場所が遠かったのに早いなの違和感を持って、私は車を降りた。最も私たちはパチンコをやって来ている。その分遅くなったと考えれば当然のことである。私たちは勝手口から入った。台所に洋子と静子がいる。ほっとする光景である。三井と啓太はいつもの広間でいつものオイチョをやっていた。これも見慣れた光景であった。

 「早かったなあ、みっちゃん」私はリックを放り投げて言った。もちろん盗んだバックは処分して、金はレジ袋にくるんでリックに入れてある。コンビニで貯金するのが本当だが、そこまでは面倒で出来なかった。ヒマなときにでもやればいいさ。

 「ダメだ。空振りだった。留守だったんだ。家はカギがかかっていた。30分は近くで待ったんだが、結構、人の目があってよ。それ以上は怪しまれると思って、退散というわけサ。ついてないよ」

 三井は苦い顔をして、札を下へ叩きつけた。啓太も浮かない表情をしている。

 「骨折り損のくたびれもうけとはこのこった。ドツボに嵌まっちまった」そうぼやく。

 「ソッチはよ?」三井が振り向いて聞いた。

 「マアマアだよ」私は適当に答えた。最もそうしたことが習わしで、いくら仲間内とはいえ自分の悪行をつらびやかにさらすモノはいない。また、相手もクドクドと聞かないことが仁義とされている。もちろん、三井が本当のことを話しているのかも定かではない。

 「ソウケー、ま、そういうこともあらあな。アポ電強盗じゃあるまいし、そんなにピッタリといくかい」

 私は三井を慰めるつもりで言った。とりあえず、相手のいったことを信じるふりをするというのもある意味仁義であった。今の時点では互いにことの真意は判断つかない。どっちにしろ、この話はこれで打ち切りにしたほうが無難だと私は判断した。儲かったような話をすると、必然とコッチにも寄こせというような話になってくるからである。ネズミもこんなことぐらいはイロハのイとして充分承知している。

 「飯、食ったのか?みっちゃん」私は話題を変えた。

 「アア、何時だと思ってんだ。まだ、食ってないのかよ?アア、それとビールなくなりそうだから、サリいって補充してきたから。空振っちまってやることなくなったからよ。スーパードライとまではいかねえ。のどごしになっちまったけどよ」

 三井が笑顔で言った。その笑顔に私は背筋が冷えた。なんかとんでもないことをやってきたんじゃないかとの直感が走ったのだ。一家皆殺しとか・・。

 「ソーケー、アリガトウよ」私は刹那的に喉を詰まらせていた。ことの次第は時間がたてば自然とわかる。もちろん、己がやったこともだ。だが、今は空っとぼけるしかない。

 「ま、仕事というのは運で様変わりするからナア。空振る事だってある。しょうがねえよ。今度はツクさ。ビール、アンガトヨ。パチに夢中になって食ってねえんだ。コンビニ寄るのもなんかなあ、面倒になっちまって・・。残り物でもあったら食わして貰おうかな?ダイドコいってくらア」私はそう言って、ネズを伴い台所に向かった。

 そこのガラス戸をラッと開けると、テーブルに洋子と静子が横並びに座ってコッチを見ていた。目が合った瞬間、私はドキリとし、目をそらしたまま向かい側に座った。ネズは冷蔵庫へいってビール缶を2本取ってきた。三井が買ってきたのどごし生である。

 

                         続く