と左前に伸ばす時に光る細胞もそれぞれ特定。

記録をもとに腕を伸ばす方向を予測すると、8割以上の高い確率で当たった。

 マーモセットは脳の構造や機能が人間に似ており、遺伝子異常を持つマーモセットの開発が進んでいる。

チームは運動野より奥深くにある海馬などでも同じ技術が使えるとして、さまざまな神経細胞で確かめる方針。

脳波を使う補助ロボットの開発のほか、パーキンソン病やアルツハイマー型認知症などの治療法の研究にも役立つ。