■マカオ
自由の使い方も自己責任
何かと昨今の中東紛争から日本で自己責任論が注目、
俺は帰る場所が有る事を再認識した。
帰国する最終日の早朝、滞在のホテル前に待機するタクシーに乗り行先を空港と告げる。
運転手は寡黙で道中話しかけられることも無く俺は安堵したが視界に入ったフェリーターミナルが近づくと確認したいのかフェリーターミナルと告げられ俺は「マカオ空港」と言い返すも日本人の個人客で空港利用者は少ないようだ。
空港施設内は利用客の姿も少なく受付窓口も閉鎖中で開始時間まで余裕が有り空港施設に対面する小高い丘陵の頂上を目指し螺旋道路を歩く。俺は滞在中の出来事は旅日記として書き止める。
勿論、書けることだけだ、誰かに読んでもらいたい訳ではない。しかし幼少期から他人の写真アルバムを見たり同級生達が綴った文集を見たり読んだりは苦にならなかった。
夜間でも熱風で身体を包み込む感覚に馴染めなかったが滑走路が眼下に臨める頂上は長袖でも苦にならず小型デジタルカメラで駐機する航空機を撮っていると、いつの間にか時も過ぎ慌てて戻る際に上って来る黒塗り小型車とすれ違い空港施設に戻ると受付窓口を占拠し喧噪の団体客に交じって進み搭乗待合室までたどり着く。
俺は一時の安堵も忘れたかのようにガラス越しに駐機する航空機を眺めたり撮っていると俺の名前を呼んでいるのに気付いた。
「Mr.Satosi Aihara Last Call ........」
慌てて反転し搭乗口に駆け寄る途中に俺が居た場所に入れ替わるように向かう幼児を連れた長身の女性と、すれ違った。
雲海を眺めながら機内食を食べている俺だが搭乗待合室で、すれ違った長身の女性と異国で再度出会う事になるとは知る由もなかった。
Wiedersehen in einem Spa in Deutschland
夫 ステファン・バルトはマカオのバレーボール協会の招きで一期二年間の指導コーチを務めていて三ヶ月後の任期切れでドイツへ帰国する前の短期休暇であったが家族をマカオに呼び寄せていたが急転直下に協会理事から後任者の辞退の為に契約更新を承諾するも、落胆する妻 モニカ・バルトを説得し空港へ送り届けた。
空港でステファン・バルトの見送りを受けたモニカ・バルトは別れを愚図る息子ハンスを何とか なだめ搭乗待合室に来て飛行機が見える場所へ歩む途中に急ぐ黒縁眼鏡の東洋人が持っているバッグとすれ違いざまに当たりそうになるも避けてガラス越しに息子ハンスを抱え上げた。
「ママ~ のる ひこうき どれ 手に さわれそう」
「ハンス ママね 昔バレーボール選手だったの わかる」
「うん パパに きいたよ しょくば けっこん だって」
「ハンス ママね 飛行機の座る所が狭いから 乗るの止めようかな~」
「僕 大きく なったら 手の上にママと ひこうき のせるから がまんして」
(フィクションであり、実在の人物組織とは一切関係ありません)
(画像はイメージです)