もうすぐ黒っぽくなったブロック塀に囲まれたエンジ色の屋根の建物が見えてくるはずだ。すると道の彼方でキラッと光るものが見えた。私は車だと直感した。ダンプではない。こんな所を走っているのだから、十中八九、尾形の本部に関係があるものであろう。車はあっという間に近づいてくる。私は慌てて深い草むらに身を隠した。なにも隠れる必要などないのであるが体が勝手に動いた。本能的なものであって特に意味はないように思えるが、誰にも姿を見られたくないという心境は事実であった。
青いメタリックのワゴンが凄いスピードで目の前を通過した。トヨタのマークが見えたからトヨエースであろう。いずれにしても見覚えのある車である。尾藤が訪ねてきた時、乗って来た車に違いない。すると運転しているのは高遠光也か?かがんだ格好で運転席を確認することは不可能だった。それでもまたもや尾藤が乗っていた可能性は充分にある。結局、こうやって自分の知らないところで事態は着々と進行しているわけだ。私なんかいようといまいと一切関係ない。だったら、コッチも好きなようにやらしてもらうさ。コッソリとな。
私はいつものように裏側から尾形家の裏木戸にコソ泥のように近づいた。カギがかかっていることはない。私が壊したままになっている。井戸のところまで来た。今日は人気がない。3つ並べてある簡易トイレも空っぽのようだ。私は裏の縁側から上がり込んだ。その端にトイレがついてるから小便をした。床の間の裏の寝所を開ける。そこを通過してもう一つの部屋を通った。もちろん誰もいない。その先の木戸を開けると台所になっているが、そこに豊子がいて何やら調理している。
「よう」私は奇妙なところから出現した割には明るく声をかけた。
「どっから来たの?」と豊子はビックリした顔で聞く。
「裏庭だよ。いつもそうやって入ってたから癖になっちゃった。下条さんは?」
私は目当ての下条美鈴がいないので早速聞いた。
「今、本部行ってる。直ぐ来ると思うわよ」と豊子。
「3P、やるってか?」私は肝心なこと聞いた。
「やるって。アンタ、タイプみたいよ。アレが大きいって言ったらヨダレ垂らしてた」豊子が笑いながら言った。
「しかしヨー」私も笑いながら言った。「電話番やらされてんだろ?」
「うん」と豊子。「時々だからしょうがない」
「金子なんかスケベだから気をつけろよ」私は豊子の側に行って尻を触りだした。
「大丈夫よ。今田さんが出かけた時だけだから」豊子が私の手を握って振り向いた。
「いまだ?そんなのいるの?女なんだろ?どんなんだ?」私は矢継ぎ早に質問した。
「また、手エ着ける気?40代のタダのオバさんよ。裁けた感じでよく喋る人」
「ホウ、チョイと見てみたいな」と私は言った。私の女に対する守備範囲は非常に広く、さっきの交通誘導員のオバさんにも魅力を感じていたくらいである。度が過ぎるので自分でも異常だとは認識している。前に書いたかどうか忘れたが、猟奇殺人者のチャーリー・マンソンはナニが24時間立ったままだったそうだ。女の信奉者は彼にメロメロになり、頭を丸めて忠誠をちかっていた。命じられればそれこそ何でもやってのけた。その一環が有名なシャロン・テート事件である。マンソンに憧れがないかというと嘘になる。しかしまあ、立ちっぱなしというとそれはそれで使い勝手が悪かったかもしれない(笑)
続く