「あの東大出ですか?のってきますかねえ?」周造が言った。

 「わかんねえけどな。無理矢理乗せるのよ。アイツは使い出がある。月王の社員だし東大だかんな」私は言った。

 「たくなあ、頭にくることは頭にくるよな。人がやっとこ専修だってのに・・、東大なんて想像もつきませんよ。それにあの顔でしょ、ちょっと許せない感じ」と周造。

 「ま、大学のことはわからねえけどな。アイツが特権階級であることは間違いない。コレからあって話を決めるつもりだ」

 と私は言った。

 「自信ありそうじゃないですか?」周造が笑う。

 「マア、引きネタがないわけじゃない。明日、午後からでいいな?矢津家に集合ってことで」と私。

 「了解。うまくやって下さいよ」と周造が言って電話は切れた。聞いた感じ、周造は高遠君をいじめたいらしい。

 私は少しの間、宙を睨んでいた。ザッとのアラスジを考えたのだ。それから、高遠君に電話を入れた。出ると思っていた。そういう男なのである。

 「よう、大道だ。久しぶり」と軽く挨拶する。

 「あ、どうも。お久しぶりでございます」と高遠君の嬉しそうな声。

 「チョイとよ、会って話せないかな。考えが聞きたい」と私は言った。

 「本当にとんでもないことが起こりましたね。オレびっくりしましたよ。金子社長があんなことになるなんてね。ちょっと、解せないようなところもタタありますよね?」

 私はその言葉にギョッとした。金子の件が出てくるとは思わなかったからだ。だが当然、平静を装って話を合わせた。

 「そうだよなあ、ヤマの中を一人で歩いてたってことになってるけど、そんなことってあるのかね?」

 私は当事者であるが、知らない人なら普通に湧いてくる疑問を投げつけた。そう思わない人はいないと思うから。

 「そうそう、おかしすぎますよ。あんな交通事故なんかあるわけない。車は女のとこに停めてあったらしいじゃないですか?じゃ、どうやって山の中まで行ったんですか?歩いてですか?そんなことあるわけないですよね。拉致られてやられた挙げ句に捨てられたんですよ。それしか考えられません」と高遠君は強い調子で言う。

 さすがに目の付け所がいい。事実、交通事故ではないんだから探せばいくらでもアラは出てくると思う。だいたい、あんな泥まみれの交通事故なんかあるわけない。私にだって、始めから大丈夫かなあの疑問が湧いていた。

 「警察はどう言ってる?」私は恐る恐る質問した。

 「それがそういった情報は全然なんですよ。昨日の今日ってこともありますし、末野社長も病院に行ったキリなんですね。私はさっきまで本部にいたんですけど、電話を取った事務員の権田さんから聞いたんですよ。権田さんも電話繋いだだけで詳しいことはなにも知りませんね」高遠君は言った。

 

                        続く