座っている時間が長いとテロメアは短くなる | フレイルも認知症も減らない日本

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ウイルスと戦争の世紀で人生を終えることになるとは・・・まさに第三次世界大戦前夜の状況ですからね しかも本日は日本の金融市場はトリプル安

続きです。


 「血管年齢のように、テロメア年齢という表現はできるかもしれません。ただし、細胞の老化はテロメアの長さだけでは決まらない。活性酸素による酸化ストレスなど、他の要因もありますから」と近藤さんは苦笑する。


 つまり、テロメアの長さは「細胞の老化度」を見るひとつの尺度にはなるが、それだけで「あと何年生きられます」などと単純に寿命を判断することはできないわけだ。

 とはいえ、テロメアが短いということは、それだけ細胞が老化しているとはいえるだろう。

実際、「テロメアが短い人は動脈硬化が進んでいることが多い、といった報告はいくつもあります」と近藤さん。

テロメアが短い人はがんになりやすい(*1)、テロメアが短いと心疾患と脳血管疾患のリスクが高くなる(*2)といったことも確認されている。

 単純に数値化はできないとしても、細胞の老化度を示すテロメアの長さは、その人の寿命とも無関係ではなさそうだ。


その気になればテロメアは“若返る”?



テロメアはすり減っていく一方ではない。

「最近の研究から、運動などの生活習慣によってテロメアが伸びることが分かってきました」と近藤さんは続ける。

「テロメラーゼというテロメアを伸ばす酵素があります。これがあれば細胞が分裂してもテロメアは欠けない。生活習慣を改善することでテロメラーゼが活性化され、テロメア寿命を延ばすことができるんです」(近藤さん)

ちなみに
精子や卵子を作る生殖細胞やiPS細胞(人工多能性幹細胞)はテロメラーゼが活性化しているため、何回分裂してもテロメアが短くならない“不死の細胞”だ。

 
同じ平均年齢51歳の集団で、若い頃から運動習慣のある人たちとない人たちの白血球を調べた研究がある。運動している人たちのほうがテロメラーゼ活性が高く、テロメアも長かった(*3)。

カリフォルニア大学予防医学研究所のディーン・オーニッシュ所長は、35人の男性のうち10人にライフスタイルの改善を指導した。

低脂肪で野菜や果物の多い食事、週5回以上の有酸素運動、ストレス管理など、トータルで「健康的な生活」をしてもらった。

5年後に採血してテロメアの長さを測ると、何もしなかった人たちが3%短くなっていたのに対し、指導を受けたグループは逆に10%長くなっていたという(*4)。

テロメアの長さだけを見れば
“若返った”わけだ!

つまり、「努力でテロメアを伸ばすことができるんです」と近藤さんは指摘する。

  
*1 PLoS One. 2011;6(6):e20466
*2 BMJ. 2014 Jul 8;349:g4227
*3 Circulation. 
         2009 Dec 15;120(24):2438-47
*4 Lancet Oncol. 
         2013 Oct;14(11):1112-20



座っている時間が長いと
テロメアは短くなる

 
テロメアを伸ばすのは、
それほどハードな運動ではない
可能性も高い。

最近は「セデンタリー」(=Sedentary、じっと座っていること)が健康に悪いことが注目されており、WHO(世界保健機関)は「セデンタリーはがん、糖尿病、心臓病のリスクを高める」と警告している。

大阪大学が40~70代の日本人約8万人を19年間追跡した調査もある。1日のテレビ視聴時間が2時間延びるごとに肺塞栓症による死亡率は1.4倍高くなり、1日5時間以上テレビを観る人の死亡率は2時間半未満の人の2.5倍だった(*5)。

 このセデンタリーは、どうやらテロメアの長さにも影響するらしい。

 スウェーデンで平均68歳の49人を運動するグループとしないグループに分けて、運動とテロメアの関係を調べた。

6カ月間運動を続けた人たちは体重や体脂肪率が減少したが、意外なことにテロメアの長さは運動量とは関係しなかった。

ところが運動と別に「1日に座っている時間」を調べてみると、座っている時間が短い人ほどテロメアが長いことが分かったのだ(*6)。

 テロメラーゼ活性を高めてテロメアを伸ばすには、まず健康的な食生活や運動を心がけること。

それ以上に「まめに席を立ち、長時間座りっぱなしでいないこと」が大切なのかもしれない。

  
*5 Circulation. 
         2016 Jul 26;134(4):355-7
*6 Br J Sports Med. 
          2014 Oct;48(19):1407-9



近藤祥司(こんどう ひろし)さん
京都大学医学部附属病院 
地域ネットワーク医療部 准教授