『やねだん』行政に頼らない「むら」おこし 
 豊重 哲郎さん(柳谷自治公民館 公民館長)

『神山プロジェクト』~すきな町を好きな町に~
 大南 信也さん(認定NPO法人グリーンバレー 理事長)


この土日に2人の地域づくりのトップランナーのお話を聞く機会がありました。
情報はもちろん入っていたのですが、実際に聞く機会がなく、今回初めて取り組みについて勉強させていただきました。


人材育成の方法として、

①一緒に伴奏してくれてスキルを身に付けさせる方法

②事例から学ぶ方法

①、②の併用

があると思いますが、①の場合特に気を付けていることがあります。


常々、いかに多くの事例を学ぶかを考えており、地域の状況と多くの事例を知っていれば、組み合わせによってその地域らしい取組が生まれると思っています。

ただ、手段だけに目が行きがちで、「葉っぱビジネス」、「サテライトオフィス」、「耕作放棄地の利活用」など、有名になると「成功事例を学びたい」と視察が増えて来ますが、その通りやってもうまく行かないことは多くの人が分かってきたことです。
地域の資源も違えば、課題も状況もタイミングも微妙に違う。

グリーンバレーの大南さんも取組みの当初は先進地視察を繰り返すが、結果が出ない日々が続いていたそうです。
有名なサテライトオフィスの事例も狙ってやったというよりかは、必要性があって、やりたいプレイヤーが居るなどの条件が揃い変化して行った中で生まれたと説明していました。

一番参考になるのはどういうプロセスを踏んだのか?だと思いますので、特に先進地事例の講演の場合は気を付けています。


大南さん(グリーンバレー)の場合はスタートがアメリカから戦前に平和の象徴として送られてきた人形の里帰り活動からスタートし、芸術の町という事で海外を含むアーティストを呼び込む活動を始め、そこからビジネス人材を引っ張って来ることへと変化して行き、多くのビジネスマンが滞在することでレストランの需要が増え、地域の農業者が地元で売ることができるようになった。

豊重さん(やねだん)の場合は、文化を大事にし、芸術家達が移住してきますが、基本的は「地域運営」に主軸を置いて、自主財源を作るために耕作放棄地を開墾して唐芋(さつまいも)も植え、儲かったら住民にボーナスで還元するという取組をしています。

組織作りでも参考になる事例がありました。

どちらも移住者が増え、活躍していますが、やねだんの場合は「地域が主役」で、対立者も無関心ではなく意見を言ってくれる重要な存在として向き合い、地域の重鎮も最終的は理解得る感動ストーリーでした。
グリーンバレーの場合は地域に向き合わない訳ではないですが、やる気のある数人で小さく事業を回し、実績を作って行くことで地域に理解を得る形です。
実効性のある組織を作る過程でも、お墨付きを与える数名(町長、役場職員、大南さん、仕事づくりで有名な移住者)がトップになり、ワーキンググループは各種団体ではなく「何かやりたい」という想いを持っている民間、行政の人たちで編成されているのは面白い。
トガったアイディアをトップが潰さずに生かすので、「誰が」、「どうやって」という事が問題にならず、スムーズに実行に移すことができるとのこと。
行政批判をしないというところもポイントに挙げていました。前例がないことには理解を示せない行政に対し、批判するのではなく、分かりやすい実績を先に作る努力にエネルギーを変換すること、そうすればあとづけで支援をいただけることが多いとのこと。
考え方一つです。民間にも限界があり、行政にも限界がある。それを補完し合う関係性ができれば強いですね。


言葉にすれば簡単ですが、手段よりもアイディアが生まれたプロセスやそのために行動したリーダーの人間力が大事です。
地域づくりは年数がかかり、もしかしたら自分が生きている間には評価されないかもしれないけど、子どもや孫の代までも考えて行動する必要があるというのはお二人の共通見解でした。

何も行動せず、失敗経験の蓄積がない活動からは何も生まれないという事をあらためて肝に銘じたいと思います。