周造のパジェロが入ってくるかなと思って注意していたが、とうとう入ってこなかった。彼には、コンビニで飲み食いする習慣がないと見える。私と涼はあらかた食いおわって、口を縛ったレジ袋を後ろに投げた。そろそろ豊子に掃除させないと荷台は見苦しいざまになってきている。掃除させた後、今度は飲尿プレイじゃなくて、きつい一発をはめ込んでもいい。その時の状況次第だなあ。私は弾力のある豊子の肢体を思い出しながらニタついていた。

 「専務、なに思い出し笑いしてんですか?夕べ豊子さんとコレやったんですか?」

 涼がニタつきながら人さし指と中指の間から親指を出して言う。

 「パカヤロ。そんなことできるかい。豊子の側にはいつも人が着いてんだ」私は怒鳴った。

 「そうですねえ。豊子さんだと思って乗っかったら敬子オバさんだったりして」涼が笑いながら言う。

 「でも、あのオバさん、尻がデカいから何か触りたくなりますね。オレ、溜まってんですよ。お願いしていいですかね?」

 「好きにすりゃいいだろ。スキモノだからいいように吸い上げてくれるわ。中出しOKだしな」私は言った。

 「40過ぎてから卵管縛ったんだ」

 「そうすか。じゃ、スキ見て襲いかかってやろう。あの手の人って嫌よ嫌よも好きのうちですから」

 「よく知ってんじゃねえか。オメーもそうやって立派な女の敵に成長していくんだなあ」私は言った。

 「仕方ありませんよ。回りの影響って大きいですから」

 そう言って、涼はダブ公を発進させた。

 しばらくはすっ飛ばしていたが、いきなり涼が言った。

 「このSダムって、オレらが考えてるのとは全然違いますね。オレらがダムっつうと、ハリソン・フォードの「逃亡者」に出て来るようなデッカいやつ、ああいったイメージですけど・・・」

 そう涼が言うのを、私は遮って言った。

 「ああ、あの落下シーンは凄かったな。アレで怪我一つしないてんだから、マンガだけどな」

 人形丸出しだったから笑ってしまったのを思い出した。

 「オレ、パソコンで詳しく検索したんです。そしたら「堰」になってました。ほら、よく見るでしょう?鮭が登っていくようなやつ。そんな小さなものですよ。それでも、ダムとして一括りに分類されてしまうんですね。だから、国道には近いし、ポツンと一軒家みたいに険しい道、登っていく感じじゃないんですよ。簡単に着きますね」涼は笑顔で言った。

 「そうなのかい?」私もニッコリした。そりゃ、ありがてえな。ダムっつうと、デッカくてなんか恐ろしげでよ。死体とかおっぽるイメージしかないもんな」

 「オレもマッポシそうですけど、今回は助かりましたよ。なんか、タカシさんもすぐ見つかりそうな気がしてます」

 「そうだなあ。危険じゃないってだけでも気が晴れるなあ。そんなとこなら探すったって楽だぞ。きっと見つかる」

 私は上機嫌で言った。

 「そいで、電話番号出てましたから一応メモっときました」と涼がいってメモした紙を私に渡す。

 「なんでえ、電話あるのかい?042-684-XXXXか。ま、直接、工事現場にかかるわけネエが、電話してみて損はねえだろ。一旦脇に止めろ」

 涼は縁石に止めた。私は番号をプッシュする。・・・5回で応答があった。

 「はい、Sダム管理事務所です」

 「あのー、すいません。私、そちらの工事で働いているものの家族で星野修と申します。実は親父が亡くなりましてね、兄の隆を連れに行く所なんですよ。それで本当にいるかどうか、確認したいんで電話している次第です。どうですかわかりますか?」

 私は丁重に伺いを立てた。

 「はあ、わかると思いますが、こちらはタダの受付でしてね。電話だけでのそうした問い合わせには少し差し障りがあるんですよ。こちらにいらしゃるんでしたら、私どもに顔を出して貰えませんでしょうか?確かにウチでは今、全面的な補修工事をやっておりまして、大勢の人夫さんが働いておいでです。こないだの大雨でスッカリやられましてね。往生しとるんですわ」

 「わかりました」私は涼の顔を見た。涼は指を2本出した。「2時間ほどで着くと思います。失礼ですがあなた様のお名前はなんといいますか?」

 「私は武藤です。人夫さんのお名前はなんと言いますかね?」

 「星野隆です。じゃ、後ほど伺いしますからよろしくお願いします」私は言った。

 「星野隆さんね。わかりました。調べておきます」電話は切れた。

 

                       続く