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生活が“強制リセット”で経営判断スピードはUP 経営者が語る育休の意外な影響

天狼
2020/01/31 23:26

生活が“強制リセット”で経営判断スピードはUP 経営者が語る育休の意外な影響

AERA dot.
2020/01/31 17:00

ピクスタ代表取締役 古俣大介さん(43)/グローバルで事業を拡大する中で発生する海外出張に、子どもたちを連れて行くことも。写真はベトナム出張の際の一コマ(写真:本人提供)

 小泉進次郎環境相の育休取得で注目を集めた男性リーダーの育休。急成長をする企業のトップたちはすでに取得している。「権限委譲」と「柔軟性」がカギ。取れば好循環が生まれる。企業のトップたちの育休事情を取材したAERA 2020年2月3日号の記事を紹介する。

*  *  *

 予定外だった育休取得を「自分の働き方を見直すいいきっかけになった」と振り返るのは、画像など素材サイトを展開するピクスタ代表取締役の古俣大介さん(43)だ。

 3児の父である古俣さんが育休を取得したのは、2018年の第3子誕生のタイミングだった。上の2人の時は妻の実家の近くに住んでおり、義父母のサポートを受けていた。会社の近くに引っ越して環境が変わったのに加え、“緊急事態”が古俣さんを子育てに引き込んだ。

「出産の1カ月ほど前に、妻が妊娠高血圧症になって入院したんです。突然、僕が“ワンオペ状態”になって、長男(当時8歳)と次男(同6歳)の世話にコミットせざるを得なくなりました。予期せぬことでしたが、結果的に育休の形になりました」

 直接やりとりすることが多いコーポレート部門にだけは事情を伝え、業務をリモートワークに切り替えた。会食は延期し、ミールキットを大量に注文して食事づくりを乗り切った。この時期の生活リズムの“強制リセット”がその後も定着し、現在も原則18時には帰宅。子どもを寝かしつけてからリモートで残りの仕事にとりかかるサイクルにすっかり慣れたという。

「家族の関係が安定し、僕自身も健康に。経営判断もよりスピーディーかつクリアになったと思います。むしろ以前の方が無理をしていたのかもと思うくらい(笑)。サステナブルな働き方になってよかったです」

 トップ自ら柔軟な働き方を実践することは、人材戦略上もプラスになる。環境変化の激しいベンチャー企業では優秀な人材の確保が重要な課題。

「個々の事情に合わせた自由度の高い働き方を示すことで、採用上の大きな優位性を生みます」(古俣さん)

 キーワードは「権限委譲」だ。

「育休を通じて、『仕事の大半はリモートで完結する』と気づけたのは大きな収穫でした。以来、社長である僕が会社に張り付いてなくても、各部門のリーダーの裁量で業務が回せる体制づくりを進めています。自走する組織は、より大きな価値を生む会社につながるはず」(同)

 もう一つのキーワードは「柔軟性」。育休といっても、100%子育てに没頭するのではなく、「時々仕事もできる」くらい柔軟なほうが、子育てに参加する男性は増えるのではないかと古俣さんは感じている。

 加えて、「大事な視点を忘れてほしくない」と主張するのは、オーダーメイドウェディングや法人向けイベントコンサルティングを手がけるCRAZY社長の森山和彦さん(37)だ。

「政治家や企業経営者が育休を取ると注目され、その是非が問われること自体に、違和感があります。一人の父親として、一人の人間として、わが子が生まれたばかりの大事な時期を一緒に過ごし、妻を支えたいと思うのは当然のこと。『新しい命の誕生をゆっくり腰を据えて、楽しみたい』という欲求があれば、それが尊重される社会でありたい。子育ては“べき論”で語られるものではないと思います」

 森山さんは、3年前に第1子となる長女が生まれた時に、1カ月間の育休を取得。妻が出産を希望した広島の助産院の近くにウィークリーマンションを借り、夫婦で子育てに集中した。産前産後の妻のサポートと家事全般、授乳以外の育児をひと通り経験したことは、「夫婦にとっても大切な時間であり、世の中のさまざまな人の暮らしに向ける視野を広げられた」。結果として、新たな事業のヒントにもつながっているという。

 拙著『気鋭のリーダー10人に学ぶ 新しい子育て』では、ほかにもヤッホーブルーイング代表の井手直行さん(52)、「オフィスおかん」などを展開するOKANのCEO、沢木恵太さん(34)などが育休体験を語る。育休を経験したトップが共通して口にするのは、「体験に勝る学びなし」だ。

 彼らは、育休を通じた“自己変革”を心から楽しんでいる。

(ライター・宮本恵理子)

※AERA 2020年2月3日号より抜粋