仲間内で強敵なのは三井だけだ。後は似たり寄ったりだが、それにしたって義行さんよりは強いと思う。住んでいるところの差というか、そんなところだろう。メインの土方の連中がどれほどの腕を持っているか見当もつかないが、刃の立たないのはいないんじゃないかと想像する。わからないけどな。今日びは極道じゃ食えなくなって、土方やってるのも結構いるらしいから。

 「周造は強いドー。バケもんじゃ。あのバカはマのつくもんは激ツヨなんじゃー」

 義行が言った。私は聞いて意外だった。アノ脳天気な男が激ツヨとは?

 「マのつくものってなんですか?」私は聞いた。

 「マージャンとマンコじゃ」と義行がキッパリ言った。

 「ハー、そうすか」私はなんとなく納得した。周造の道具は私のよりデカいかもしれない。動画を見たところではそんな感じがした。

 「お邪魔します-」その時、ミムラ商会の社員がふたり、縁側からエッコラエッコラ、ビニールを被った麻雀卓を広間に運んだので、私と義行さんはそっちに移動した。

 「結構、厚みあるのう。重いじゃろ?」義行さんは手で器械を触りながら言った。

 「まあ、重くはありますけど、見た目ほどじゃありませんよ。逆にどっしりして良いですよ」ミムラの社員が言う。ビニールを剥がした。もう一人の社員は黒いコードを持ってテキパキと動いている。すぐさま終って、電源を入れると牌がしたからウイーンと浮き上がってきた。

 「こうしたものは仕掛けは全部同じですよ。牌を穴に投げれば自然と上がってくるんです。うまく出来てますよ。点棒はこの袋に入ってますから、決めた分だけ引き出しに入れてください。コレで以上ですね」口髭を生やした男が言った。

 「故障とかせんかね?」義行さんが聞く。

 「まず、しませんね。精巧にできてますから。もし、なんかあったらお電話ください」男は懐から名刺を出して義行さんに渡した。

 「では、コチラにサインを」そう言って書類を出してきたので、私が受け取ってサインした。

 「請求は全部同じ所にしてくれよ」私は言った。

 「はい、心得ています」ヒゲが答えた。

 「本家のほうは道は知ってんだろ?」私は確認した。

 「わかってます。2トンなんですけど、何とか入ってくれると思います。平ボディですから」

 「平なら余裕だよ。庭まで入っていける。当然、道は悪いけどね」私は言った。

 「わかりました。では、失礼します」男たちは帰って行った。

 私はとりあえず本家に電話して、麻雀卓が4台届くことを敬子に伝えた。

 「だからよー、休みの前の日と休み以外は、隅っこに置いとけばいいんだよ。触らせんな。仕事に差し障りが出たんじゃ溜まらねえからナー。帳面着けなきゃダメだぞ。ま、詳しいことはソッチ行って指示するから」

 「いいの手に入れたじゃないか。会長、さすがだ。早速、やりたいけどメンツがおらんか?」義行さんが言う。コレを見れば、好きなものはやりたくなるのが必然だろう。私もそうなった。

 「ホントだよな。三井と啓太はどこいった?」私は言った。

 「知らんど朝からおらん。ま、どっかの飯場じゃ思うけどの」と義行さん。

 「ならいいけど・・」と私。「アッ、オジさん、悪いけど、明日から本家の飯場に入ってくれんですか?慣れるまで、女二人じゃ無理っぽいんで」私はいきなり話を変えた。実は、たった今思い出したのだ。

 「エエよ。今日は尾形に行ったんじゃが、あそこは総本部じゃけん、手慣れたジジイがおるんじゃ。ワシはいらんわい」

 義行さんは快く引き受けてくれた。お百姓さんは朝の早いのには慣れてるし、軽トラも持っている。

 

                       続く