「大道さん、アリガトウ。一生恩にきるで。これで死んだオヤジにも顔向けできるワイ」義行は興奮している。

 「そいで、アンタにも行って欲しいんです。オレらだけじゃ会ったこともないし案配悪い」

 「そりゃそうじゃの。わしも行く。連れてってくれい」義行は怒鳴った。

 「うん。詳しい話は帰ってからだけど、とりあえず、周造さんにも連絡しといてください。アトどうなるかわからないけど、それが筋だと思うから」私は言った。

 「わかった。連絡しとく。何時頃帰るんね?」

 そう聞かれて私はギョッとした。まさかパチンコやって帰るとも言えない。

 「まだ、慰謝料なんかの調整が残ってるから夜遅くなるかもしれません」私は嘘をついた。

 「わかった。本当によくやってくれたの、大道さん。心から礼を言うわ」半分は泣き声になっている。

 「ほんまにのう、あらかたは諦めとったんじゃ。もう死んどるんじゃないか思たりしての。ホンマ、ありがとう」

 「ウン、じゃもう切るよ。じゃ後でね」私は電話を切った。

 「出せや。涼。牧場に直行だ-」私は声を弾ませた。

 牧場に入るやいなや、二人は水を得た魚であった。

 体の動きからして違う。何年も職場のように通い詰めて、店の隅々まで知り抜いている。特に一階東側のトイレの前に設置してあるソファーでは数えるのもやんなるほどの長い時間を費やしているはずである。スカンピンになるとボンヤリ座り込んでいた。

 シートの表面がひび割れて破れかけているのも、私たちが入れ替わり立ち替わり座り込んだあげくのなれの果てだと思う。

 当然、顔見知りとも何人か出会った。スロットコーナーに愛菜がいないことは涼は先刻承知であった。先日逃げられないように、恥骨の盛り上がりに涼と入れ墨したそうである。普段は毛で見えないように工夫したと笑っていた。今日は日勤だそうだ。

 パチンコ台の変遷は驚くほど早い。見込みがないと判断されれば減台や撤去の憂き目に遭う。あれほどの威勢を誇ったユニコーンも数を減らされて移動させられている。

 「牧場」は先端を走ることに非常に熱を入れているので評判の新台は必ず数多く導入する。だからそうしたことに敏感な若者層が多い。それにスロットにも思いのほか力を入れているので、年配者が他のパチンコ店よりもかなり少ない感じがある。だが、地下にある一円コーナーの海のシマではワクチンの接種会場のようにお年寄りで溢れているのだった。

 私たちは運よくゴジエバに座れた。私がノーホーラの1000ハマリ台、涼が5連チャン即ヤメ台である。どちらも出なさそうであるが出そうでもある。結果は私は2万勝ち、涼が3万勝ちであった。互いに4連チャンしたがつぎ込んだ金額で1万の差がついた。時間がなかったからまずまずの成果である。やっぱり当たった時に何が何だかわからないという難点は拭いがたい。時間があったとしても後を追う気は私にはなれなかった。

 帰りに車の中で涼が聞いてきた。

 「どうでした?」

 「ちょっとなあ、ゴジエバがクリーチャーだよ。醜すぎる。オレ、ああいうのダメなんだ」と私は答えた。

 「フフッ、あれね。あれはちょっとね。でも、うまい具合にお互い短い時間でチョロッと勝てたじゃないですか。ついてる」

 涼が言った。

 結局、我々のようなフリークスは少しでも台に触れると満足するようなところがあるのである。

 「夜食買いたいんだけどアソコに帰ると何匹もフカがいますからね、みんな食われちゃう」

 「マ、いいじゃネエか。少し買っててやろう。テメエらでも買ってると思うからそんなには食わねえだろ。とにかく寄れよ。グイグイやらないと、あんな所じゃとても眠れやしねえ」私は愚痴った。

 

                         続く