『Dürer's Journeys: Travels of a Renaissance Artist』から,ケルンの少女のドーローイングの紙の表面に描かれたライオン。

Lion drawn by Albrecht Dürer during his stay in Ghent in april 1521 (from the Lion's den at the Prinsenhof) 1521

 

 

『ネーデルラント旅日記』を見ると,2021年の4月10日にゲントのファンエイクの祭壇画を見た後,ライオンを見てその中の一頭を銀筆で描いたという一文がある。

 観察者デューラーの面目躍如。聖ジェロームの絵で数々のライオンが描かれてきたが,このライオンの迫真さに勝るものは無いだろう。これも銀筆,ライオンのやわらかい毛の触感とこのライオンの悲しげな表情が素晴らしいし,デューラーのドローイングは,見るだけで喜びがある。いつまでも見ていたくなる。

 

 話は変わるが,ゲントに行く前にデューラーはブリュージュも訪れている。4月8日に皇帝の館と聖ヤコブ教会を見た後,聖母教会堂でローマのミケランジェロが作ったアラバスター(実は大理石)をみたという記述がある。ここではとりわけ,素晴らしいという言葉はなく,まとめて「よいものばかりを見た」とあるだけ。ただ名前を挙げて記述するのは珍しい。その意味では特別。

 

このマドンナはブリュージュの商人が1506年に購入したもの。このマドンナについては、以前ふれたことがある。

 

 

デューラーも見ていたとは知らず。1506年当時は,デューラーはイタリアにいた。巨匠ミケランジェロの作品がネーデルラントのブリュージュに買われていったということは,当時有名だったのだろう。他に見たものはたくさんあったようだが,はっきりとした名前が記述されていない場合の方が多い。何せ出納帳の日記だから。