昨日のブログで,「A book is on the desk.」という英語は変だということを書きました。なぜ変なのか,ちょっと考えてみましょう。


 まず「冠詞」とは何かというところから始めます。


 冠詞とは名詞の前に置かれるもので,不定冠詞a[an]と,定冠詞theの2種類があります。


 不定冠詞a[an]は,単数名詞の前に置き,複数名詞の前には置かれません。a[an]はもともとは,one「1つの」の語強制が弱まったもので,意味は「任意の1つの~,ある~」を表します。それに対してtheは,that「あの,その」の語強制が弱まったもので,意味は「特定の~」を表します。はっきりとした違いは,a[an]は「他にもある」ことが前提なのに対して,theは「それしかない」ことが前提になっているところにあります。


 冠詞というものは,日本語にはありません。だからよくわからなくなるのですが,実は日本語の中にも,冠詞と同じ役割を果たす語があるのです。


 次の日本語の文章を読んでみましょう。


 昔々,あるところにおじいさんとおばあさんいました。おじいさん山へ芝刈りに,おばあさん川へ洗濯に行きました。


 ふつうに誰もが読める日本語なので,あまり考えたことがないかもしれませんが,この文章は次のような仕組みでできています。


 まず,頭の中で「おじいさんとおばあさん」というものをイメージしなさいと言っています。次に出てくるじいさんはもう別のおじいさんではなくて,あなたが頭の中に描いた特定のおじいさんなのです。英語では冠詞が果たしている機能の一部を,日本語では格助詞が受けもっているのです。


 「が」と「は」は,同じ格助詞ですが,はっきりと役割に違いがありますよね。それと同じように,不定冠詞と定冠詞も役割が違うのです。


 A book is on the desk.(ある本というものが,その特定された机の上にある)


 主語の位置にいきなり「任意の1つの~」がくる違和感を避けるために,


 There is a book on the desk.


 という存在構文と呼ばれるものが使われるのです。ここで,thereは「そこに」という明確な意味を表しているわけではなく,ただ単に違和感を与えないという役割のために,そこに置かれているのです。このような使われかたをする語のことを文法用語では「虚字詞」と呼びます。


 This is a pen.(これはペンというものです)がばかばかしいのは,「言われなくてもわかります」ということだからです。


 You are a girl.(あなたは女の子です)も同様に,かなり使わない言葉のはずです。


 a:Thank you. You are a very kind boy.

 b:No, I am a girl.


 こういう会話があれば,まだ使うこともあるでしょうが,中学校の時に,こういう訳のわからない文章を疑問文にしたり否定文にしたり,色々とやらされて,挙げ句の果てには,40人近くの生徒が一斉に「This is a pen.」と声を揃えて言うのは,英語しかわからない人にとっては,かなり滑稽なものに映ると思います。


 ちょっと話がそれましたが,大切なことは,英語の語順と日本語の語順は違うということを理解することです。


 お互いに知っていることから,知らないことへと情報は展開します。だから,相手が知らないと思うものを最初に話題にあげる時には定冠詞はふつう使われません。


 On the train I met a very charming girl. She got off the train at Shinagawa.(電車の中でとても可愛い女の子に会った。その子は品川で電車を降りた)


 これが,the girlだと,他にいない特定の女の子を指すことになるので,話している相手との間で,すでに話題にのぼっていなければならないことになります。


 A bird flies.(鳥というものは飛ぶものである)


 不特定なものが主語の位置に来て,動詞が現在形になっていると,なぜだか急に普遍性をもった意味になります。


 文法的には破綻していないようでも,表したい意味になっているかどうか,それによって冠詞を使い分けるようにすればいいと思います。


 無冠詞で使われるものもありますが,それについてはまた詳しく述べる機会があると思います。昨日のブログの中でちょっとだけ説明したことの補足でした。