梅木と宮長が竹林の所にまだいるかと思ったが、その姿はなかった。
駐車場から私道を通って県道に出る。歩いている人が遠くにチラホラ見える。県道を横切って小道を行くと左右に盛り土がたくさんある。田畑を埋めて造成地にしているのだ。コレでは、末野はもうけているな。私は笑った。大企業の進出で完璧に村おこしが行われた。この地区はもっともっと栄えるだろう。
「義行さんも、いいところ買ったよな。見る目あるよ」私は言った。
「成り行きよ。あの時はみんながそうだったから。月王が落としてくれた金で山から下りれたのよ」豊子が答えた。
「これで本当にシェルターでも出来たら、凄いことになると思う。また、うんと人が増えるわよ。シェルターがあるってだけで移り住む人も出て来るとおもうから」
「なるほどねえ。そういう考え方もあるか。オレもがんばらねえとな」
「アンタががんばらなくたって、シェルターはできるわよ。すでに、大きな力が動いてる感じがする」
豊子は私の顔を見た。微笑んでいる。まっ、誰が考えてもそうなってくるだろうな。デカい金が動くから、そこからどれだけ手にできるかが勝負である。コバンザメ出動。
造成地を抜けて畑の道になったと思ったら、また造成地である。何年後には村というより立派な街になっているだろう。
「まだ、歩くのかよ?」私は少しへばってきたので豊子に聞いた。
「そこの所曲がったら見えるわよ」彼女は答えた。
丘のような所に林のように樹がうわっている。半分から切り取ったような崖になっていて、その下に大型のトラックが3台止めてあった。バラック小屋もあるので、運送会社かもしれない。大型が通るのだからそこの道幅は当然広く作ってある。
そこを道なりに曲がった。真っ直ぐな道が遠くまで続いていて、ちょっと先の右側の平地に樹木が固まって見えた。
「あそこよ。あそこが入り口。入っていけば鳥居が見えるから」豊子が言った。人もパラパラ見える。
「繋がっているみたいだな。山になっているのかね?」私はそう見えたから聞いた。
「少しね。盛り上がっている感じ。階段あるけどそんなに高くないから。登った所が広くなっていて本殿が立ってるわ。社務所があって、塔も2つある。じゃ、私、帰るから」
「うん。車で来りゃ良かったかな?駐車場もありそうじゃないか?」私は言った。
「そうだけど、途中の畦が無理っぽいとこあったかも?」
「ま、いいや。きちまったからな。たまには足の運動もしないとな。ありがとうよ。気をつけて帰れよ」
私がそう言うと、豊子は手を振って帰って行った。
「いい娘じゃネエか。お前にはもったいねえ」三井が言う。
「そうだろ。素朴がたまんないね。田舎娘丸出しってとこ」私は笑顔で言った。
「こまっかいヒゲが生えてんだぜ。見た?鼻の下によ」
「うん。いいよな。下なんかボウボウだろう」三井が返した。
「ああ、ケッコウ毛だらけってな」私はそういって笑った。
歩いて行くと入り口には、のぼり旗が両側に何本も立っていた。木の陰になって見えなかったのだ。下は長方形の大きな石をはめ込んで作ってある。自然の石なのか、デコボコして歩きずらいほどである。
鳥居の奥は思ったより、樹木がうっそうとしていて不気味なほどである。出店が左右に立ち並んでいて、どれにも人が群がっている。紅白の横断幕が階段のとば口まで幾重にも繋がっている。垣根で仕切られた駐車場は見たとこ満車である。だから、鳥居の側の小さな空き地にも頭を突っ込んだ車が何台もあった。
本殿へと登る階段には、アレッと思うような集団が上り下りを繰り返している。その合間を獅子舞のようなものが何体も白い布を被ってウネウネと踊っている。なんだろうかな?獅子頭はないんだ。ただの丸まった物体であり、大きなテルテル坊主にも見える。土地の風習というものはわからない。
続く