向井は行為を続行しながら、上目遣いに京極の様子をうかがった。尻穴まで舐めるとなると絶対に京極の協力が必要になる。今は、彼の尻は深々とソファーに埋まってしまっている。となれば、同意を得て両脚を高々と持ち上げて開いてもらうか、後ろ向きに四つん這いになって腰を突き出してもらうしかない。

 向井は勇気を持ってその事をいおうと、京極の一物を吐き出した。身を起こし何気なく横を向く。その刹那、ドアののぞき窓に人の影があるのに気づいた。その影は動いてすぐに消えた。だが、向井はそれを見逃さなかった。瞬時に立ち上がり、ドアを蹴飛ばして外に躍り出た。受付の女がふたり、廊下を走っていた。

 頭に血が上った。激怒といってもいい。すぐに後を追って難なくふたりを捕らえた。向井は力はそんなにないほうだが、敏捷性に優れている。オマケに、バンビのようにしなやかだ。暴れる女たちの髪を掴んで引きずり、自分たちの部屋に押しこんだ。その時点で、最後の悲鳴を残し女たちの抵抗は止んだ。観念した家畜のように、京極の足元に転がっている。

 「コイツらに、ぼくらのしていたことをのぞかれちゃいました」

 向井は静かにいった。京極は立ち上がりズボンをたくし上げた。

 「乱暴しないでよ。わたしたちはのぞいてなんかないわ。部屋の前を通りがかっただけなんだから。マジでそうなんだから」

 化粧の濃いなれの果てがいった。もっとも、薄暗い照明のもとでは、ふたりは双子のように同じに見える。制服を着ているせいもあるだろう。人間の言葉をしゃべるのが意外な気がする。それほど、彼女たちは引き出されて処理される家畜のようだった。

 向井に残虐な慣性が湧いてきた。弱いモノを確保すると、いじめたくなる本能がどんな男にもある。条件は揃っていた。他に人もいないような地下室で、最初に悪さを仕掛けたのは相手のほうだからだ。

 「なぜ、のぞいたりしたんだ?」向井は真ん中のテーブルを奥へ押しやっていった。ベルトを締め終った京極は、獲物を値踏みするようにして反対側のソファーに移った。

 「この子があなたたちがホモだといったのよ。だから、部屋をのぞいてみようって、、、」

 なれの果てが下を向いたままボソボソしゃべり出した。もうひとりは、顔を上げてボンヤリと向井を見ている。

 「ホモだったら、部屋をのぞいてもいいのかい?」

 向井の声は冷たい。内部から機械がしゃべってるようだった。

 「そうじゃないのよ。悪いことはわかってたのよ。ただ、奥の部屋でホモがなにをやるか非常に興味があったの。ゴメンナサイ」

 若い方が漠然と口を開いた。丸い目に丸い鼻、怯えてはいるが無邪気な表情だった。その顔に、京極が真正面からいきなり拳を叩きつけた。女はギャッと喚いて後ろに吹っ飛んだ。

 「なにするのよ。アンタ!なにも、殴りつけることないじゃない!」

 なれの果てが仰天して大声を上げ、吹っ飛んだ同僚をかばった。その側頭部に、京極の拳がみまわれた。この一撃はもっと強烈だったようだ。女は銛を射込まれたように、突っ張って大の字に倒れた。

 目を回したのは、その女ばかりではない。向井も同様だった。京極には、普段から比較的温厚な男との印象があった。少なくとも、問答無用に女を殴りつけるようなことは絶対にしない男だと考えていた。それどころか、連城美也子への接しかたで、ある意味フェミニストだと思っていたのである。

 

                         続く