その時、ガラッと講堂のドアが開いて高遠君が顔を出した。私を見るなり言う。

 「会長、椅子並べるの手伝って。手が足りない」

 なるほど、義行さんとタカが一生懸命やってるが乱暴すぎて並べているのか倒しているのかわからない状況である。はかがいかない。ステージ上では専門家の方が電気系統やアンプの調整をやっている。

 「三井、頼む」私は三井を呼んで、椅子の波に入っていく。

 「あわてんでよか。まだ30分もあるバイ」義行さんがタオルで汗をフキフキ言う。

 「30分じゃ、入り切れめえが・・」三井が吠える。

 「心配すんな。田舎もんは時間とマXコにゃルーズなんじゃ。待たされとってもなんもいわん」

 今のところ、大した混乱はない。昨日の警備員が出張ってくれていて、要所要所を締めてくれている。

 「西ゆきって子はめんこいの。ワシャー気に入った」義行が言う。立て掛けてあるパネルを見たんだろう。

 しばらくしてどうにかこうにか並べ終った。前を詰めて後ろを開けたのは立ち見客を入れるためだった。もっとも、そんなには来ないとは思うが念のためである。

 受付が機能しだした。3箇所作ってある。明星の判子は一つしかないので、私と則子の判子で代用する。1500円貰って判子を押して会員証を返す。500円玉を用意しといて正解である。

 スムーズに列がはけていく。講堂の前部の方が埋まりだした。それでも新規でも来ればつっかえる。だれか側にいるモノが補助するしかない。

 「前川、列が詰まりすぎだ。もっと間隔を開けろ」

 私は怒鳴った。どうしても前へ前への摂理が働くから間が詰まってくる。受付が手狭になるのだ。

 それにしてもこの入りは異常である。ここまでとは予測してなかった。周造のたぐいまれな才能に改めて驚かされる。

 程なく講堂はケツまでビッシリ埋まった。座っている人より立っている人の方が多いくらいである。今ようやくドアが閉められた。300は言うに及ばず、400いや500入っているかもしれない。則子なんかが集計に入ったがハッキリとした数が出るのはもっと後だろう。嬉しい悲鳴である。

その時、末野と清水秀麿と西ゆきが供のモノと現われた。西ゆきはすでに鮮やかな振り袖を着ていた。金子と石井邦光もいる。

 「マアマア、入ったじゃネエか?会長。でも、テメエの力だと思ったら大間違いだぜ」金子が私を見るなり言った。

 「ルセーッ、テメエの御託は聞き飽きた。とっとと行け」私は怒鳴った。

 「オーオ、おっかないの」末野が笑って歩き出し、特別に用意された控え室に消えた。

 「修、時間過ぎてるぞ。なんかかんかいって始めんかい」三井が言う。結局、10時半を過ぎてしまった。

 「よし、いくか」私は隅の方で固まっている電気屋の方に行ってその一人に声をかけた。

 「あのステレオ、イノキボンバイエ、入ってる?」若い設備員はポカンとしている。でも、ハッとして言った。

 「入ってますけど・・」

 「じゃ頼む。鳴らしてくれ」私は言った。

 言われた方は同僚をしばらく見ていたが、意を決したようにステージに続くドテから中へ昇っていった。

 ややあって、景気のいい音楽が講堂一杯に響きだした。

 「イノキボンバイエ、イノキボンバイエ、イノキボンバイエ、イノキボンバイエ、イノキ・・・」

 そんな中、私は登壇した。赤マフはしてない。用意しとけばよかったかな?

 

                         続く