そこへよっちゃんがヒョコッと現われた。ニタニタしている。ゴマ塩頭がちょっと見ない間に、白い部分が多くなったようだ。粘度を練ったような顔色は変わりようもない。風雪を耐え抜いて長い間農業をやってきたモノがこういった具合になる。腰は少し曲がっているが、骨太で材木のように丈夫そうである。

 「ウリの女、帰ってきた。なんか家のことで忙しかったらしい。聞いたらガキが3人もいるんだってよ。オヤジは蒸発しちまって、国から出る金で生活しているらしいが、とっても食えないらしい。本人もパチンコが好きで止められないから、ああいうこと始めたらしい。なんしろ、子供がいるってのに晩飯代まで入れちゃうそうだからな。ひとシャブリすれば3千円だ。飯は食わしてやれる。オレもたった今、便所でやってきた。久しぶりに顔見たからよ、我慢できなかった」

 よっちゃんが言った。私は台が出す効果音に負けないように聞き耳を立てていた。こないだ垣間見た印象には悪いとこはなかった。確かに重量級であるが、色が白いところが気に入っていた。顔もクセのない穏やかな様子だった。相当、キツい目に遭ってるに違いないが、まだ心がねじくれてない証拠だと見てとった。

 子供が3人いるとの言葉にウハッとなった。どんな構成なんだろうか?男男男、女女女。その確率は薄いだろ?男と女の組み合わせに決まっている。真っ先に聞かねばならない。子供を狙われてると思われてもしょうがない。その通りであるから。

 「あの人、名前なんていうんですか?」私はよっちゃんの顔を見ながら聞いた。

 「へえー、あんちゃんもあんなのに興味あんの?名前はミサエだよ。でも、年はアー見えても50近いらしいよ」とよっちゃん。

 「そうなんですか?もっと若く見えるなー」と私。お世辞でなく実際にそう見えた。下はいつもデニムのミニをはいているし、全体的に若作りをしているから。

 「百姓やってたわけじゃねえからな。ただの専業主婦だったわけだから。ぬるい暮らししてたんだろ、ま、そこがいいんだけどよ」とヒロさんが口を挟んだ。なんとなく嬉しそうである。

 こんな田舎では女房以外の女の肌に触れる機会は限られてくる。年回りからしてキャバクラには行きにくいだろうし、ピンサロやデリヘルは消滅した。後は単刀直入に本番をやる淫売屋かソープということになってくる。ソープは高いし遠い。ようはこの辺では「良恵」か「美人」に行くことになる。が、それもソコソコの金がかかるし、行ったり来たリが面倒でもある。だから、ミサエのように手軽にできる女は貴重である。噂ではパチンコ屋の従業員でさえ利用しているそうである。

 「あんちゃんじゃあ言いにくい。アンタ、名前、なんつうの?」とよっちゃんが私に聞いた。

 「山本です」と私は嘘をついた。

 「ヤマちゃんか?アンタぐらいだったら、女に不自由することないだろ?イイ男だし金は持ってる。寄ってこられてウザいほどなんじゃないの?」よっちゃんが笑う。その時、いきなり私の台に7が揃った。連チャンいただきである。

 「とんでもない。オレみたいな能なしのバクチ狂い、女は飛んで逃げますよ。この年まで独身なんですから」私は言った。

 

                          続く