「女には男が必要なんです。全てだと言ってもいい。違いますか?会長さん」

 私の横を歩きながら守屋照子が言う。

 「その逆もまた真なりですよ」私は笑いながら言った。

 能書きはいらない。動物はどんな種も子孫を残すために生まれてきいている。それが真実である。

 前庭は半分畑である。どんな作物かわからないが青い葉っぱを着けたモノや、添え木にツタを絡めてるモノや、こんもりとした土の中に埋まってしまって小さな花を覗かせているモノなどようような種類が栽培されている。植物図鑑で見たことがあるが、どうもキュウリとおぼしきモノがあると私は感じた。

 畑の向こうに二階建ての小屋が見える。一階は物置小屋になっていて二階を人が住めるように改造してあるそうだ。もちろんトイレもくみ取り式ではあるが一階に作ってある。電気や水道、プロパンも設備してあった。

 あそこに利奈の奴住んでたんだな。利奈の風貌を思い浮かべて胸がジーンとなった。今はタカと敬子が寝所として使っているようだ。

 母屋の造りは義行家と間取りからなんから全て同じだそうである。妙な気もするが、きっと同じ大工が作ったのであろう。いつもの癖で縁側からガサガサと入り込む。それが気にならないほど大勢の人がいる。大広間には押し入れに入りキレない寝具が壁際に山積みにして並べてある。その横に石油ストーブが4台並べて置いてあった。敬子が義行家を参考にしていることが見て取れる。人夫たちが思い思いに自分の荷物を壁際に並べていく。大きな座卓に金物の灰皿が重ねて置いてある。百均にあるようなシロモノである。それを並べて煙草に火をつける者が何人もいた。そして、どの顔も段々と和んできていて笑顔が出てきた。みんなここが気に入ったようである。

 飯場といえば、ほとんどが簡単なプレハブ作りで味も素っ気もないものが定番である。入った人がニワトリになった気分になる。その逆に、ここは人の住むところという気が当然のようにする。

 「昼ご飯よーッ、来てー」敬子が今のほうで手招きしている。人夫たちがニッコリして立ち上がりゾロゾロ歩いて行く。

 居間にテーブルが大小2台。台所に椅子ツキの大きなテーブルと小さいのが2台並べてあった。人夫の総勢が18名、あと運転手の遠藤君と涼、私と星野。それと賄いの二人が一度に座れなければならない。

 「少し狭いけど順番に詰めてね。慌てなくてもいいから全員座れるはずよ。それと煙草は大広間だけにしてね。ここではダメだから」と照子が言うと、オーイという返事。

 私は関係者ということで遠藤君や涼と同じテーブルに座った。二人は既に仲良くなっていて小声でごちゃごちゃ話している。

 すると池中がいきなり立ち上がった。

 「エー、飯食う前に紹介しておくけん。星野さん、立ってくんない」

 星野が立った。「エーッ、こん人が監督やられる星野さんじゃ、よーくいうこと聞くんじゃゾ」

 「アノホー、大道組を預かります、星野隆です。ふつつか者ですがよろしゅうおたの申します」星野が大声で自己紹介した。

 「イヨー、大統領ーッ」パチパチと五月雨式の拍手が起こる。

 みんなが食べ始めた。

 「ご飯はタントあるからおかわりしてよ」と照子が言うが元々プラスチックの大きなお椀に山盛りである。まず、おかわりはできない。おかずは定番のイノシシの焼き肉に菜っ葉、味噌汁である。義行さんの話では猟友会が派手に罠を仕掛けてイノシシを乱獲しているらしい。食することを前提にしているから出きることで、ただ駆除するだけでは批判を受ける。その兼ね合いが難しいらしい。というわけでイノシシの肉はたんまりと貯蔵してある。軒先にそれなりの棺桶型の冷凍庫もレンタルして置いてあった。

 

                        続く