「お待たせしました・・・」

「おー早かったなー。じゃ、行くか」

「どこに行くんですかー」

「まずこの前のケーキ屋さんに行こっか」

「こんな時間にですか・・・」

今の時間は10:15 電車に乗ってケーキ屋さんへ行けば、

11時をまわってしまう。

「あそこはカフェでランチもあるし、ちょうどよくね?」

「・・・わかりました・・」

「よし、じゃー出発!」

歌織と先輩は並んで駅へ向かう道を歩き始めた。

先輩は、

「オムライスにしようかなー。あ、でも、パスタでもいいなー」

なんてのんきに話している。

(なんでそんなにのんきなんだ・・)

実はまだ学校に連絡していないのである。

「・・なんでそんなにのんきなんですか?」

「ん?なんで?」

「だって学校サボったのに」

「ああ、大丈夫。俺出席日数足りてっから」

「いや、そういう訳じゃ・・・」

歌織は気付いた。

話している自分もけっこうのんきである。

「なんでだろう・・」

「ん?」

「あ、なんでもないですっただの独り言です。」

「ふーん」

ふと足元を見る。歩幅がほぼ同じ。

(こういうところは優しくていいんだけどなー)

「先輩って不思議ですよね」

「なんだっいきなり。どうした」

「いや、なんかそう思って」

「そうかな・・」

「そうですよ」

「んー・・でも俺は歌織ちゃんのほうが不思議だと思うけど・・」

「ええ!!これほど分かりやすい奴この世にいます?!」

「あはは まあ、分かりやすいっていえば分かりやすいんだけどねー」

「むー」

(行きでこんなに会話がはずむとは思ってなかったなあ・・)





   電車が去って30分。歌織はまだ先輩の肩にもたれながら


  スヤスヤと寝ている。


  先輩はもう起きていた。

  

  そして一度しまった音楽プレイヤーをとりだし聞こうとした。

 

  ちょうどその時に歌織が目覚めた。


  「うあれ・・・ああ!!すいません、先輩・・重かったですよね・・・」


  「んあ?ああいいよいいよ、大丈夫。よく寝たね」


  「いや、その・・・いつもより早く起きたんで・・」


  「え、あの時間じゃないの?」


  「いつもはそうなんですけど、今日は早く目覚めたっていうか・・」


  「ふーん・・・なんで?」


  「なんでって・・・・知りません!!」


  「あはは」


  「なんで笑うんですか」


  「わかんね。なんか笑ってしまった」


  「なんですかそれ」


  「まあ、でももう学校は遅刻だな・・」


  「う・・すいません・・・」


  「別に歌織ちゃんのせいじゃないよ。俺だって寝てたしさ」


  「・・・そうですね」


  「おい」


  「・・・ふふ♪仕返しですよー」


  「歌織ちゃんって案外子供っぽいんだね」


  「む・・・悪いですか」


  「いや・・じゃあもう学校サボっちゃおうか」


  「え」


  「遊びに行こうよ。でも制服のままだったら補導されちゃうからな・・

  じゃあ着替えてから行くか!よし帰ろう」


  「え、ちょ」


  先輩は歌織の腕をとり駅の出口へ向かった。


  「今は8:30か・・・じゃ9:30分の電車に乗りたいから、9:10に家を出る


  ってことで」


  「あのわたしまだ了承してないんですけど・・・」


  「まあ細かいことは気にすんな」


  (いや、意味分かんないんですけど)




    その頃 学校で


  「出席とるぞー。葵ー」


  「はーい」


  「藍川ー」


  「・・・・・・」


  「藍川ー。藍川は?」


  「知りませーん」


  「めずらしいな、はい次浦河ー」


  「うーっす」


  「・・・・・・・」


  愛華は歌織の席を不思議そうに、そして不安そうに見つめていた。






   「ふわあぁ」


   「・・・・・・・・」


   ベンチに座って約十分。


   「やばい 眠い たおれる」


   「別にいつも通りの時間で行くんだったら


   普通に起きればよかったじゃないですか」


   「んー・・・てゆーか、歌織ちゃん眠くないの?」


   「わたしはいつもこの時間には起きてますから。」


   「へぇ・・まじか。すげぇな」


   「・・・・・・・・」


   本当は予定の時間の1時間前に起きていたから、すごく眠い。


   (今日はたくさん嘘ついたな・・・)


   話すのが気まずかったから、歌織は小説を読み、先輩は


   音楽を聴き始めた。


   「「・・・・・・・・」」


   どれくらいたっただろうか・


   「・・・すー・・・・・すー・・・・」


   先輩が音楽を聴きながら眠ってしまった。


   (え・・・・電車もうすぐ来るのに・・・・・)


   すると先輩は歌織のほうにもたれかかってきた。


   (・・・・・・重・・)


   幸い、歌織たちの他には誰もいなかった。


   多分、もうこの駅を使う生徒は朝連があったのだろう。


   ――まもなく○○駅方面の電車がまいります


      黄色い線の内側までお下がりください――


   「先輩、もう電車きますよ!」


   「んーーラーメンは好きだー」


   (はぁ?!)


   「先輩、せーんーぱーい!!起きてください!!」


   ゆさぶってみたが、起きる気配はない。


   (・・・・・・・)


   ――カタンカタン― カタンカタン――


   「・・・・・・・・」


   「すー・・・・・すー・・・・・」



     プシュー



   ドアが歌織たちの前で開いた。


   「先輩!行きますよ!!」


   大声を出しても起きない。

  

   車内の人たちが不思議そうに2人を見つめる。



     プシュー



   ドアが閉まる。


   電車は2人を置いて、ホームから去って行った。


   (完全に遅刻だな・・・・・)


   もう次の電車では間に合わず、そのまま小説を読み始めた。


   (少しくらいなら寝かせてあげるか・・・・)


   「すー・・・すー・・・」


   朝早く起きすぎたせいか、歌織もウトウトしてきて、ついには


   先輩の肩にもたれかかって眠ってしまった。