生きる贅沢
私は今、生きることの贅沢を知っている。
夜は静かだ。
少し暗めの部屋で、椅子に腰かけ、
温かな珈琲をゆっくり飲みながら、
私は自分の人生を振り返っている。
何かを書いているわけでもない。
ただ静かに座り、珈琲を飲みながら
これまで歩いてきた道を思い出している。
わたしの前に道は無く、
わたしの後ろには、道ができている。
それを悟ったのは、
病にかかってからのことだった。
若い頃には気づかなかった。
いや、気づけなかった。
病の中でも、
気づけなかった。
それは何か。
生きているということは、
それだけで贅沢なことなのだ。
こんにちまで歩いて来て、
ようやく私はそれに気付いた。
そして今、実感している。
生きているということは、
ただそれだけで贅沢なのだと。