土曜日の14時半。

9号線の上りに、渋滞はない。


少し遠出をした帰り道。

疲れないうちに帰るとなると、

この時間には帰路に着く。


前方にはタンデム走行の父娘。

娘はまだ小学生?

スズキのツーリングバイクには、

娘の為の背もたれ。

娘の両肩にはベルトがかけられ、

どこかに連結されているようで、

娘は時々両手を離す。

慣れとは恐ろしい。


父は熟練者で危なげはない。

良い休日が過ごせた気がした。




リアカメラ画像で

登り坂の追い越し車線を

グレイッシュブルーのヤリスクロス

が加速する。県外車。


危険に見えるトヨタドライバー

からは離れるのが、

私の使える運転教則。

交通事故は、すぐ隣にいる危機。


ゆずり車線の私は、アクセルを緩め

追い越すヤリクロを見送る。


それは私の罪。

登りきったバイクの後方。

ヤリクロが、接近しブレーキランプが

灯る。


前方車両と車間距離を維持するバイク

の後ろにヤリクロは食いつき、

赤いランプは度々灯る。


「どんな野郎が乗ってるんだ」

と私が言うと、

ヤリクロのハッチの窓を覗いた妻は

「後部座席には子供もいる」

という。

荷室には、ダンボール箱が一つ見える。


家族揃って、煽り屋か?

病んでいるのは父だけか?


次の登り坂車線まで、数キロの間、

このハラスメントは続いた。

傍観するしか無かった。

休日気分は吹き飛んだ。



同じ親としての共感、気遣い、気配り

は微塵も感じられない。

競争社会のなれの果て。


他者は、欺く 脅す 威嚇するのが

当然。邪魔なものは、蹴散らす。


追い越し車線で抜いていくヤリクロの

バックミラーに、怒りに歪んだ顔を

映り込ませよう。

加速し追尾する私はそう思った。