次にミネさんのエスパーっぷりを目の当たりにしたのは2014年に広響さんとR.シュトラウスの協奏曲を共演させていただいたときのことでした。
本番前日、最後のリハーサルを終えて控室に戻った私は、思うようにいかない悔しさで大号泣
こんなはずじゃなかった
悔しい
明日の本番までにこの気持ちをどうしたら切り替えられるだろう
・・・そんなことを考えながらリハーサル会場を後にしトボトボ歩いていたとき、その2日前にミネさんにお会いした際に「本番までに何かあったらいつでも来りゃあいいよ」とおっしゃってくださったのを思い出しました。
楽器に"何かあった"わけではないのですが、とにかくミネさんのところに行かずにはいられず、すぐに連絡しアトリエに向いました。
「本番前にもう一度楽器をみていただけないでしょうか」とだけ告げて。
(今思えばお忙しいところ迷惑なやつです
)
)そしていつものように何も言わず楽器を手渡すと、ミネさんが開口いちばんひとこと。
「まぁ指揮者っちゅうのはいろんな人がおるからなぁ。指揮者にあわせようとする必要はないのよ。好き勝手吹いてもオケの連中はちゃんとつけてくれるもんじゃから。」
さすがにこのときは驚きのあまり
「えっ?!わたし何かお話しましたっけ?」
と聞きかえしました。
まさにさっきまで私の涙がおさまらなかった理由はそれだったからです。
(注:指揮者がよくないという話では決してありません。指揮に合わせないといけない、指揮にあわせないとバラバラになってしまう、と勝手に思い込んで自分がひっぱっていくこともやりたいことを示すこともできなかった私の問題です)
広響さんと協奏曲を共演させていただくことや、次の日が本番だということは事前に伝えてありましたが、それ以外はなにもお話していません。
それなのにいきなりそんなことを言われるなんて
その後、なぜかミネさんが様々な奏者のシュトラウスのCDを聞かせてくださって、
「ほら、オケより先にでたじゃろう。これでいいんですよ、ソリストは。」
「こうやって吹きたいんかなっちゅうのが分かればオケの連中もついていけるんよ。指揮者なんて見とらんのじゃから。」
などと次々と私がぶち当たっている壁を崩してくださるかのようなことを言ってくださり…
帰る頃にはすっかり「もう大丈夫。」という根拠のない安心感で満たされていたのを覚えています
何も言っていないのに、私の心につかえていたものはすべてお見通しでした
次の日、本番直前のゲネプロで、どうなってもいいからとにかく一回自分の吹きたいように吹いてみようと思ってやってみたら、ミネさんのおっしゃった通り、広響の皆様はどう吹いてもちゃんと私につけてくださいました
そうか、こういうことか
と、ソリストとしての役割をようやく少しつかめたと同時に、それまで私の頭上にあったぶ厚い雨雲がどこかに消えていったような、晴れやかな気持ちになりました。
もしミネさんのところへ行っていなかったら、ここまで気持ちが好転することは絶対になかったはず
実はこの日の本番をミネさんが聴きにきてくださったのですが、本番直前まで楽屋で楽器の最終チェックをしてくださったり、演奏後にはすぐに楽屋に来てくださって終演までずーっといろんなお話を聞かせてくださり、楽器のコンディションからメンタルにいたるまですべてをミネさんにケアしていただいた本番でした
もしミネさんがいらっしゃらなかったら・・・想像しただけで恐ろしい
ミネさんには感謝してもしきれません
この出来事でミネさんの不思議な力をさらに確信した私ですが、そのエスパーっぷりはまだ終わりません。





経験の賜物

