言うまでもなく、
神経疾患の診断は、
一筋縄には行きません。
特異的な臨床症状も
あるような無いような、
画像もCTレベルでわかりゃ
苦労しない。
m3.comより。
多発性硬化症に類似した
免疫介在性神経疾患
「NINJA」を同定
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は4月3日、多発性硬化症(MS)に類似した免疫介在性神経疾患で、新たな神経難病「NINJA」の概念を提唱する研究結果を発表した。
この研究は、NCNP神経研究所免疫研究部の竹脇大貴研究生、山村隆神経研究所特任研究部長・多発性硬化症センター長、同病院神経内科の林幼偉医師、同病院放射線診療部の佐藤典子部長らの研究グループによるもの。研究成果は、米神経科学誌「Neurology Neuroimmunology & Neuroinflammation」オンライン版に掲載された。
脳神経内科の代表的な難病であるMSは、脳や脊髄の中枢神経のさまざまな部位で炎症に伴う脱髄や神経障害が生じる自己免疫疾患。
診断や重症度の評価においてMRI画像検査は有用だが、一部のMS患者においては、MRIでの異常所見が軽度であることもあり、症状・診察所見とMRI所見との間に大きな乖離がある。
世界で一般的に用いられているMcDonald診断基準では、時間的・空間的に多発する客観的臨床的証拠(中枢神経の障害を示唆する神経学的異常所見)を認め、他疾患に該当しない場合MSの範疇に含まれる。
しかし、
脳・脊髄のMRIが正常な場合、多くの医師は脱髄が存在しないと判断するため、診断保留となることや、身体表現性障害や詐病と診断されることもある。
今回の研究は、
MS/視神経脊髄炎類縁疾患(NMOSD)の診断または疑いで2016年にNCNP病院を受診した550症例のうち、MSにおける2010年McDonald診断基準を客観的臨床的証拠で満たし、通常撮像法の脳・脊髄3 tesla-MRIで異常を認めない11症例を対象とした。
研究グループは、
まず、これらの症例の臨床的特徴を調査。重症度を示す指標であるexpanded disability status scale score(EDSS)の中央値は6.0と高値で、機能的に高度の障害を認めたという。
MSで陽性率が高い髄液オリゴクローナルバンドは測定した9例全てで陰性だった。
多くの症例でステロイドパルス療法や血液浄化療法が有効であり、治療に伴う臨床所見の改善を認めたという。
3例で過去にインターフェロンβが使用されてたが、いずれの症例においても有効性を認めなかったとしている。
これらの特徴は、
MSとは一線を画すことから、この一群を新たに「画像所見は一見正常であるけれども、神経免疫学的に明らかとなった、自己免疫性脳脊髄炎」として、
“Normal-appearing Imaging-associated, Neuroimmunologically Justified, Autoimmune encephalomyelitis”(NINJA)と名付けたという。
次に
脳MRI拡散テンソル画像を用いた統計画像を解析。
通常撮像法のMRIでは正常に見える脳白質の異方性比率を、NINJA群9例と健常者群24例との間で比較した結果、NINJA群では広範囲の脳白質における異方性比率が低下。
拡散テンソル画像における異方性比率の低下は、神経線維の規則的な配列における構造的な乱れを反映しており、NINJA群における広範な脳白質障害を示唆しているという。
また、
フローサイトメトリーを用いた末梢血リンパ球を解析。
末梢血液中のB細胞全体に対するB細胞亜分画の頻度を、NINJA群11例と健常者群17例との間で比較した結果、NINJA群でプラズマブラストの頻度が有意に増加。
プラズマブラストはNMOSD患者の末梢血液中で増加し、病原性自己抗体である抗アクアポリン4抗体の産生能を持つことが報告されている。
NINJA群における末梢血でのプラズマブラスト頻度の増加は、自己抗体介在性の病態を示唆する結果だとしている。
以上の結果より、
NINJA群における神経障害は拡散テンソル画像解析で明らかとなった広範な脳白質障害に起因する可能性があり、一方で血液浄化療法に伴う臨床所見の改善と、末梢血リンパ球解析でのB細胞系の異常は自己免疫介在性の病態を示唆する結果だ、と研究グループは述べている。