「だけど、あんまり早く向こうにいっても人目につくんじゃないか?」私は言った。

 「目立つとこいるとな。さらにいいとこ見つけてある。待機するにはもってこいの場所だ」三井がそう言って立った。

 「よし、行こう」啓太とネズが続いた。

 三井と私はダブ公に乗り込む。啓太はシュービー。ネズはシロである。繋がって庭を出た。ダブ公の運転は三井がしている。私はいつもの指定席、助手席である。三井は車に関心のある男ではないが、運転は相当うまい。子供の頃から運動神経が抜群だった。バスケ、野球、柔道、なんでもこなした。走るのも速かった。

 「女のところに行ってたんはマジだろ。修?」と三井がいきなり聞いた。私はギクリとした。

 「顔を見りゃわかる。ニタついてやがるからナア。散々嬲ってきたんだろう。まったく、女ってのはうまくできてる。突っ込みまくっていじめても、逆に惚れてくるんだからナア。神様の偉大さがわかるよ」三井はそういって悦に入っている。

 「・・・」私は無言だった。ヘタに言い返して喧嘩になってもつまらない。認めた形である。30年も40年も付き合いのある男をごまかしきれるもんじゃない。なんとか話題を変えようと、私は頭を回転させた。だが、なにも浮かんでこない。その時、うまい具合に三井のスマホが鳴った。取りやすいようにダッシュボードに置いてある。彼はそれをつかみ取った。涼からのようだ。

 「アー、わかった。あんまり距離を詰めるなよ。涼」そう言って切った。

 「金子が出た。時間通りだ。女のところに行くのは間違いない」三井は私に言う。

 私は黙って座り直した。スマホを取りだし、タカと啓太とネズに次々と電話した。計画が動き出したのを知らせるためだ。

 「いつもの時間に着きそうだ」三井がハンドルを繰りながら言う。「オレらはその20分位前に着く」

 「金子ってのは見た目より細かいな。キチッとしたところが見受けられる」私は言った。

 「一応は成功者だ。それは大なり小なりあるさ。そうじゃないと世の中に通用しないだろ」と三井。

    しばらくして、私はスマホを出した。涼に電話を入れる。外は急速に暗くなっていた。

 「今どの辺だ?」私は聞いた。

 「XX町です。消防署のところです」涼が答えた。

 さっき、通り過ぎた所である。やはり、20分位後ろを走っている。車の流れは順調である。街の中心部を抜けると、途端に車の数が減る。ロケハンで覚えたがあと30分足らずで目的地に着くはずだ。急に開けたところに出た。道路の両側は平たくされて土でならしてある。重機はないが工事中である。そこを抜けるともっと閑散としてくる。電信柱だけが目立つ原っぱが延々と続くようになる。建物はポツリポツリとしかない。もう少し行った所にこじんまりした集落があるが、目的地のアパートはそこに建っている。大きな鉄塔が側に建っているのが目印である。

 着いた。鉄塔をグルッと回って集落に入っていく。道の両側に形の洋々な建物が間隔を開けて建っている。その間は造成地か草むらである。三井は樹木の茂ったところに入った。中は広くなっていて砂利が敷いてある。駐車場だった。奥行きが広い。まるで、道路のような長い形態をしている。何台か車が置いてある。金子はいつも入り口に近いところに車を着けるので、私たちはそのずっと奥にダブ公を着けた。

 

                         続く